All Chapters of 転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜: Chapter 41 - Chapter 42

42 Chapters

41.アナザーストーリー3

 立食交流会の翌日。空は雲ひとつなく澄み切っていた。旧校舎の屋上に吹く風は、爽やかな五月の香りがする。 そこに、セイナが立っていた。他の誰とも違う、いつも通りの昔の制服姿で。「ごめんね、ドレスじゃなくて」 彼女の瞳は不安そうに揺れていた。「どうしても、最期の時の姿になっちゃうんだ。秋になれば、着替えられるんだけど」 その言葉に、ハッと息をのむ。 いつか皆にも見えるようになる。俺だけの特権ではなくなる。それをほんの少しだけ残念に思ったのか、そのあとの別れを考えてしまったのか。「……顧問は、アレが最期の姿だったのか」 誤魔化すように思わず口にした俺の問いに、セイナは肩をすくめて少し悪戯っぽく笑った。「あはは、実はそうなの。あのイカツイ感じのネックレス以外は、そのまま。種も仕掛けもあるすっごい手品を、私たちの前で披露しようとあの格好で練習していたらしいの。内ポケットとか、あの服に実は仕掛けがいっぱいあるんだ。その時に、おかしな魔法の気配を感じたんだって」 髪が、風にさらわれて舞い上がる。この旧校舎でだけ、彼女は生きている人間らしくなる。「私は寮に戻る途中だったんだけど、変な胸騒ぎがして……校舎の方にUターンしたの。今のここ、旧校舎にね。その途中に昔は発電装置があったんだ。機械室って名前だったけど小屋みたいになっていて、中に入るのも今と違って簡単だった。ちょうど先生と同じタイミングだったの」 語りながら、彼女の視線は遠くの学園内に向けられていた。生徒たちが何人か歩いている。ただそれだけの日常を、羨ましさと懐かしさが入り混じったような表情で見つめている。「顧問の性格が謎だな」 俺がそう返すと、セイナは振り向いて笑みをみせた。「私がつい距離感を間違えちゃうから……先生はもっと距離感を間違えて、私が浮かないようにしてくれてたんだよ。でも先生の手品はすごかったな。穴の開いてないピーマンの中に、なんとコインがワープするんだよ」「それはすごいけど、地味だな」「そうなの。すごいけど地味で、地味だけどすごいの」 いい先生だったんだろうなと思う。「そっか。じゃ、今から二人だけの交流会をやろうぜ。お前昨日、来なかったしな」 ドレスを着れないから絶対に行かないと言い張っていたが、本当に来ないとは。「行かないに決まってるよ。みじめだもん。女の子はみーんな
last updateLast Updated : 2026-09-10
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42.アナザーストーリー4

 あれから、パトロール隊の活動は少し忙しくなった。『ポチの部屋』にはよくセイナも入り浸っているようだ。「思念品はお仲間って感じがするんだよね。この部屋のデザインも好きだな」と言っていた。 踊るくま人形をザクッと浄化したことをセイナにもブーブー言われたのは、仲間意識があつたからなのか……。 ボトルフェスは「瓶と持ち主がセットで落ちていればいいのにな」と言ったらセイナが湖近くのラグナシアのことを教えてくれた。意識すれば学園内のことを視ることも感じることもできるようだ。 プールで水面ダッシュしていた時はふわふわと俺の首に巻き付くようにしてキャーキャー言っていたし、ラッキースケベ事件(?)の時はさんざんニコラたちをからかっていた。 ……聞こえてはいないけどな。 そして、とうとう秋が来た。 セイナの姿を誰もが見えるようになった。皆の記憶も書き換わった。セイナがわざとやっているわけではなく、「皆ともっと遊びたかった」という強い願いのせいか、そうなってしまうようだ。ニコラの父親の時もそうだったらしいので、予想通りだそうだ。 俺の記憶だけは書き換わっていない。 皆と齟齬が発生するので、あまり過去の話はしないようにしている。 ニコラの提案で歓迎会まで行われることになった。ニコラは全員の歓迎会だと言っていたが……間違いなく、彼女の事情を知っているのだろう。 学園の中庭。 屋台のように机や椅子が並べられている。秋晴れの空に、浮遊式の灯りが紐につながれてふわふわ浮かんで賑やかだ。「完全に祭りだな」 ニコラがふふんと胸を張る。「皆で準備すると、そうなるよな」 ラビッツはテーブルの上にクッキーの山を積んでいる。焼き立てらしく甘い香りが漂ってきた。他にも色とりどりのカラフルゼリーが紙皿に並べられている。マカロンもまたカラフルだ。 ラビッツがクッキーを割って、セイナの口に差し出した。「セイナ、どうぞ」「えっ、も、もう?」「味見よ、味見。はい、あーん」「あ、あーん。おいひいでふっ! でも、さっきも味見したよぉ?」「青空の下の味見は格別よ」 ラビッツも残り半分のクッキーを口の中に放り込んだ。「うぎゅ。本番で食べられなくなりそうだよぉ。でもでも、おいしい〜」 食べなくても大丈夫なのは変わらないものの、姿が皆に見えるようになったことで食べられるようにはなっ
last updateLast Updated : 2026-09-12
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