柚希は冗談だと思って、気に留めなかった。凛斗の本気に、柚希はまだ気づいていなかった。6歳のころから26歳になった今まで、そのまっすぐな気持ちは一度も揺らいでいない。「柚希、やっとまた会えたんだ。お願いだから早く目を覚ましてくれ」凛斗が顔を上げると、その目元は真っ赤に泣き腫れていた。「凛斗」目が覚めたばかりの柚希の声は、少ししゃがれていた。「どうして泣いているの?」「柚希!どこか痛むところはないか?すぐに医者を呼んでくるから、ここで待っていてくれ。絶対に動いちゃだめだぞ!」慌てて飛び出していく後ろ姿を見送りながら、柚希は複雑な思いに囚われていた。自分のことをずっと大切に守ってくれていた人のことは無視して、自分を深く傷つける人ばかりを必死に愛してしまったからだ。柚希がそっと目を閉じると、目尻から涙が一滴こぼれ落ちた。これからは、心から自分を愛してくれる人のためだけに生きよう、と心に決めた。医師の診察で異常がないと分かると、柚希は窓際に歩み寄り、一本の電話をかけた。「周防さん、柚希です。盗作の件で、私への誤解を解くのを手伝っていただき、本当にありがとうございました」「柚希さんのことは信じているよ。実は昨日、柚希さんがこれまで神谷さんのために尽くしてきたことを全部本人に話したんだ。二人はその……」柚希は驚かなかった。仮に雅臣がそれを知ったとしても、ただの余計なお世話だと言い捨てるだけなのは分かっていた。柚希は唇を噛みしめ、ぽつりと言った。「もういいんです。私と雅臣は、すでに離婚しましたから」そうだ、離婚したのだ。もう何の関係もない。……東都。雅臣が弁護士に確認したところ、仁は告訴するつもりはまったくないと言っているらしい。柚希が拘置所に入ることは絶対にありえなかったのだ。だとしたら、柚希はどこへ行ってしまったのだろう?雅臣は怒りにまかせて壁を殴りつけた。自分は夫であるはずなのに、柚希の行き先さえ教えてもらえないのだろうか?ちょうどその時、電話を終えた祐介が戻ってきて雅臣に告げた。「ご自宅のお手伝いさんの話では、奥様がすでに帰宅されているとのことです」やっぱり、柚希はへそを曲げていただけだったのだ。盗作の犯人扱いされたことや、責任を押しつけられそうになったことに、柚希は
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