穏やかな青い海、波の音と潮風が通る道。僕らの毎日がここにある——。 「あっあっ、いっつぅーーっっ!!」 処置室から大きな声がして、看護師ユリちゃんは急いで向かった。 「ああ!院長大丈夫です!? ちょっと待っててくださいって言ったのにー!」 「いやいや、ごめんごめん。コンちゃんはいつも大人しいから、一人でも保定出来るかなと油断して…、ほら、ユリちゃんも忙しそうだし…」 腕をガーゼで抑えながら言った。 「私の仕事なので、そんなこと気にしないでください!先生が怪我した方がこちらの仕事は増えますから!」 そう言いながら、テキパキと黒猫のコンちゃんをゲージに戻し、消毒液を用意している。 「はい、先生手出してください。消毒しましょう」 おずおずと手を出そうとすると、ガラリとドアが空いた。副院長が顔をだした。 「…大きな声出して、どうしたんですか?… 今、受付に人が足りないからお願いしたいんですが…」 「院長が猫ちゃんに引っ掻かれて血が出て…、ああ!そうでした!お待たせしてる飼い主さんがぁ!」 「そしたら、院長は僕に任せて、飼い主さんの対応を…」 「はい、お願いします!」 ユリちゃんは手にしていたピンセットを忙しく副院長に手渡し、急いで受付へ走って行った。 「…いやいや面目ない…」 院長はバツが悪そうに笑っている。 「…ほんとにもう、先生は…っ」 副院長はちょっとムッとした顔をしながら院長の手を取って、ムッとした顔とは裏腹に優しく処置した。 ◇ ここはとある海の街にある「あおぎり動物病院」。 兄弟で開業し、かかりつけ医として地域の動物医療を担っている。 院長の兄「梧颯真」は包容力のある優しい人柄で親しみやすく、相談しやすいと飼い主達にも慕われている。 副院長の弟「梧碧玖」口数は少くないが何事も真面目に丁寧に対応し、動物への優しい対応が飼い主達に信頼されている。 二人ともそれぞれの個性を持ち寄りバランスのとれた仕事をしている。 そんな彼らには秘密があった。 二人はなんと、義兄弟であり『夫夫』であった! ◇ 「…ごめんよ、碧玖」 「…危うくユリさんに先生の手を握られるところでしたっ!」 「あ、そこかぁ!
Last Updated : 2026-06-26 Read more