動物のお医者さん🐾今日も夫夫日和です♡

動物のお医者さん🐾今日も夫夫日和です♡

last update最終更新日 : 2026-06-29
作家:  もふねこ完了
言語: Japanese
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概要

ツンデレ

一途

一人称

ラブコメ

ハッピーエンド

医者

初恋

お見合い

BL

ー変わらぬ愛がそこにあるー 海沿いにある「あおぎり動物病院」を営む兄弟獣医、院長・梧颯真と、副院長・梧碧玖。 二人には、誰にも言えない秘密があった。 ——彼らは義兄弟であり、そして「夫夫」だった。 高校生と獣医学生という男同士のお見合いから始まり、遠距離恋愛やすれ違いを乗り越えて紡がれた二人の長い愛の軌跡。 そして、獣医として、夫夫として、共に歩む甘く温かな日常の物語。 コミカルスパダリ兄×ツンデレ弟

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15 チャプター
karte 1:院長と副院長の距離 ①
穏やかな青い海、波の音と潮風が通る道。僕らの毎日がここにある——。 「あっあっ、いっつぅーーっっ!!」 処置室から大きな声がして、看護師ユリちゃんは急いで向かった。 「ああ!院長大丈夫です!? ちょっと待っててくださいって言ったのにー!」 「いやいや、ごめんごめん。コンちゃんはいつも大人しいから、一人でも保定出来るかなと油断して…、ほら、ユリちゃんも忙しそうだし…」 腕をガーゼで抑えながら言った。 「私の仕事なので、そんなこと気にしないでください!先生が怪我した方がこちらの仕事は増えますから!」 そう言いながら、テキパキと黒猫のコンちゃんをゲージに戻し、消毒液を用意している。 「はい、先生手出してください。消毒しましょう」 おずおずと手を出そうとすると、ガラリとドアが空いた。副院長が顔をだした。 「…大きな声出して、どうしたんですか?… 今、受付に人が足りないからお願いしたいんですが…」 「院長が猫ちゃんに引っ掻かれて血が出て…、ああ!そうでした!お待たせしてる飼い主さんがぁ!」 「そしたら、院長は僕に任せて、飼い主さんの対応を…」 「はい、お願いします!」 ユリちゃんは手にしていたピンセットを忙しく副院長に手渡し、急いで受付へ走って行った。 「…いやいや面目ない…」 院長はバツが悪そうに笑っている。 「…ほんとにもう、先生は…っ」 副院長はちょっとムッとした顔をしながら院長の手を取って、ムッとした顔とは裏腹に優しく処置した。 ◇ ここはとある海の街にある「あおぎり動物病院」。 兄弟で開業し、かかりつけ医として地域の動物医療を担っている。 院長の兄「梧颯真」は包容力のある優しい人柄で親しみやすく、相談しやすいと飼い主達にも慕われている。 副院長の弟「梧碧玖」口数は少くないが何事も真面目に丁寧に対応し、動物への優しい対応が飼い主達に信頼されている。 二人ともそれぞれの個性を持ち寄りバランスのとれた仕事をしている。 そんな彼らには秘密があった。 二人はなんと、義兄弟であり『夫夫』であった! ◇ 「…ごめんよ、碧玖」 「…危うくユリさんに先生の手を握られるところでしたっ!」 「あ、そこかぁ!
last update最終更新日 : 2026-06-26
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karte 1:院長と副院長の距離 ②
*** 休日の朝、二人でベッドに入ったままユルユルとした時間を過ごす。昨夜の続きみたいな甘やかなキスをして、身体に残った小さな熱を優しく抱きしめ合う。 二人でキッチンに立って、僕はうちの猫のご飯を用意して、碧玖はコーヒーを淹れる。 今日の朝食はちょっと贅沢に昨日買っておいた人気店のベーグルに、生ハムとクリームチーズを挟んだ。 平日の朝とは違って、のんびりとした空気の中、和やかに笑い合う。 ──パチンッ、パチンッ、パチンッ… 朝食の後、ひと通り準備を済ませ、僕は手の爪を切っていた。 「…先生、爪切ってるんですか?…」 「…?うん、仕事柄も短くしておかないとねぇ?でしょ?碧玖だって」 「…先生は深爪しそうなくらい短くしますよね。…なんか、エッチです」 「ちょっ、ちょっ、急に何を言ってるの!?」 「昨日の夜、チョット伸びてるなと思ったので…」 碧玖は含みを持った色気のある目付きで僕を見た。 「んー、そうだね、キミを傷付けるワケにはいかないからね…。…ねぇ、でもさ、キミの方がエッチだよね?爪切ってるだけだよ僕は。ふふふっ」 「…!んーーっ、ボクはそんなことないです!」 碧玖は恥ずかしそうに顔を赤らめ、ちょっと拗ねた表情になった。 何度見ても可愛いと思ってしまう。 優しく頬を撫でて、キスをする。まだ少しご機嫌ナナメな表情だけれど、くるりと丸い目を向ける。もう一度唇を重ねれば、満足気にいつもどうりの控え目な笑みを浮かべた。 そう、碧玖は昔から僕の中で可愛い存在だ──。
last update最終更新日 : 2026-06-26
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karte 1:院長と副院長の距離 ③
*** 僕たちが出逢ったのはお見合いだった。 まだ僕が獣医を目指す大学生で、碧玖は高校生だった。20歳と16歳、こんな若さで男同士のお見合いなんてどうかしているとしか思えなかった。 僕の親も碧玖の親も、息子がゲイだったことが分かり混乱し、どうすれば良いのかも分からず手を尽くした中で、LGBTQについての勉強会に通うようになった。 そこで母親同士意気投合し、信頼出来る素性の相手と、親の目の届く中でお付き合いするのなら安心出来るという身勝手な理由でお見合いに至った。 普通ならこんな親の敷いたレールになんか乗る気もさらさらなかったのに。 ……そう思ったのに、お見合い写真に映るキミは僕の特別だった。 お見合い当日、お見合いらしくお堅い料亭で、お互いの両親と共に顔合わせとなった。 慣れない袴姿で現れたキミは、185cmある僕を超える高身長で、顔は小さくモデルのようなスタイルだった。 柔らかそうで艶のある茶色の髪に透けるような白い肌、誰が見ても整っている綺麗な顔立ちの美少年だった。その中でも目を奪われたのは、透明で凛とした真っ直ぐな瞳だった。 僕には一瞥もくれず、母親同士の今更な挨拶も耳に入れている風も無かった。僕はその間、キミの瞳に映らないように、時々こっそりと目を向けていた。 会席料理の味も分からないまま食事が終わると、僕たちは急に「では、若いもの同士で…」なんて言う前時代然とした言葉と共に二人だけの時間を渡された。 僕は内心緊張から落ち着かなかったが、年上として口を開いた。 「碧玖くん、変なことになっちゃってごめんね…、碧玖くんも母親には逆らえず来てみたのかな…?俺はさあ——」 碧玖は遮るように話し出した。 「ボク、梧さん…、颯真さんだから逢いに来たんです!…あの、ボク、颯真さんのこと前から知ってるんです」 情熱の籠った、曇りのない瞳だった。 「ボク、ずっとバレーボールやってるんです。それで、まだ小学生の頃にテレビでバレーボール強豪校の特集をやってて、そこで颯真さんを見たんです」 言われてみれば、何度かテレビの取材が来たことがあった。 「うわ!よくそんな前の覚えてたね。それに俺花形スパイカーとかじゃなくてセッターだよ?誰かと間違えてない!? 」 「間違えるわけありません。ずっと
last update最終更新日 : 2026-06-26
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karte 1:院長と副院長の距離 ④
「え、あ、そんなこともあるんだ…。碧玖くんは、憧れと恋愛、同じ線上に並べてしまってそれでいいの?俺とそういうこともするってことだよ?」 こんな真っ直ぐで可愛い少年に何を言うのかとも思ったけれど、お見合いをして、お付き合いをして、その先には身体の関係は必ずある。 それに僕だって、ずっと聖人でいられるわけも無い。こんな好みの子を前に、ずっと我慢を決め込むなんて出来るわけが無い。僕は立派な成人男性なわけだし!しっかり現実も話しておかないと。 もう一歩踏み込んでみた。 「俺はリバはちょっと、される方は無理だから…意味わかるかな?」 「わかります。ボク、どちらでもいいです」 即答だった。どんな形であれ、心はもう決めて来ていたのかもしれない。 将来的に僕の親の籍に入ってもらうことも一つ返事だった。 「ボクにはもう、あの家に帰るところはありませんから。その方がいいです」 碧玖は家族にゲイであることをカミングアウトしたことで、兄弟と溝が生まれてしまい、自分が家にいるべきでは無いと判断していた。そのことがあり、地元から遠く離れた高校で寮生活を送っていた。 彼の心は逢う前から決まっていた。碧玖は僕を選んだ。 この重い決断をこの時僕はそこまでしっかり理解出来ていなかったかもしれない。 下心もあってここにやってきていた僕は、少年の一途で熱い眼差しに少しいい気分になっていた。それを見透かしたように、碧玖は厳しくピシャっと釘を刺すように言葉を投げた。 「…けど浮気は嫌です。それだけは許せないんで」 芯のある強い言葉に、僕は少々怯んだ。 そう、ゲイ界隈ではケツの軽い奴が時々いる。碧玖はまっさらで純粋であっても、そういう大人な現実なんていう部分を、しっかりと知っているのが分かった。 ——まぁ、ケツが軽いも何も、俺は絶対にケツは無理なのだが…、いや、そういう話しではなくて…くく…—— 「…あの、ちゃんと聞いてますか?そこは約束してください」 僕は顔を引きしめ「もちろん!」とクールに返した。碧玖は少し鼻で笑ったような気もした。 こうして僕たちの婚約は成立した。 ここから若い男同士がお付き合いしたらどうなっていくのか、想像に容易いと思われるが、残念なことにここから僕たちの間には長い期間、遠距離恋愛という壁が立ちはだかるのだ
last update最終更新日 : 2026-06-26
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karte 1:院長と副院長の距離 ⑤
*** 「…?、先生、何か考え事ですか?」 碧玖が僕の顔を覗いた。 「ああ、うん。碧玖と初めて会った時のことを思い出してた」 ソファーに深く座り、窓の外の遠い空を見ながら応えた。 「もう10年以上前かぁ…。袴姿で初々しくて可愛かったな〜…」 「!! 今のボクは違うってことですか?」 「過去の自分に妬いてるの?」 「…そういうことではないですけど…!」 碧玖はまた可愛い顔をした。僕は何度だってこの顔を見たくなってしまうんだ。 「…おいで、碧玖」 そう言って碧玖を膝の上に乗せ、そっと後ろから抱きしめた。 碧玖があの時僕を選んで託してくれたこの時間は、一秒たりとも無駄にしたくない。 碧玖さん、今も変わらず可愛いですよ…」 「…もう30も近いのにですか?」 「うんうん、幾つになっても、ずっと僕の年下の可愛い恋人ですよ…。あ、でも、あの時、碧玖さんの袴の下に手を伸ばしておけばよかったなぁー、ふふふ」 ちょっとわざとらしく、碧玖の太ももから腰骨に手を這わせた。 「無垢だったボクへの冒涜はやめてください」 そう言って、僕に優しい肘鉄をかました。 屈託なく笑う碧玖の顔に僕の幸せが詰まっていると思った。 僕たちは身体を絡ませ合いながらソファーに倒れ込む。太陽の光が碧玖の金色の髪を透かしてキラキラと眩しい。 ソファーの端から迷惑そうにうちの猫が下りて行った。 「…あっ…んっんっ…!…先生、まだ昼前ですよ…」 「うん、知ってる。…碧玖はこのまま僕が始めると思ってるの…?エッチだなぁ…」 「…!!ボ、ボクはそんなこと思ってません…」 また僕が大好きな碧玖の可愛い顔が見れて満足だった。 そっと唇から舌を差し込むと、碧玖は応えるように僕の舌に熱い舌を絡めた。 このソファーから、キミと見上げる空はもう数え切れないけれど、キミとなら何度だって僕の目には愛しく映る。 明日の空も、キミと予約しておこう——。 ✧••┈┈┈┈┈┈••✧ 【番外編/碧玖サイド】憧れと、恋をする① へつづく
last update最終更新日 : 2026-06-26
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【番外編/碧玖サイド】憧れと、恋をする①
1 ボクは小4でバレーボールと出会った。 身長が高いからという理由だけで、無理やり地元のバレーボールのクラブチームへ入れられたのが始まりだった。最初は嫌々だったものの、そこで活躍していくことでバレーボールに夢中になっていった。 ある時テレビで中学の強豪校特集を見た。そこには、チームを纏めるキャプテンとして笑顔が眩しい人がいた。 ボクには無い社交的でひょうきんそうな、そん印象だった。軽やかで爽やかで、チームのムードを盛り立てていく。なのにしっかり周りを見ている人だと思った。その日からその人はボクの憧れになった。 その人のいる中学の情報を集め、雑誌の記事もスクラップした。時には試合を見に行ったこともあった。高校での活躍も変わらず追っていた。 中学生のボクは周りとは上手くやりつつも、時々息苦しさのようないずらさを感じていた。 ボクは目立ちたくもなかったけれど、身長は止まることなくぐんぐん伸び、そのうちに道を歩くにもジロジロ見られることが多くなり、その視線が憂鬱になっていった。 学校では小学生の頃以上に女の子からの視線を感じるようになり、通りすがりの女の子達にキャーキャー言われたり、急に知らない子から声をかけられたり、告白されたり、落ち着かなかった。 友達から「碧玖はカッコイイからな、女の子選び放題で羨ましいや」なんて言われたこともあったけれど、ボクにとってはそんなことには全然価値は無かった。 ボクは自分を知っていた。 ボクの恋愛対象は男性だった。気付いた時にはもうそうだったとしか言いようがなかった。 何となくこれは口にしてはいけないことだと感じていた。それにボクは恋愛をしたいとかそんな気持ちもあまり湧いてきたことは無かった。 あの強豪校の梧さんだって、憧れであって、恋愛対象だなんて大それたことを思ったこともなかった。 ボクはただひっそりと普通に生きていければ充分だった。今は続けているバレーボールをして、勉強をして、いつか医師になりたいと夢を持って、淡々とそこに向かおうと思っていた。 *** そんなある時、家族にボクがゲイであることをカミングアウトする状況になってしまった。もう取り繕えず言うしかなかった。 その後家族は変わらないようでいて、でもギクシャクした空気になったのを感じた。
last update最終更新日 : 2026-06-26
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【番外編/碧玖サイド】憧れと、恋をする②
2 ボクは実家から遠く離れた男子高を選び、寮生となった。 寮生活は思ったよりも順調だった。同室になった2年の先輩は寮の中を案内してくれたり、寮生の心得的な事を面白おかしく教えてくれた。 その中でも変わったルールを教えてくれた時があった。その一つに、「同室同士の恋愛は禁止」があった。色々な事で勉強に支障が出たり、風紀を乱す可能性があるから出来たということだった。 しかし、結構経った後に「まだ信じてたの?そんなマンガみたいなルールは無いよ」と言われ「碧玖は可愛いね」と笑われた。 それ以外も、冗談を真に受けるボクを面白がって、時々わざと嘘の寮のルールを吹聴したりもした。「碧玖信じすぎだよ」と笑いながら訂正はしてくれて、ボクも一緒に笑った。何かと親切で面白くて話しやすい人だった。 バレーボールは相変わらず続けていた。今までと同じポジションで落ち着きそうだった。強豪校では無かったけれど、バレーに打ち込むことで、その間は余計なことを考える時間も無いのがボクには丁度良かった。 子供の時は嫌々始めていたのに、今となっては無心で自分に戻れる時間になっている気がする。 ボクがファンだったあの4歳年上の憧れの梧さんは、高校卒業後の進路も、バレーボールを続けているのかさえも分からなくなり、新しい情報はもう2年も途絶えていた。 *** 高校にも慣れてきた頃、母親から驚くような連絡が入った。詳しくは郵送で送ると言われ、それでも半信半疑だった。 数日後ボクの手元に届いたのは、ある男性のスナップ写真数枚と、経緯を書かれた手紙だった。 男のボクに、男のお見合い相手を見付けたと書いてあった。 母親なりにボクを心配し、ボクを理解しようとLGBTQについての勉強会に参加するようになり、そこで同じように息子のことを理解しようと勉強会に参加していた人と友人になったという。 何回か足を運ぶうちに理解も深まり、そのうちに『信用出来る素性で親の目が行き届く相手ならば安心ではないか』と母親同士が意気投合し、このお見合い話は生まれたらしかった。 普通ならそんな馬鹿げた話しと一蹴してしまいそうだったが、母のボクのためを想ってくれる気持ちも嬉しかったし、何よりスナップ写真に写る男性は確実に誰だか分かった。 あの頃より少し大人びていたが、ボクが見間違えることなん
last update最終更新日 : 2026-06-26
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【番外編/碧玖サイド】憧れと、恋をする③
3 数ヶ月後、お見合い当日。ボクは意図せずお見合いらしい袴姿で料亭を訪れた。190cm近いボクの身長と、手足の長さに合うスーツは既製品では見つからなかった。 気合いの入った袴姿に最初は気恥ずかしさもあったが、テレビで見たような和風庭園が望める品のある和室と畳の青い香りに、袴姿でのお見合いは形になり説得力は出たと思った。 やっと今日、ボクがずっと憧れていた人と逢える。 嬉しさの反面、憧れに逢うのは正解なのか分からなかった。宝箱を眺めるように遠くから見つめていた気持ちと、自分と同じ高さにして宝箱を開いてしまう罪悪感のような、背徳感のような気持ちもあった。宝箱を開いてしまった先にどんな答えがあるのか、そこを見るのも怖い気がした。 それにこのお見合いに不安が無いわけではなかった。 初めてこのお見合い話を知った時、まさか颯真さんも男性が好きだという事実に衝撃を受けた。 ボクが抱いていたイメージは、スポットライトの当たる輝くだけの場所にいる人だと思っていた。どこか残念な気もした…。もしかしたらボクと同じように影を持った心で生きていたのかもしれないと思うと苦しかった。 でも、その同じ気持ちを分かち合える人なのかもしれない。そして、それを周りには感じさせない強い人なのだとも思った。 やっぱり力強く頼れる人なんじゃないかとボクなりに考えてここに来た。 両親含めて初めての顔合わせだった。 ボクは緊張して、颯真さんを正面から見ることは出来なかった。視界の端にぼんやりと映すのが精一杯だった。ボクは挨拶もろくに出来ず、心臓の音を抑えるのに必死だった。 母親同士が盛り上がって話してくれたお陰で、少しづつ落ち着きを取り戻す時間が持てた。 会食中数回、颯真さんに目を向けることが出来た。スーツ姿が新鮮で精悍に映った。ユニフォーム姿とはまた違って、大人な男を感じた。 高校生の頃の颯真さんとは少し変わっていたが、やっぱりボクが憧れて追いかけていた颯真さんだった。爽やかで男らしい優しさのある顔立ちだった。 一言も言葉を交わせないまま会食が終わると、颯真さんと二人きりになった。
last update最終更新日 : 2026-06-26
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【番外編/碧玖サイド】憧れと、恋をする④
*** 緊張と恥ずかしさと戸惑いと、頭の中は再びぐちゃぐちゃになってしまった。 何から話せばいいのか?想いはあるのに、口から言葉がなかなか出てくれなかった。すると颯真さんが話し出した。 「碧玖くん、変なことになっちゃってごめんね…、碧玖くんも母親には逆らえず来てみたのかな…?俺はさあ——」 ボクは違うと思って遮るように話し出した。 「ボク、梧さん…、颯真さんだから逢いに来たんです!…あの、ボク、颯真さんのこと前から知ってるんです」 止まらず続けた。 「ボク、ずっとバレーボールやってるんです。それで、まだ小学生の頃にテレビでバレーボール強豪校の特集をやってて、そこで颯真さんを見たんです」 「うわ!よくそんな前の覚えてたね。それに俺花形スパイカーとかじゃなくてセッターだよ?誰かと間違えてない!?」 「間違えるわけありません。ずっと颯真さんを追っていたんですから」 憧れの颯真さんを前に信じて欲しくて、貴方だから逢いに来たことを知って欲しくて、捲し立てるように話してしまった。 ボクは颯真さんが載っている過去の雑誌を何冊も持ってきていた。ボクにとってずっと大切な人で、追っていたことを分かって欲しかった。この信じられない奇跡的な出逢いを知って欲しかった。 颯真さんの試合も見に行ったたことがあったことも伝えた。 「ボクの憧れだったんです。チームの司令塔としての颯真さんも、ムードメーカーの颯真さんも、いつも周りの人のために何が出来るかを考えて実行する人だなと思って、素敵だと思ったんです。勿論…、爽やかでかっこいいなって…。だから今回名前を聞いた時に嬉しくて…」 ボクはそこまで言い切ると、自分の熱に急に恥ずかしくなった。それに、きっとこんなファン丸出しな発言、相手にされないかもしれない。 「え、あ、そんなこともあるんだ…。碧玖くんは、憧れと恋愛、同じ線上に並べてしまってそれでいいの?俺とそういうこともするってことだよ?」 ボクの熱に引いている気もした。そして、ボクを試すような言葉なのかもしれない。 確かに憧れと恋愛は違うもの。 ボクは本当に逢ってみてどう感じた?颯真さんとボクが体の関係を持つ?ここに来る前だって何度も考えていた。 逢って最終的にしっかり自問し、答えを出したかった。 すると、颯真さんはまたボ
last update最終更新日 : 2026-06-26
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karte 2 : 秘密は、休憩時間に ①
1 穏やかな青い海、波の音と潮風が通る道。僕らの毎日がここにある——。 ここは『あおぎり動物病院』。兄弟二人で開業している。 「碧玖の縫合は本当にいつも綺麗だね。これならたまちゃんの傷跡も残らないんじゃないかな」 「上手く出来て良かったです。最近先生が教えてくれたことがしっかり身に付いたと思います」 「碧玖謙遜しすぎだよ。前からキミは上手だったよ。もっと自信持って、ね?」 颯真が碧玖の背中をポンと優しく叩きニコリとすると、碧玖もニコリと返した。 「…、碧玖喉乾いたんじゃない?良かったらこれ飲んで」 そう言って颯真は自分の飲みかけのコーヒーを手渡した。なんの躊躇も無く碧玖はコーヒーを口にした。 目の前で当たり前に繰り広げられるそのやり取りを、片付けをしながら看護士ユリちゃんは空気の如く目にしていた。ユリちゃんは、猫のたまちゃんの術後チェックに部屋を出た。そして「一体何を見せられてるのかな」と、呆れたように小さく溜息をついた。 ユリちゃんは副院長があんな風に自然な可愛い笑顔を向けるのは、院長しかいない事に気付いていた。それに当たり前に飲み物をシェアするのもだ。 部屋に二人きりになると、急に甘い空気に包まれた。 「碧玖お疲れ」 そう言って颯真は碧玖を優しく抱擁した。 「うん、ちょっと疲れました…」 「昨夜は夜更かししてしまったし、寝不足もあるかな…?」 「はい、それもあると思います…」 碧玖は身体を預けるように颯真に寄り掛かった。 *** 「怪しい!!断じて怪しい !!」 「どうしたんですか?ユリちゃん先輩?」 動物病院休憩室にて、看護士ユリちゃんとその後輩看護士ナミちゃんはお昼休憩中だった。 「院長と副院長!私のセンサーにめちゃくちゃ引っ掛かるの!」 「センサーですか?」 「そう、この腐女子センサーにっ!」 「先輩BL好きですよねー」 「ナミちゃんは何とも思わないの?あの二人を見ていて!」 「…あー、とっても仲良いなぁって思ってますよ。距離近いなーとか…??」 「ナミちゃんは先ず勉強のためにこれを読んで!」 そう言ってマンガ本を手渡した。 「…兄弟BL…」 「そう!」 ナミちゃんはパラパラとお弁当片手にその場で読み出し
last update最終更新日 : 2026-06-29
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