卒業旅行で、私たち三人はオーロラを見るためにアイスランドを訪れていた。吹きすさぶ強風に、親友の中島愛美(なかじま まなみ)のマフラーが奪われた。私の彼氏、梅田真(うめだ しん)はとっさに自分のマフラーを外すと、彼女の首元を包み込むようにしっかりと巻きつけた。それから振り返って、私に言った。「なあ、愛美のマフラー拾ってきてくれ。あいつの一番のお気に入りなんだ」凍てつく風の中を、私は懸命に追いかけた。ようやくマフラーを手にして顔を上げた時には、オーロラはすでに空から消え、ふたりの姿もどこにもなかった。届いたメッセージは、たった一言。【遅すぎ。愛美が寒がってたから、先に戻ってる】異国の道端に立ち尽くし、車を待つこと6時間。20台以上の車に手を振り、ようやく1台が止まって乗せてくれた。ホテルに帰り着いた頃には、もう深夜を回っていた。体の芯まで凍えきった私の目に映ったのは、1枚の毛布にくるまって身を寄せ合いながら、今日撮った写真を見せ合って笑うふたりの姿だった。写真のこと、オーロラのこと――弾む会話は、私が決して入り込めないものだった。真は私に気づくと、わずかに眉をひそめて言った。「遅かったな。お湯、用意しておいたから。ちゃんと温まってきなよ」コップに触れると、中のお湯はとっくに冷めきっていた。ずっと胸の奥に押し込めていた疲れが、堰を切ったようにあふれ出す。もう、いいや。帰りの便を一番早い便に変更し、予約していたホテルもキャンセルした。手の届かないオーロラなら、もう追いかけなくていい。……冷めきったお湯の入ったコップをそっと置き、マフラーをハンガーにかける。指先までひどく凍えていた。愛美が布団から顔を出して、私の手を握った。「うわ、冷たっ!」彼女は両手で私の手を包み込むと、温めるように何度もこすってくれる。それから顔を横に向けて、少し咎めるような視線を真に向けた。「ねえ真、私、綾華ちゃんを待とうって言ったのに。真ってば急かすんだもん」真は両手を挙げた。「はいはい、わがまま姫様。俺が悪うございました」そう言いながら愛美をベッドに押し戻し、丁寧に布団をかけ直してやる。「お前は体弱いんだから、寒いの分かってるだろ。他人の心配をしてる場合か」バスタオルが一枚、こちらに投げつけら
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