復縁してから、私――四方田早苗(よもだ さなえ)は夫をレンタルするようになった。夫の幼馴染が、彼を私のもとから呼び出すたびに、私はもう以前のように泣きわめいたりしない。ただ、時間単位で料金を請求することにした。昼は一時間100万円、夜は一時間200万円、休日は三倍。それを三か月続けただけで、私の口座には2億近い金が振り込まれていた。パーティードレスを選びに付き合うと約束していた日も、あの女から夫に泣きつく電話がかかってきた。「包丁で手を切っちゃったの……」私は顔も上げず、無言で送金用のQRコードを差し出した。ある夜、私が突然高熱を出し、夫が慌てて病院へ車を走らせていた時のこと。また彼のスマホが鳴った。画面に表示された女の名前を見て、彼は何度もためらった末に電話に出た。スピーカーの向こうから、か細い泣き声が聞こえる。「理人さん、雷が怖くて眠れないの。そばに来てくれない?」私は慣れた手つきで傘を取り出し、次の交差点で降ろしてほしいと告げた。何か言いたげな夫に、私はただ微笑んだ。「お金、忘れずに送ってね」娘の定期健診の日。またあの女から電話がかかってきた。「理人さん、陽太が遊園地に行きたいって。やっぱり絶叫系って男の人が一緒じゃないと……」電話を切った理人は振り返り、しゃがんで娘に話しかけようとした。すると娘――結城碧(ゆうき あおい)は、私の真似をして小さな手を差し出した。「大丈夫だよ、パパ。お金を送ってくれればいいから。今日は三倍だよ」その瞬間、結城理人(ゆうき まさと)の顔から申し訳なさがすっと消えた。彼は立ち上がり、碧を指差して私を問い詰めた。「早苗、お前は普段からこんなふうに子どもを教育してるのか」私は静かに碧を背中へかばう。「何も間違ってないわ。愛をもらえないなら、せめてお金くらいはもらわなきゃ。私みたいに、離婚してからようやくそのことに気づくより、ずっといいでしょう」理人は言葉を失った。重苦しい沈黙の中、再びスマホが鳴る。川澄真穂(かわすみ まほ)の息子の声が漏れ聞こえた。「理人さん、早く来てよ!メガコースター百回乗るって約束したじゃん!」その言葉に、碧は私の服の裾をぎゅっと握り込んだ。以前、碧が何度も「遊園地に連れて行って」と頼んでも
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