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第4話

作者: 十枝コハク
そう言うと、理人はすぐにスマホを取り出し、警察へ通報した。

私は全身の力が抜け、その場に崩れ落ちたまま立ち上がることすらできなかった。

口の中に血の味がじわりと広がった。

私はかすれた声で言った。

「この二人が私の母をこんなふうに踏みにじっているのに……あなたには何も見えないの?」

理人は陽太に怪我がないか確かめることばかり気にしていた。

「子どもが事情も分からずにやったことだろう。どうして穏便に話し合えないんだ?それに真穂だって止めようとしていただろ」

ほどなくして警察が到着した。

警察官たちが私をパトカーへ乗せようとするのを見て、私は必死に抵抗した。

「お巡りさん!私、この人たちには指一本触れていません!」

真穂は陽太の膝にある、爪の先ほどしかない小さな青あざを指差し、涙ながらに訴えた。

「うちの子にこんな酷い怪我をさせて……まだこんなに小さいのに、心の傷になったらどうするんですか」

あの二人の作業員も横で口をそろえ、真穂の言い分に合わせた。

私は騒ぎを起こしたとして留置所へ連行され、そのまま丸五日間も拘留されることになった。

その日数を聞いた瞬間、血の気が引いた。

「理人、お願い……示談にしてもいい?碧ちゃんは心臓が悪いって知ってるでしょう。五日も私に会えなかったら不安になるわ。そのせいで発作でも起きたらどうするの?」

理人は一瞬、ためらうような表情を見せた。

それを見た真穂は、すぐに理人の腕へしがみついた。

「理人さん、ここで示談にしたら、陽太に悪いお手本を見せることになるわ。

まだ小さいのに、『悪いことをしても罰を受けなくていい』って覚えてしまったら、将来どんな子になるか分からないでしょう?」

その言葉を聞くと、理人はたちまち眉をひそめた。

「早苗、そもそも先に手を出したのはお前だ。ちょうどいい。二人の子どもへの戒めにもなる。

碧ちゃんのことは、その間は俺が面倒を見る。お前は留置所で頭を冷やして、しっかり反省しろ」

「理人!」

私は勢いよく立ち上がり、彼を引き止めようとした。

だが、警察官に押さえつけられ、そのまま無理やり留置場用の服に着替えさせられた。

丸五日もの間、碧が真穂親子にどんな目に遭わされるのか。

想像しただけで恐ろしくてたまらなかった。

胸を押し潰されそうな焦燥に駆られ、私は狭い監房の中を何度も行ったり来たりした。

夜になると、一日中張り詰めていた神経がとうとう限界を迎えた。

力尽きるように硬いベッドへ倒れ込むと、昼間に負った傷の痛みが今になって一気に押し寄せてきた。

私は目を閉じ、眠って少しでも時間が早く過ぎることを願った。

しかし、五分も経たないうちに無理やり叩き起こされた。

隣の監房の男が鉄格子にもたれかかり、私に向かって口笛を吹いていた。

「ひでぇ怪我だな。お前、このままひっそり死んじまうんじゃねぇかと思って、わざわざ声かけてやったんだよ」

私は背を向け、その男を完全に無視した。

だが五分後、また叩き起こされた。

その夜、私は一睡もできず、心も体も休まることはなかった。

ようやく朝を迎えた頃には、私はぐったりと壁にもたれかかっていた。

警察官にトイレへ行きたいと伝えようとした。

しかし向かいの男は、私の考えを見透かしたように、私が口を開くより先に警察官を呼び止め、何度も話しかけて引き留めた。

私は腹が裂けそうになるほど我慢を強いられ、冷や汗が止まらなかった。

意識が遠のきかけたその時、男は人の不幸を面白がるようにいやらしく笑った。

「ねーちゃん、怒らせちゃいけねぇ相手を怒らせたら、こうなるんだよ」

その言葉を聞いた瞬間、私はようやく悟った。

この男は、理人が私に苦しみを味わわせるために、わざと送り込んだ人間なのだ。

もう彼を憎む気力すら残っていなかった。

ただ、一秒でも早く時間が過ぎてくれることだけを祈り続けた。

五日目になる頃には、私は拷問のような嫌がらせを受け続けたせいで、見る影もないほどやせ細っていた。

理人は朝早くから留置所の入口で待っていた。

私の姿を見た瞬間、その瞳の奥を、ほんの一瞬だけ痛ましそうな色がよぎった。

彼は二歩歩み寄り、両腕を伸ばして私を抱き寄せた。

「自分が間違っていたって分かったか?

お前のお母さんの遺灰は全部汚れたわけじゃない。人を雇って残っていた分を集めさせ、新しい骨壺に納めて、別の静かな墓地に改葬しておいた。

体調が戻ったら、一緒に見に行こう」

私はその言葉を聞き流し、彼の腕を容赦なく振りほどいた。

そしてバッグから一枚の書類を取り出し、彼の目の前へ突きつけた。

「母のお墓の場所代、あなたが前に払ったレンタル代じゃ足りないわ。ここにサインして」

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