三年前―― 「怪盗アルジェントが現れたぞ!」 騒がしいサイレンの音が夜の街に鳴り響く。 「いたぞ!追え!!」 ビルの影に人影が二つ。 『紫音、ちゃんとついてきているか?』 「当たり前じゃん!」 白いジャケットを翻し、少年は屋上を駆け抜ける。 「でもさぁ?悪い奴から盗まれた物を取り返してるだけなのに、なんで俺たちが追われるんだ?」 アルジェントは小さく笑う。 『世の中の道理は、正しい者の味方とは限らない』 「変な世の中」 『無駄話はさておき、帰るぞ?』 二人の怪盗は夜の闇へ消えていった。 ◇◇◇ 「なあ?なんで俺にはアルジェントみたいな二つ名がないの?」 『欲しいのか?』 「うん!だってカッケーじゃん?」 『そうか』 アルジェントは微笑む。 『十六になればお前にも二つ名がつくはずだ』 「まだ二年もあんじゃん!」 『ははは……まあ、つくかどうかはお前次第だがな?』 「ふぅん」 ◇◇◇ 「アルジェント、貴様はここで終わりだ!その愛弟子の命が惜しければ、おとなしく降伏しろ」 アルジェントは静かに目を閉じる。 『……わかった』 「ダメだ!アルジェント!!」 『逃げのびろ……!紫音、お前は……』 ――そこで、景色は途切れた。 ハッとして目が覚める。頬には涙が伝いなぜか胸がズキリと痛む。なにか大事なことが抜け落ちてるような気がする。 夢を見ていたはずなのになに一つ思い出せない。 「なんで泣いてんだ?俺」 涙を拭って、制服に着替えた。 今日もいつもの朝と同じ。 階下から母さんの声がうるさく響く。 「紫音ー、のんびりしてるみたいだけど、時間大丈夫なのー?」 「分かってるって!」 返事をし、階段をかけ降りる。 黒川紫音《くろかわしおん》。俺の名前だ。 顔を洗い、鏡を見ると少し伸びた髪の隙間から切れ長の目がのぞいている。 「あ、寝癖……」 ワックスを手に取り、跳ねた髪を手ぐしでサッと整えた。鏡の中の自分を見て、 「……まあ、こんなもんか?」と小さく呟く。 「紫音、何やってるの?」 振り返ると、母さんがニヤニヤとこちらを見ている。 「べっ別に、寝癖直してただけだし……」 声が少しうわずる。 「もぉ
Última actualización : 2026-07-04 Leer más