「ローティシアさんは、あの有名なフェアファックス将軍とご結婚なさるのですってね。アビゲイル様に聞きました。おめでとうございます」目の前でカテリーナが弾んだ声をあげる。ローティシアはずきずきと痛む頭で、小さく、ありがとうございます、と答えた。今朝は客間で目が覚めて、一瞬自分が死んで違う世界へ飛んで来れたのかとドキドキしてしまった。残念ながらそんな物語のようなことは、現実には起こらない。どうやらワインを飲んで倒れてしまったらしい。お水をもらいに食堂へ行った時に使用人のマギーが教えてくれた。応接室から近い客間へ閣下が運んでくれたそうだ。「ねぇ、ロッティ。ロッティは結婚してここを出て行っちゃうってお母さまが言ってたの。本当?」ブルーノが、カテリーナとの会話を聞いて兵士の人形を手に聞いてきた。「まだ、もう少し先のお話になるけれど‥‥そうなるみたい」微笑んでそう答えると、ブルーノの目に涙が溜まる。「いやだ!ロッティがいなくなったら絶対に嫌だよ!」涙をポロポロと流し始める。「仕方ないだろ。ロッティにもロッティの幸せがあるんだから!」ブルックが怒ったように、大人のような言葉を吐く。でも、その瞳もウルウルとしている。ローティシアもつられて泣きそうになったが、気づくと横でカテリーナが号泣し始めたので、その涙は引っ込んだ。「ぐぅぅぅ、なんていい子たちなんでしょうかぁぁ」子どもたちの泣く姿を見て、カテリーナは鼻水を垂らしながら嗚咽を漏らす。その姿にローティシアは、彼女が子どもたちを見てくれるのなら何の心配もいらない、と感じた。そして、泣き笑いしながら、3人をなぐさめた。◇◇◇結婚式は3か月先の社交シーズンの最終週に執り行うことになり、帝都の聖堂で近親者だけが参列することになった。結婚までにいくつかの夜会への出席と皇帝陛下への謁見は絶対にしなくてはならいということになり、急遽、家庭教師がついて毎日淑女教育にいそしんだ。マナーは、それなりに格好がつくようになりそうだが、ダンスには絶望しか湧いてこない。もともとそれほど活発に動くほうではないので筋力が無い上に、人と体を近づけてリズムに合わせて動くのは至難の技だ。これを難なくやれてしまう令嬢方は本当に凄いと感心してしまう。「レディ!顔は体の進む方向に向けるのです。下を向かないで!」ダンス講師のムッシュ
Last Updated : 2026-07-09 Read more