ローティシアが、グーテローワン家に身を寄せるようになって、もう5年になる。それ以前は、この州の端にある教会の孤児院で暮らしていた。父は、グーテローワン伯爵家の嫡男で外交官だったが、母との結婚を反対され、駆け落ち同然に家を出た。そして、母がローティシアを身ごもっていた頃、外国へ渡る船の事故で命を落としたらしい。そんな境遇にあっても、ローティシアの記憶にある母は、いつも笑顔だった。夫を亡くし、幼い子どもを抱えて生きるのは決して容易ではなかっただろうが、娘に向けるその笑みはいつも温かかった。その母も、ローティシアが8歳のとき、道に飛び出した子どもをかばって馬車に轢かれ、帰らぬ人となった。それからの数年間、ローティシアは教会の孤児院で暮らしてきた。幸い、牧師や一緒に暮らす女性たちは皆優しく、慎ましくも穏やかな日々を過ごしていた。そして、自分もいずれは修道女としてこの教会で生涯を終える――そんな未来を思い描いていた。けれど15歳のとき、教会の牧師が亡くなった。新たに赴任してきたのは若い牧師で、しかも妻帯者。彼の妻は、同じ建物内で身寄りのない女性たちと共に暮らすことを嫌い、教会から出ていくようにとローティシアたちに告げた。ローティシアは、帝都にある教会への紹介状を受け取り、馬車を乗り継いで都へやってきた。だが、たどり着いた先には、すでに教会は存在せず、全く別の建物が建っていたのだ。手元にあったお金は、移動と宿泊でほとんど尽きており、寝る場所すらない。あちこちをウロウロしてみたが、帝都での野宿はどう考えても危険すぎた。途方に暮れたローティシアは、父の実家であるグーテローワン家を思い出し、藁にもすがる思いでその門を叩いた。せめて、他の教会を紹介してもらえればとて。グーテローワン伯爵家は、この帝国でも有数の名家であり、代々中央で文官として仕える家系だ。父も外交官だったように、一族には外交に通じた者が多い。現当主で父の弟にあたるクロードも、外務事務官として中央に務めている。ローティシアが訪ねたその日、ちょうど伯爵家では大きな出来事があった。クロードの妻・アビゲイルが、双子を出産したのだ。出産は難産で、さらに双子という想定外の事態に、家中は対応に追われていた。そんな中、伯爵の兄の娘――ローティシアが現れたのである。クロードは、兄の面影を宿す少女の
최신 업데이트 : 2026-07-06 더 보기