『ノーマン! 来てたの! その連れはだれ……?』 『ああ、レイチェル。久しぶり! サオリは僕の大事なお客だよ』 レイチェルと呼ばれた若い女性は、沙織をじろじろと観察する。 『サオリ、紹介するよ。こっちはレイチェル。ブラック・ルールの監督の娘さんで、モデルの卵だ』 『よろしくお願いいたします、サオリ・アユカワです』 レイチェルには、奏多が見えていないようだった。 不審者を見る目に、沙織は冷や汗をかく。 このゴージャスな空間に不慣れなのは、自覚している。 普段からいいものに囲まれて、見栄えのする塔矢奏多とは違うのだ。『レイチェル、なんて顔をしてるんだい。サオリは”ゴールデンノーズ”で知られる雪中白梅の作者だ。今回、オレの依頼で日本から呼んだんだ』 『ふうん、そうなの。そういえばあなたの名前に似た映画があったわね。あれ見たわ』 『それは小百合ですね。日本のものをご存知とは、日本人として鼻が高いです。私はカナタ・トウヤといいます。沙織の上司です』 そつなく奏多が挨拶をし、レイチェルはようやく奏多の存在に気が付いたようだった。 これだけの長身をよく見落とすな、と思うがそれだけノーマンのことしか見えていないのかもしれない。 『ねえ、これからどうせ飲むんでしょ? 最近開拓した新しいバーにいかない?』 『サオリは――?』 奏多は、沙織の手に自然に自分の手を重ねた。 『今日はもう疲れているので、休ませてあげてください。ホテルを取っているので、そろそろ……』 『ホテル? オレの家のゲストルームをせっかく開けておいたのに』 『日本人なので、そういうおもてなしに慣れていないんです』 沙織は、高速で飛び交う英語を黙って聞いていた。 通訳がいるとはいえ、奏多に来てもらって助かった。 ノーマンがどうやら、沙織を家のゲ
Última actualización : 2026-09-16 Leer más