Lahat ng Kabanata ng 人間になりたい。たとえ王だとしても: Kabanata 11 - Kabanata 20

26 Kabanata

婚礼~内情4

 首相は1時間もしないうちに戻ってきた。「陛下、申し訳ありませんでした。引継ぎが不十分でした。」そう言って、尊人の前に座った。既に尊人は王の間におり、小机の前にある玉座に座っていた。「陛下が男性を好まれるのは想定内でした。お血筋ですので。」尊人は衝撃を受けた。何を言っている?「お妃は形だけで良いのです。好いておられなくて結構。そして、お好きな男性をお傍に置いて構わないのです。今もほら、陛下が選ばれたお2人をお傍に置いておいでですよね。もともと宮内庁の方ではそういうつもりだったようでございます。私が聞き及んでおりませんでした。」首相は、玉座の近くに立っている健斗と未来を見ながらそう言った。「何を言っているのです。この2人はそういうのではありません。」尊人はいつもよりも早口で言った。思いもよらぬ事を言われた。顔が熱い。「子孫を残していただかなくてはなりません。けれども人工授精で構わないのです。今までも、ずっと国王はそうして誕生して来られたのですから。」尊人は絶句した。今までの国王……血筋と言ったか?それでは自分も?人工授精で生まれたと?「お傍に置かれる男性は、お好きなように選んでいただいて構いません。後々若いのに取り換えていただいても結構。なので、お妃選びに女性の好みなどは無用。お血筋やお人柄、能力など、ビジネスパートナーとして選んでいただきたいのです。」完全に不意を突かれた。ノックアウトだ。何も考えられない。父と母は愛し合っていたわけではなかった?父は、叔父は、男色だったのか?そして、母や叔母は愛されぬまま、ただ子供を産んで、育てて、公務をこなして……。母が不憫に思えてきた。そして、国王というものがここまで人権を無視され、国に利用されていたのかと、更に憎悪が募った。「首相、とても今はそんな気にはなれません。一度持ち帰っていただきたい。」尊人は頭を抱えながらそう絞り出した。「しかし、早急に……。」首相が言いかけたが、健斗がずいと前に出て、尊人と首相の間に立ちはだかった。「首相、お引き取りを。陛下はお疲れです。」健斗は少し凄みを効かせてそう言った。首相は渋々立ち上がり、礼をして部屋を出て行った。「まぁた、格好つけちゃって。」未来が小さく毒づいた。いつも負ける。先を越される。 首相が言った事は、もちろん健斗と未来にとっても初耳だっ
last updateHuling Na-update : 2026-07-17
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婚礼~内情5

 麗良が父母と共に宮殿に呼ばれ、君子と尊人に対面することになった。もちろん、いつも尊人の傍についている、健斗と未来も同席した。 写真では麗良の事を見ていた面々だが、実際に会って、話すところを見て、皆驚いた。「君子様に、似ている……。」小声で、健斗がつぶやいた。「ああ。雰囲気がそっくりだ。」未来もこっそりと応じた。 顔ではなく、話し方、醸し出す雰囲気。未来は尊人の横顔を少し後ろから眺めた。尊人はじっと麗良を見ていた。尊人は、女性に興味がなくとも、母親である君子を愛している事は間違いない。君子に似ている女性を、邪険に扱ったりはしないだろう。これが、麗良がお妃に選ばれた最大の理由だろう、と未来は納得したのだった。 結納に相当する、納采の儀が行われ、華やかに報道された。そして、麗良が卒業した3月の下旬、早々に婚礼の儀が執り行われた。麗良は、朝比奈家の戸籍から抜かれ、戸籍のない、我が国の国民ではない存在になったのだった。 4月の吉日、ご成婚パレードが催され、国中がフィーバーした。尊人と麗良はオープンカーに乗って街頭を進んだ。そのオープンカーは未来が運転し、健斗が助手席に座っていた。街頭では、国民が大勢集まって旗を振った。主役の2人は、それぞれ精一杯国民の歓声に応え、笑顔で手を振った。振り続けた。 宮殿に帰ってきた2人は、やっと儀式から解放され、それぞれの部屋に入って衣装を脱いだ。夜にはやはり晩餐会が開かれるので、ほんの数時間の空き時間が出来たのだった。健斗と未来は尊人の身支度の世話もあって、尊人の部屋に一緒に入っていた。「ふぁー。いつになく疲れた。」尊人がそう言って、ベッドにぐったりと横たわった。「晩餐会のための着替えは5時半からしよう。それまでゆっくり休んでいていいぞ。」未来はそう言いながら、尊人の次の服を出してハンガーラックに掛けた。健斗はベッドサイドに腰かけ、尊人の頭を撫でた。尊人が目を閉じると、部屋のドアをノックする音がした。「あれ?誰だろう。」未来がドアを開けに行く。すると、ドアの外にはなんと麗良が立っていた。「麗良、さん?どうしてここに?」未来が驚いてそう言うと、尊人はパチっと目を開けて跳び起きた。「来ちゃった。うふ。」麗良は髪を下ろし、ゆったりとした部屋着を着て、そこに立っていた。「来ちゃった、って。」未来は困惑顔で尊
last updateHuling Na-update : 2026-07-17
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婚礼~内情6

 晩餐会が開かれた。前のテーブルに、尊人と麗良が並んで座る。ワインで乾杯し、フルコースの料理が出てくる。未来と健斗は国王夫妻のテーブルの後ろに左右に分かれて立っていた。2人が食事をするのは、晩餐会が終わってからである。「あの2人には、お食事はないの?」麗良がそれを気にして、尊人にこっそり尋ねた。「ああ、彼らは今仕事中だから、食事はこの会が終わってからだよ。可哀そうだけど。」尊人はそう言い、やはり麗良には優しい面もあるのだなと思ってにっこりした。そして、「俺はいつも2人に甘えてばかりだ。守ってもらって、当たり前だと思っている。」と、独り言のように言い、立っている2人を盗み見た。座る事も許されない2人。2人とも大学を卒業してそのままこの仕事に就いたのだ。自由意志とは言え、前からやりたかった事もあるかもしれない。それを、なし崩し的に近衛兵にさせてしまった。自分の為に。「尊人さんは、愛されているわね。あの2人に。」麗良が微笑しながらそう言った。「え?」尊人はちょっと赤面した。傍から見たら、仲睦まじい夫婦に見えただろう。そして、後ろから見ても。健斗と未来は、立っていることも、食事が与えられない事もなんとも思わないが、尊人と麗良がこそこそと談笑し、尊人が赤面している事には、耐えがたい思いを味わっていたのだった。「2人ともイケメンよね。尊人さんがうらやましい!」麗良がそう言ったので、尊人はナイフを落としそうになった。いや、ナイフが手から離れたので、落としたのだが、健斗が床に落ちる前にさっとそのナイフをキャッチしたので、周りには気づかれなかった。いつの間にすぐ近くに来ていたのか。尊人は内心焦った。「どうした?動揺してるのか?」健斗が耳元で言った。「いや、何でもない。ありがとう。」尊人はちらっと健斗の顔を見て、すぐに視線を外して言った。健斗が引っ込むと同時に未来が新しいナイフを持きて、そっとテーブルに置いた。「何話してるんだ?楽しい話か?」未来も尊人の耳元で囁く。「べつに、そんなんじゃないよ。」尊人は、今度は未来の事を振り返って言った。「取り乱すなよ、尊人。みんなが注目してるんだからな。」未来は優しくそう言って、さっと自分の持ち場に戻った。2人とも、ちゃんと尊人の事を見ているし、すぐに助けてくれる。麗良は、「素晴らしいわね。」心底感心
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嫉妬~トライアングル1

 結婚してからは、毎日のように夫婦そろって公務に出かけるようになった。そして、これも天性のものなのか、麗良はちゃんと、内と外とで親しくする相手を分けるようになっていた。つまり、公務中は尊人と仲睦まじい様子を演じ、傍に控えている健斗や未来には言葉をかけるどころか、見向きもしないが、宮殿に帰ってきてからは、尊人とは話もせず、健斗にばかり話しかけるようになっていた。 尊人は、食事などで麗良と席を共にしている時も、麗良が事あるごとに健斗に話かけて笑い合ったりしているので、どうしてもそちらを気にしてチラチラと見てしまう。それを、未来が気にしてチラチラと見ていた。未来からすれば、尊人が健斗のためにジェラシーを感じているのではないかと気にしてしまう。けれど、それを認めたくない自分がいる。この件に触れて、尊人がジェラシーを感じている事がはっきりしてしまったら、立ち直れない気がした。それに、健斗が麗良にかまわれている間は、自分が尊人を独占できるので、この状況を変えるように働きかけることは、自分の不利益になる。だからしばらくは傍観していた。 だが、傍観してもいられなくなった。部屋で尊人と未来が2人になっていた時に、尊人が未来に言ったのだ。「最近、麗良さんは健斗によく話しかけるよな。もしかして、麗良さんは健斗の事が好きなのだろうか?」「……」とうとう、この話題に触れなければならない時が来てしまったようだ。「そうだろうな、多分。尊人は、健斗を取られたくない?」未来が尊人に問うと、尊人はそう聞かれるとは思っていなかったのか、驚いて目を泳がせた。「いや、そういうわけで言ったんじゃ……。べつに、健斗は俺のものってわけじゃないんだし。もしあの2人が恋愛関係になったとしたら、どうなるのかなって。」「どうなるって?」「もう麗良さんは俺の奥さんって事になってるんだから、健斗と結婚は出来ないわけだろ。」「国王が好きな男を侍らせていいんだったら、王妃だっていいんじゃないか?」「ああ、そうか。」未来は、尊人が聞きたい事はもっと違う事だと分かっているのに、ついこんな風に冷たく言ってしまう。本当は、こう言って欲しいはずだ。健斗は麗良の事なんて好きじゃない、健斗が好きなのは尊人だけだよ、と。「健斗に聞いてみようか?麗良さんをどう思っているのかって。」未来が、それでも放っておけなくてそ
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嫉妬~トライアングル2

 翌日、変化が現れた。健斗は、麗良に話しかけられてもあまり受け答えせず、事あるごとに尊人の近くへ寄って、世話を焼くのだ。「尊人、大丈夫か?」「え?ああ、大丈夫だ。」尊人はきょとんとしていた。「尊人、これは俺が持っていくから。」「ああ、ありがとう。」流石に、尊人にも昨日との違いが分かってしまった。尊人は、未来にこっそりと言った。「未来、健斗に何か言ったのか?」「いや、まあ。麗良さんをどう思っているかを聞いたんだが。」未来は、この場で話す内容でもないので、それ以上は口をつぐんだ。「ああ、そうか。」尊人もそれ以上は聞かなかった。麗良の方は、急に健斗に避けられたものだから、当然不機嫌である。尊人は、それも気になった。「健斗、話がある。」尊人は公務中だが、尊人を呼び出した。「何だ?」「健斗、麗良さんの事だが、お前、急に彼女を避け始めたよな?」「それが何か?」健斗はちょっと怪訝そうな顔で尋ねた。「麗良さんは、形だけ俺と結婚して、ずっとここで暮らさなければならないんだ。楽しくなかったら気の毒だと思って。」尊人がそう言うと、健斗はみるみる顔色を変えた。そして、尊人の顔の横の壁にドンと手をついた。「尊人、それは、俺に麗良さんの相手をしろって事か?彼女の愛人になれと?」「そ、そういうわけじゃ。」尊人はびっくりして肩をすくめて、怯えているような格好になった。「俺はただ、麗良さんが楽しく過ごせるようにと思って。」尊人は泣きそうな顔をした。健斗は壁から手を離し、その手で尊人の頭を撫でた。そして、そっと尊人を抱きしめた。「ごめん。怒ってないよ。」健斗が優しくそう言うと、尊人は健斗の背中に手を回した。しばらく2人で抱き合って立っていると、未来が2人を探しに来た。2人で話しに行ったのは分かっていたが、遅いので心配になったのだった。そして、2人が抱き合っているのを見て、「お前らー!公務中に何やってるんだ!」と、怒鳴ったのだった。それで、2人は離れたが、どや顔すると思った健斗が、思いのほか辛そうな顔をしていたので、未来はおやと思った。尊人も、やはり浮かぬ顔をしていた。 「どうしたの?尊人さんから何か言われたの?」麗良は、健斗が今日初めて自分の近くに来て立ったので、声をかけた。どう見ても浮かぬ顔である。「いや、別に。」「尊人さん、私にも優
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誕生日~吐露1

 「陛下、お誕生日おめでとうございます。」「おめでとうございます。」誕生日の朝、尊人が起きて部屋から降りて行くと、職員が総出で出迎えてくれた。階段や廊下に皆が並び、声をそろえてお祝いの言葉を発し、頭を下げる。尊人は、さすがに面食らった。今まで、自分の家にはここまで職員はいなかったし、総出でお祝いなどはなかった。国王というのは、その他の王族とは違うのだな、と初めて知ったのだ。そして、こういう場合になんと言えばいいのやら、さっぱり分からなかった。こういう時には未来を探す。もちろん、いつだって尊人のすぐ近くにいるのだ。部屋から自分を連れ出して来たのは健斗と未来だ。未来は、小声で囁いた。「ありがとう、でいいんじゃないか?」尊人は、小さく頷いて、ひと呼吸し、「ありがとう。」と、職員に向かって言った。そして職員たちが立ち並ぶ中、食堂へ向かって歩いて行った。職員たちは、みなニコニコしていた。国王の人気は、尊人の意思に反して上々だった。 食事を済ませ、身支度を済ませると、宮殿のバルコニーへ出た。そこには、これまた想像以上の国民が集まっていた。窓を開けるとワーッという歓声が沸き起こり、小さい国旗が一斉に振られた。尊人と麗良、そして君子はバルコニーへ出て、国民に手を振った。歓声は続く。「陛下―!」「お誕生日おめでとうございまーす!」「尊人さまー!」「おめでとー!」「麗良さまー!」尊人は、「お言葉」を述べるため、歓声を押さえる仕草をした。すると、声はぴたりと止まる。「今日は、私の為に集まってくれて、ありがとう。皆に祝福されて、私は幸せです。」事前に打ち合わせてあった通りに、尊人はそう言葉を発した。本当は、もっと違う事を言いたいけれど、そういうわけにもいかない。もどかしい思いだった。言葉が終わると、また国民の歓声が響いた。 近衛兵たちは、国民を監視していた。今日は警察も警備している。健斗と未来はバルコニーの内側だが、尊人のすぐ後ろにいて、異変がないか常に気を配った。 それから、今度は新聞記者やテレビ局の報道記者などに対して、談話を発表する。王の間の玉座に座った尊人が、記者たちの前で話をする。この談話に関しても、事前に打ち合わせてあった。どこかに自分の本当の想いを挟み込めないかと、未来や麗良に相談しながら、夕べ尊人は懸命に考えておいたのだった。「国王陛下
last updateHuling Na-update : 2026-07-19
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誕生日~吐露2

 テレビでは、国王のお言葉に関するニュースがひっきりなしに流れた。その夜、尊人の部屋で、健斗、未来、麗良と4人で庶民的な誕生日パーティーを開いていた。「カンパーイ!」「おめでとう!」缶ビールをぶつけ合って乾杯した。「ああ、ここは自由ねえ。」麗良がもう酔ったのか、うっとりした様子で言った。「女性1人で、身の危険を感じないの?」未来が言うと、「夫と一緒だから、大丈夫。っていうのは建前よねえ。みんな、私になんて興味ないじゃないのー。あははは。」麗良は笑いながら、隣に座っている尊人に寄りかかった。尊人はそれを見てにこっと笑った。向かい側に座っている健斗と未来は、それを見て目を反らした。仲睦まじいカップルに見える。そして、麗良は君子に似ている。尊人は、男が好きなわけではないと言っていた。それらを悶々と考えてしまう2人。その2人を見て、麗良はにんまりした。「ほんとに面白いわねえ、あなたたち。」麗良がそう言うと、未来と健斗はちらっと麗良を見たが、何も言わなかった。麗良は、その話はそこまで、とばかりに話を替えた。「ね、今度は何を仕掛けるの?」すると、尊人は楽しそうに、「そうだなあ。もうすぐ中東へ公務で出かけるんだよね。そこで……。」と言って、言葉を切った。楽しそうに考えている。「バックレるか?」健斗がそう言って、缶ビールを差し出し、「イエーイ!」と声を揃えて4人は再び乾杯をした。それからしばらく、ワイワイと楽しく酒盛りした後、「それじゃあ、邪魔者の私は抜けるわね。」と言って、麗良が先に自分の部屋へ戻って行った。この家では、尊人が移動する時には必ず誰かが付いているのだが、麗良は自由に移動している。国王の血筋を持つものは完全に守られるが、王妃はいつでも取り換えることができるので、守られないのである。 麗良がいなくなって、尊人の隣が空いた。すかさず健斗がそこへ座る。「あ、お前。そういう時は早いよなあ。」未来がいつものように文句を言う。そして、健斗は早速、尊人の方へ腕を伸ばし、肩を抱いた。「前にいれば、顔が見えるもんね。」未来はそう言って、テーブルに肘をついた。3人の顔がすごく近くなった。そして、3人ともぷっと噴き出して、大笑いした。
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誘拐~宣言1

 国同士の親善で、国王夫妻が中東の国を歴訪する事になった。石油を有する国々が多く、大事な貿易相手国だ。また、ここら辺は王国が多く、各国の国王や皇太子がよく我が国へ来訪し、国王に謁見している。多少治安が悪い国があっても、素通りするわけには行かないという事情があった。 国王専用機に乗り込み、中東へ出発した。半日かかる。「しかし、世継ぎがいない状態で、よく国外へ尊人を出したよな。」機内の一室が、国王夫妻の部屋のようになっていて、健斗と未来も一緒にいた。この4人になれば、いつもの尊人の部屋と同じ状態である。酒は飲めないけれど、ある程度自由に飲食もできる。健斗はスパークリングウォーターをラッパ飲みしながらそう言った。「お前まさか、人工授精のための提供、したのか?」未来がはっとして尊人に尋ねる。「まさか、しないよ。」尊人は同じくスパークリングウォーターを、こちらはグラスに移して飲んでいた。「実際、せがまれたけどな。」と言って、麗良の方を見た。麗良はにこっとして肩をちょっとすくめた。麗良にも説得があったのだが、尊人の意向をくんで、拒否していた。「万が一の事があったら、尊人のクローンでも作ればいいとか思ってんじゃないのか?」健斗が言うと、「DNAなら宮殿にいくらでも残っているだろうしな。案外そのつもりかもしれないぜ。」未来もグラスを傾けながら、面白そうに言った。「そうか、その手があったか。やはりこのままバックレるというわけには行かないようだな。」尊人が真面目な顔で言った。「バックレる、なんて言葉、よく知っているわね。」麗良がくくっと笑った。「大学生は良く使う言葉だろ?」尊人が、これまた真面目に言った。「ちょっと待て。さすがにクローンはないだろう。」未来がさっきまでのふざけ顔とは打って変わって、驚き顔で言った。「いやいや、ありうるぞ。王家の血筋が途絶えるより、その方がいいっていう意見が多数を占める可能性は高いと思うぜ。」健斗は初めから真面目である。未来は顎に親指と人差し指を添えて、ちょっとうつむき加減になって考えている。それを見て、尊人も考え込んだ。「2人とも、何考えこんじゃってんのよ。私たちは無事に帰国するんだから、クローンはないわよ。とりあえずは。」麗良が言うと、「まあ、そうだな。」未来が顔を上げて言った。「だが、世継ぎを
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誘拐~宣言2

 尊人は、運転手と6人のスーツの男たちと一緒に、リムジンに乗っていた。そして、どこか廃屋のようなところに連れていかれた。尊人も一応武道のたしなみはあるが、さすがにこの男たちを相手に暴れる気はなかった。「さすがKing。落ち着いているな。」車の中で、1人の男が英語でそう言った。尊人は何も言わなかった。そして、これをチャンスと捉え、何とか我が国の国王制を無くす方へ持っていけないか、とそればかり考えていた。ただ自分が死んだのでは、機内で話していた通り、クローンを作られてしまうかもしれない。何か、良い方法は無いものか。 廃屋に着き、尊人は後ろ手に縛られた。もう外は真っ暗である。だいぶ気温も下がった。リムジンはどこかへ行った。運転手は雇われただけなのかもしれない。スーツの男たちは、順番にスーツから民族衣装に着替えた。ターバンを巻いて、猟銃を手に持っている。「私をどうする気だ。何が目的だ。」尊人は口を開いた。リーダーと思われる人物が分かったからだ。尊人は椅子に座らされ、足を椅子に縛り付けられた。手はやはり後ろ手に縛られている。「これから動画を配信する。お前の国に向けてメッセージを送るのだ。我々は身代金を要求するが、それだけではない。この国に拘束されている同志を解放してもらう。」リーダーは言った。「動画か……これは使えるかもしれない。」尊人はつぶやいた。彼らは撮影の準備を始めた。こんな廃屋でも、いろんな機材がそろっているのには感心する。「君たちが要求を述べた後に、私から母国語で説明しよう。我が国の国民は英語があまり得意ではない。国民に分かるように、私から話す。そして、君たちの要求が通るよう、説得しよう。」尊人がそう言うと、リーダーはじっと尊人の顔を見た。そして、「それはありがたい。そうしてもらおう。」と言った。 動画の撮影が始まった。LIVEだ。同時配信という事だ。まずはリーダーが、顔を隠して尊人の隣に立ち、彼らの要求を述べた。そして、尊人に話すよう促した。尊人は一通り通訳した後、いよいよ本題に入った。「我が国の皆さん、このような事態になって申し訳ない。この国の政府にも申し訳ない。だが……。」尊人は、ここで息を大きく吸った。「私を見捨てなさい。我が国は、これを機に国王制を廃止する。前にも述べたように、我が国に国王は必要ない。民主主義国家に、国王
last updateHuling Na-update : 2026-07-20
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誘拐~宣言3

 本国の政府と、現地警察と、現地の政府と、この3つは連携を取って動いていたが、健斗と未来は単独行動をしていた。2人は政府の指示を待つことなく、行動を開始した。「はい、はい、分かりました。」未来が電話を切った。「どうした?」健斗が聞く。「誘拐犯からの犯行声明があったようだ。ネット配信されたらしい。見てみよう。」そう言って、未来はスマートフォンで動画を探し、再生した。2人はその動画を見て、尊人の言葉を聞いて、顔を見合わせた。「あいつ、とうとうやったな。」健斗が言う。「流石だな。この状況をとっさに利用するなんて。」未来が感心したように言う。「尊人……。怖いだろうに。いや、怖いなんて思っていないのかもしれないな。命がけで国王をやっているんだよな、いつも。」「死ぬ気で国王を辞めるんだ。命を惜しいとは思っていないような気がする。健斗、絶対に助け出すぞ。」未来が言うと、健斗は力強く頷いた。 2人はバイクを借り、健斗が運転をし、未来が後ろに乗って町中を走り回った。通訳がいないので、何とか英語だけであちこち聞きまわる。「黒いリムジンを見かけませんでしたか?」「ああ、さっき見たよ。こんなところを大きな車が走ってたから、よく覚えているよ。」「どっちに走って行きましたか?」「あっちへ行ったよ。」「ありがとうございます。」未来が聞いて戻ってきて、またバイクの後ろに飛び乗る。「あっちだ!」未来が指さす方へ、健斗はバイクを走らせた。 尊人は、狭い部屋に入れられた。自分が括り付けられた椅子以外、何もない。灯りもなく、入って来たドアの小さい窓から、廊下の灯りが入ってくるのみだ。手かせを取ってもらえないのは、すぐに処遇が決まるからだろう。ここに長く逗留する事はなさそうだ。殺されるか、解き放たれるか。無事にここを出られる可能性は極めて低いと感じた。それでも、尊人は満足感を得ていた。やった、という達成感とも言えるだろうか。後悔はしていなかった。国王を辞める、それを今実行したのだ。 だが、このまま誰にも会わずに命を落とすのか、と考えた時には、流石に動揺した。心臓がズキンと痛んだ。真っ先に頭に浮かんだのは健斗と未来。そして、母君子。妻の麗良。姉たち。「みんな、ごめん。母上、ごめんなさい。」尊人はそう呟いた。
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