˳◌* 軽率に迷子になる刈谷。枯れ葉を踏みしめる足元がおぼつかない。 “フロント”と書かれた看板が指し示す方に来たはずなのに、チェックインをしたはずのコテージが見当たらない。ついでにさっきまであんなに周りにあったテントまで見えない。 あれ、違う星に転送された? 枯れ木と深緑の木が交互に並ぶ中、夕焼けになりそうな空を見上げる。 ベッドがくっついているのが“ちょっと嫌”って言ったこと、先輩に変に思われたかな……。罪悪感で、みぞおち辺りがちょっと痛い。 元々男の人が苦手な私が、初めて恋をしただけで十分なはずなのに。先輩の甘い言葉にふれる度、淡い恋よりも、もっとずっと先を求めそうになるんだ。 もっと深い恋を知るのも怖い。憂先輩に優しくされてるからって、うぬぼれて甘えそうになる自分も怖い。 全ての初めてが怖いことにかこつけて、本当は先輩に振られるリスクが一番怖いと思っている私。 これって、世間一般の人間と一緒の感覚だよね? いつも通り自分は宇宙人だからと、一般の人よりもハードルを下げて、小さな幸せに満足していればよかったのだ。 一つ一つ憂先輩に与えられるものが、どんどん色濃く刈谷の胸の中に色づいて、ビビッド色に弾けそうなくらいコントラストが強くなっていく。 怖いのにわくわくして、いつの間にか嬉しくなる。 横浜支部で初めて先輩を見た時のあの気持ち。憧れの人に出会えて、今だ!話しかけなきゃ!っていう出しゃばった勇気。 あの日の自分に感謝して、いっぱい関わってきてくれる憂先輩との今の関係を大事にしたい。 妹でも、宇宙人みたいな妹でもなんでもいいから。私は憂先輩とこれからも沢山関わっていきたい。 だから先輩に悟られないよう、こっそり気持ちを隠さないといけないんだ。握りしめて隠したら、握り潰しちゃうから。私の胸の中に、そっとね。 ゆっくり私の頬を伝う涙が秋風に触れて、背中の体温が冷えていくのを感じた。「あれ? あなたは、晴雲酒造にいた……、」 後ろで声がして、頬を袖で拭いながら後ろを振り返る。 そこには、晴雲酒造で声を掛けてくれたストリートスナッパーさんがいた。「あ! 『月間つくし』のお兄さん!」「はは、まさか同じホテルだなんて。奇遇ですね!」 赤いニット帽がよく似合うお兄さん。一眼レフを首から下げて、恐らく何かを撮っていた模
Last Updated : 2026-07-26 Read more