こっから先は初めてだから

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last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-04
Oleh:  由汰のらんTamat
Bahasa: Japanese
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小さな不思議ちゃんと、冷淡冷徹無表情の関西弁スパダリ先輩との日々。(情報量過多)

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Bab 1

1.ねえ先輩。爽ちゃん呼び、恥ずくないですか?

刈谷かりたにさあん! 来期の予算申請、お願いしてもいいかな?!」

「もちろん、いいですよ。」

「ありがとう〜! 助かる〜!」

 刈谷さん、横浜支部では数字の鬼って云われてたんだよね。

と、眉を下げて笑う白河しらかわさんは、私の2個上の先輩だ。

縮毛矯正で手に入れたというストレートヘアを揺らし、先輩が廊下の方へと小走りで向かう。

『西のすぐるがお目見えなすった!』  

 白河先輩が、その人物を一目見ようと、他の女性社員の背中で爪先立った。

総務部課長代理、すぐる李月りつき30歳がこの経理部のある5階のフロアにやって来たのだ。

 冷淡冷徹、無表情。

自分の仕事は自分の仕事、他人の仕事は他人の仕事。終わらないあなたの仕事を自分に頼まれても、それはどう足掻いてもあなたの仕事。

終われるように予定を組まなかったあなたが悪いのだと、昔先輩に楯突いたことがあるのだそう。

 感情をあらわにすることなく一掃する冷めたグレーの瞳。色素の薄い髪からは、ほろほろと雪の結晶が落ちてきそう。

今憂先輩は、防災設備の点検で、フロアごとに消防署職員との検査に立ち会っているらしい。

「総務の懇親会も送別会も歓迎会も来なかったんでしょ?」

「絶対無理だって! 合同歓迎会じゃ来ないでしょ!」

 秋晴れもいい後期の人事異動。私、刈谷かりたにそう27歳は、この度、央海倉庫おうみそうこ横浜支部から東京本部の経理部に異動となった。

今日は、総務、人事、経理部合同での歓迎会があるのだ。

大勢人が集まる場所はとっても苦手だけれど、主役の立場なので出席しなければならない。

同期だけなら気兼ねなく楽しめるのに、ビジネスオンリーの飲み会は信じられないほど億劫。

私の心の壁は、なかなか他人には剥がせない。

 廊下から聞こえてくるのは、憂先輩と女性社員たちの声。

恐らく今日の歓迎会のお誘いなのだろう。冷淡冷徹な憂先輩は、社交の場であっても出ないものは出ない。徹底している。

「あ、あの憂さん! 今日の合同歓迎会って、いらっしゃいます? 私達、歓迎会の幹事でして! 一応確認をとっているんです!」

「い、一応ね!」

 少しの間があって。場が凍りついたように静まるのを感じた。

 そして事務的に返す、先輩の冷たい声。 

「ちょっと、待って。確認します。」

 女性社員の間に広がる、小さなざわめき。

「え、憂さんが? いつも歓迎会すらも断るあの憂さんが??」

私も、憂先輩は一刀両断して拒否するものだと思っていたから、少し驚いた。

 私は聞こえていないふりをし、社内システムの経理部共用フォルダから、今期年間スケジュール表と予算案、予算表のデータを引っ張り出してくる。

画面上で3つ窓を並べて見比べて。計算器を取ろうとすれば、そこには私を覆う影があった。

「っ……び、びっくりしたー」

「……」 

 私の真後ろに立ち、冷えた瞳で見下ろすのは、憂先輩。

スタイルのいい長身は、普段から体型管理を怠らない証拠なのだろうか。油物は食べないと噂で聞いたことがある。

 ネイビーのスーツに縞々のネクタイは、平穏無事なオーソドックスを極めている。

無表情で、奥二重に長い睫毛から覗くグレーの瞳。憂いを帯びる、美しくも儚い顔立ち。

眼科で眼球ごと見られているかのように、私をまるごと見下す憂先輩。全身にひやりとしたものを感じ取る。 

 今まで離れた支部だったため、今度からきっとほぼ毎日のようにこの美麗を眺めることとなる。

 小さな震えを隠しながら、なにかしら?と見つめ返してみる。

 すると先輩の長い指が、私の前にゆったりと向かってきた。

「爽ちゃん。久しぶり。」

「お、お久しブリデス。」

 両手を前に出し、私に低層のハイタッチを求める憂先輩。

 ねえ、手を合わせてくれないの?と、目を細め首を傾ける姿がちょっと愛おしい。

 私が両手を、そっと先輩の手の平に合わせる。

 すると、にぎにぎと、私の指に指を絡めて憂李月なりのスキンシップを図られる。経理部の地味な暗さが、ふわりと緩和される。

「今日の歓迎会、来る? 爽ちゃん来んなら俺も行かんし。来るなら、俺も行く。」

「あ、はい。わたし、一応歓迎者なので。行きますよ?」

「そっか。えらいな。歓迎会も仕事の一貫として認識してんやな。」

 そう言って、私の頭をそっと触れるように撫でる先輩。

 いやいや、歓迎会行くの、当たり前やんなあ。

 先輩が私へのスキンシップが激しいことは前々から知っている。でもまさか、社内でもこれだとは思わず。

かといって手を払えない私は、周りの視線に居心地の悪さを感じるばかりだ。

「初めての場所やし。緊張しよる?」

「す、少しだけ、」

「何かあったら、すぐ俺に頼ればええから。」

「は、はい。ありがとう、ございます……。」

「ん。じゃあまた夜。楽しみにしとる。」

 はい。私も先輩のお陰で楽しめるようにしておきますよ。  

 まぶたを半分下ろす、先輩の甘い笑顔。冷淡冷徹無表情、いずこに?

 刈谷爽の男事情は、おそらく唯一むに。

 中学1年生の時、数学検定に臨んでみた。

 羅列する数字はモノをいう。1は2より小さい。3は2より大きい。1+1=2でしかない。

 正誤のゆらぎは一切許しませんよ、という冷淡無慈悲なアイツ。それが数学。

 数学だって文章問題は国語力が試される。しかしながら過去問をみればパターンが分かるから、私は難なく数検一級に合格した。 

 でも崇められるなんてのは神様と推しだけらしい。周りにはもの珍しくも、奇怪な目を向けられていた。それが刈谷爽という人物。

ほら私、不思議ちゃんだから。

 昔から可愛いものよりも、海外のホラーゲームに出てくるようなサイコ系キャラクターやブラックジョークに富んだ物語が好き。

 そんな不思議ちゃんは、数学だけ飛び抜けた才能を発揮した。

 だから、人からは綺麗に一線を引かれる。連絡先を知る友達は極少数。

 でも一人だけ、私のミステリアスゾーンにグイグイっと割り込んで、過剰なスキンシップを求める人物がいたのだ。

 それがすぐる李月りつきという、関西弁、もとい神戸出身の彼だった。

「憂さあん! 飲み会参加してるの珍しいですね?! ぜひビール注がせて下さい!」

「いや、俺はいいです。」

「えー、じゃあ他のお酒頼みますぅ?」

「いや、いいです。」

 憂先輩の珍しい参加とあってか、周りが必死に声をかけに行っている。憂李月と距離感バグれるまたとないチャンス。

 それなのに先輩は、来る者拒みすぎ。すぱんすぱんと周りをカマイタチで切っている。

 そして正座も崩さず、何事もなかったかのようにお通しの鯨ベーコンとカイワレの和え物を食べているのだ。

 周り、甚大な被害が出てますよ?

 それにしても先輩、綺麗な食べ方してるなあ。

 周りに私との親密さを伺わせてもいけないと、ずっと見ないようにしていたのに。つい見ちゃった刈谷スコープ。

 憂先輩とは、予想通り目が合って。先輩は眉を下げてふわりと宴会間初の笑顔を見せた。

慌てて日本酒のおちょこを両手で持ち上げて、憂李月の酔いを覚ます。

 その視線と視線に割り込んできた、6割強ハゲのおじさん。

どこかに移動したお隣さんの座布団を陣取る。

「刈谷ちゃん、日本酒いける口なの? 若いのになかなかやるね~。」

「私、日本酒大好きなんですよぉ。」

「けっこう“のん兵衛”なんだね。」

「はい。あんま酔わないんで、度数高いの好きなんです。」

 確か人事部の⋯⋯誰だったかな。50代くらい?お偉いさんかな。おじさんのプラカード下さい。

「刈谷ちゃん身長低いね。150㎝ある?」

「こう見えて、147㎝なんです。」 

「なんか小学生が飲んでるみたいで、違和感ありまくりだわ~。」

「ふふ。」

 小学生かあ。社会人になっても中学生って言われることはあるけれど、降格しちゃったかあ。

 うちのオフィスレディは皆綺麗だし、女性の魅力が反射して輝いてるもんね。

 私なんて今日お座敷だって知らなかったから、チャッキーの靴下履いてきちゃったんだよ。ド派手な蛍光色のやつ。

「小学生を酔わせちゃあいかんねえ。じゃあおじさんにお酌してもらおうかな」

「あ、はい。いいですよ。」

「総務の古馬都こばとさんなんかは、いい女の雰囲気出てるよねえ。」

「え?」

「真っ先にお酌しに来てくれてさあ。気遣いができる女はモテるだろうね」

「………」

 あ、これって遠回しに、ちゃんとお酌をしに行けって言われてるのかなあ。

 総務の古馬都さんがどの方かは存じないけれど、ビール瓶を持ってずっとお酌しに回っている綺麗な女の人はいる。

 私ってば、気が利かない子。

 ちょっとズキンときちゃって。ビール瓶を取る手が震えてしまう。

牧多まきたさん、お酌なら俺が。」 

 私がビール瓶を手にした時、刈谷とおじさんの合間からふいっと憂先輩が割り込んだ。

「あ、ああ憂くん! 珍しいね君ぃ!」

「ええ、今日は可愛い後輩が主役ですから、俺も参加させていただきました。」

「そうかあ。確かにちっこくて可愛い後輩だもんなあ」

 憂先輩が、さりげなく私を主役だと伝えてくれて。きっとおじさんに、刈谷は主役だからお酌の必要はないんですよって教えてくれたんだ。

 ちょうどコップ一杯分のビールが瓶には残っていて、それを憂先輩がおじさんの持つコップに注ぎ入れる。

 全然泡が立たない最後のビール。空になったビール瓶をおじさんに見せて、憂先輩が言った。

「きっと古馬都さんがビール持ってると思います。」

「じゃあ古馬都ちゃんの2杯目をおかわりしに行こうかな。」

 おじさんが憂先輩のビールを飲み干すと、本当に古馬都さんという女性のところに行ってしまった。

 ねえ先輩。予測計算したの?

刈谷も計算好きだから、先輩の方程式が見えちゃったりするんだよ。

 私、ぜんぜん可愛くない後輩だよ。憂先輩。

「爽ちゃん、それって日本酒?」

 私の前にある、とっくりとおちょこを見て、先輩が聞いてきた。 

「はい、そうなんです。まだビールじゃなきゃ、まずかったですかね。」 

「なんで?」

「皆まだビール飲んでるのに、私ってば勝手に日本酒頼んじゃって。全然空気読めなくて……。」

 計算はできるのにねえ。皆に合わせたお酒を飲まないなんて、やっぱり変、ですよね。

 とりあえず自分でつっこんで、罪悪感を取り除いておいた。

 憂先輩がふわりと笑って、私のおちょこを手に取る。

そしてそれを一気に飲んだ。

「あー、これって。而今じこん?」

「あ、そうです! わかるんですか?」

「フルーティーな感じで飲みやすいやんな。俺も日本酒、けっこう飲むんよ。」

「憂先輩、日本酒似合いますもんねえ。」

 憂先輩が今度は私におちょこを持たせて、とっくりを手にして注いでくれる。

「今度、巡ってみる?」

「え?」

「酒蔵巡り。」 

「ああ、いいですねえ!楽しそう!」

「爽ちゃんとの酒蔵デート、なんかええね。」 

「で、でえと、ですか。」

「え? 嫌なん?」

 とっくりを、ゆっくりと机に置いた先輩。

 お隣同士で触れる腕と腕の温度。

 首を傾げ、私の顔を下から覗いてくる。

 長いまつ毛が綺麗に瞬いて、私も同じように瞬き返した。

 先輩、ちょっと酔ってるん?

 頬が少し染まっていて、悲しそうに眉を下げ、憂いの瞳で私に聞いてくる。

 私はたじたじで、ちょっと予測不能関数だなあ。

 すっと息を吸って、言葉よりも先に首をふるふると横に振る。嫌なわけないよって。

「爽ちゃんて、顔ちっちゃいなあ。」 

「ふぇっ、」

 私の頬に、人差し指を当てる先輩。

 憂先輩の指の威力は神様並。親指と一緒に頬をつままれて、刈谷の脳がゆっくり溶かされ初める。

「キスする時、きっと大変やろなあ。」 

「へっ、」

「あかん。今の俺の発言、有罪もん。」

「い、いえ。先輩なら、無罪放免です!」

「ほんま?でも爽ちゃんになら有罪で捕まるのも悪ない。」

  

「せんぱい、酔ってます?」

「可愛い後輩に酔うてます。」

 う〜ん参ったなあ〜。

 ほら、甚大な被害者たちが、そわそわとこちらを見てますよ、先輩。

 私の頬から指を離し、その綺麗な指で、私の外ハネセミロングの髪をこっそり撫でてくる。

 なんでそんなに愛おしいものを愛でるような目で見てくるの? 男の人に見られ慣れていない私は、どこに視線を置いていいやら、キョロキョロと黒目が動いてしまう。

 机に肘をついて、その手の甲に顎を乗せて。こてん、と首を傾げる先輩。それだけで有名絵画を越えてくる。

 お酒の力で潤いと艶をアップデートした先輩は、私からなかなか目を離してくれない。

 無恥なにらめっこに困って、私が根負けして俯いてしまえば。

先輩は「無垢やなあ。」と今日一番の甘い笑顔を見せてくるから、私も「無垢やあらへんです。」と日本酒のせいにして笑い返した。

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last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-14
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2.ねえ先輩。冷淡冷徹無表情の発信源ってどこですか?
「憂さん、さすがに飲んでないだけあって全然酔ってないなあ。」「水樹さん、お持ち帰り狙ってました?」 「皆狙ってるって!」「朋政派の水樹さん、いずこへ?」 飲み会が終わって外に出れば、前を歩く憂先輩の背中を見て、水樹さんと白河さんがそんなことを言った。 先輩は私の以外、お酒は飲んでいなかったようで、確かに体幹がしっかりしている。  あれ? 先輩、私の前でふにゃってたアレ。なんだったんです?  そんな憂先輩のスマートな背中。たぶん、目視のメジャーでは刈谷1.25分くらいの背丈?183か4あたりかなあ。 モデル体型の憂先輩に率先して並びに行く一人の影。  バレッタで髪をハーフアップに留めた古馬都さんが、憂先輩のお隣をキープする。 後ろから見る二人はお似合いで、水樹さんが課長代理らしからぬ舌打ちをした。 「古馬都相手じゃ勝ち目ねえな。」「水樹さん、舌打ちが夜のネオンに響いてます。」 憂先輩との出会いは、央海倉庫横浜支部に私が在籍していた時、先輩が出張で横浜支部にやってきたのがきっかけだった。 その頃先輩は神戸支部の経理部所属で、新システム移行に伴う合同研修が横浜支部であったのだ。 研修室で経理部参加者リストが資料と共に配られて、“憂李月”の名前を見た瞬間、すぐに思い出した。 日本数学オリンピックで5年連続銅賞の憂李月。 なんだか可愛い名前だし、サイトのインタビュー記事にも顔写真が載っていたからよく覚えていたのだ。 コミュ力に欠ける私は、その時だけコミュ力の神様が下りてきた。 彼の名前が載る座席のところに行って、無我夢中で話しかけた。「あの! 日本数学オリンピックで5年連続銅賞の、憂さんですよね?!」  5年連続で名前が載るなんて本当に尊いことだから。 あこがれの存在だったし、ただ必死に話しかけたんだ。 でも彼の性格なんて全く知らなかった私は、一瞬にして凍り付いた。 「ここは職場で研修中なので。プライベートで話しかけるのはやめてください。」  そう言って、冷たい温度と態度で突き放されて。 打たれ弱い私は、しゅんと気持ちが沈んでしまった。    なんで今日に限ってコミュ力の神が下りてきちゃったの?コミュ力の神を呪いかけましたよ。 研修の席に戻れば、システム管理部で同期の
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3.ねえ先輩。先輩の機嫌をとるにはどうしたらいいですか?
 久々の飲み会でお酒よりも人に酔ってしまったのかフラフラする。こんなに大人数の中で気を遣って遣われて、たった数時間のことでも気苦労が絶えなかった。 「刈谷さん!二次会行く?」    嬉々として水樹さんに言われるも、心労がそのまま顔に出ちゃっていたのか。 「刈谷さん、大丈夫?顔色悪いかも。」「ええと。ちょっとだけ、疲れちゃいました。」  コンビニ前の明かりだけで、顔色を読み取ってくれた水樹さんに感謝すべき?  でも今日はちょっとだけ二次会という未開の地が気になるのも事実でして。  なんせ憂先輩が古馬都さんとだいぶ前の方を歩いていて。「憂も二次会に付き合わせて部長の相手させてやろう。」という誰かの声が聞こえてくる。  今日は人数多いし、憂先輩も連行されちゃうかもしれない。 「あんま無理しない方がいいよ?別に今の世の中飲み会なんて強制じゃないんだから。」 「あ、ありがとうございます。」  水樹さんの厚意に反して、「行きたいです!」とも言えず、そのまま「お言葉に甘えて帰ります。」と伝えてしまった私。  その頃にはもう先輩の姿は見えず。私は水樹さんたちの前でお辞儀をして。そのまま角を曲がって駅の方へと向かった。 もっと自分のはっきりとした意思を頭の中で即座に固めたいし、その固めた丸いやつをポーンて相手とキャッチボールできる勢いで投げたいのに。 刈谷が固めた丸いやつはドロ団子だから、すぐに壊れちゃうんだよね。 飲み屋が続く道を歩いて行けば、犬は棒に当たるし、刈谷はどこかで見たことのある背中に差し当たった。 憂先輩に近いほどの背丈、広い背中に黒い髪。 接待だったのか、向こうの方にいるビジネスマンに頭を下げている。「むがみん?」「……は、刈谷?」「なになに、孤高の接待?」「ソロの芋づる式接待。」 今の今まで醸し出していたデキるビジネスマンの風貌はどちらへ?私を見た瞬間、急に気怠げに肩を落とすんだから。 横浜支部の同期である彼は六神君。通称むがみん。 最近同じ同期である実来春風ちゃん(通称ぱるるん)という女の子と、付き合って別れて、そしてまた付き合い始めたのだ。 今どきの彼氏彼女はリユース方式なの? 「え、刈谷は?もしかして歓迎されてない歓迎会とか?」 「うるさいなー。宇宙人は好かれもしな
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-18
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4.ねえ先輩。ギャップ慣れするにはどうしたらいいですか?
「爽ちゃん!」「わっ!」  腕をがっしり痛いくらいにつかまれて。刈谷は間一髪も二髪もまぬがれたのだ。あわて果てた憂先輩によって。「大丈夫?!」「っ、せ、んぱい……」  またブワッと涙が溢れかけるも、憂先輩はなんでか、つかんでいた腕を持ち上げたまま反対の腕で私の身体をがっちり抱きとめている。 あっれーー……? 恥ずかしすぎて、涙、どっかいった。 憂先輩は軽々と私を持ち上げるように、階段の上へと引き戻す。 どうしたことか、それからそのまま先輩ったら、私を後ろから抱きしめてきたからもう大パニック。「爽ちゃん、俺最低や。」「へ?」「勝手に爽ちゃんのこと、知らん女の子に見てしもた。」 「……え?」「六神君と関係を持っとる女の子なんやって。勝手に決めつけて、ごめんなあ。」「ええっ?! べ、べつにそんなことで謝らなくたって!」「あかん……。爽ちゃんが違う女の子に見えてしもうたら、俺、なんかこう」   「こう?」 憂先輩が、後ろから私の顔先で、「なんかこう」の形を手で作ろうとする。でもその手はWhy?の形に変化した。「続きの言葉が上手く出てこん。」 なんですかそれ。「でもな?六神君と爽ちゃんが付きおうとる思うたら、色んな感情がうずまいてん」 「い、色んな感情?」 「ぐるぐるした、ぐわんぐわんしたやつ。」「なんだか、ひ、ひどく抽象的ですね。。」「あ、俺を馬鹿にしとる。」「し、してません!」 それより恥ずかしい! 階段下りゆく人々がさめざめと見ています! いたたまれない視線なのに、憂先輩の声が耳元で響くから、私の心臓は温まってしまう。   小さい身体がすっぽり、先輩の大きな手のひらに収まっている感覚。これが俗にいう『親指姫』の気持ちかもしれない。 親指に姫をつけるだけで愛おしくなる。昔の人のタイトルセンスを尊敬するな。 肩に乗っていた先輩の頭がふわりと浮いて、先輩の髪の毛がさらりと私の頬を撫でる。  やっと解放してくれた先輩。心が安心とちょっぴりの心残りを感じているから憂李月の温度が憎い。「六神君には、れっきとした彼女がいてですね。超有名なストーリーなんですよ?」 「さっき六神君から事情聞いた。でもそのストーリー、ほんまに有名?俺、知らんかってん。」  そりゃあ先輩、他人に興味ないだろうし。  私がそのまま
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-19
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5.ねえ先輩。この距離感に騙されちゃってもいいですか?
 コンビニから刈谷の足で約7分、6棟横一列に並ぶメゾネットタイプのアパートに到着した。 先輩のおうちは向かって一番左端。「みて、この長方形だけで作られた連なるメゾネット。たまらんよなあ。」   「玄関のドアも窓も、綺麗に6棟とも同じ面積の長方形ですね!」「さすが数学ヲタク同士。話が分かって助かります。」「ふふ。」 もしかして先輩、長方形という図形だけでここに住むことを選んだ?かくいう私も今住んでいるアパートを選んだの、円形の窓に釣られてですね? その割りに円周率はそこまで言えなかったりする。   先輩と1階のリビングでソファに座り、アイスを半分こする。 マーブル模様にするには半分ずつ、それぞれのカップに入れないといけないのにね。先輩はなぜだか私に食べさせてくるのだ。 しょうがないなあ。餌付け体験させてあげますよ。 「ほい、どうぞ。」「ほ、ほい、ありがとうございます!」   ほいほい憂先輩のバニラアイスに釣られて自分の口が自然と開いてしまう。充電式センサーが反応して、口があーんって。ぱくりって。 今さら関節キスにドギマギする余裕もなく、憂先輩のバカで可愛いロボットになれそう。  私が無感情でバニラとチョコのセッションを堪能していれば、憂先輩がじっと私を見てくる。「なあ、俺にはやってくれへんの?」「え?」「チョコ、あーんしてくれへんの?」     「あ、ああっ忘れてました!!」 食い意地が張っているのよ私。って理屈で表面上を繕って、ずっと先輩にあーん。が出来ずにいたんです。頭の中では白状しました。 「は、はい、せんぱい。」 きゅっと心臓を固めて木の木目が可愛いスプーンで、先輩にあーんをする指が揺れるから、動揺は繕えそうにない。 「待って、爽ちゃん、指ついとる。」  「へッ、」 先輩が、私が差し出したスプーンからチョコを食べて。それからスプーンを持つ手首をつかまれる。「ここ、垂れそう」 私の指から垂れそうなチョコに反し、ゆっくりとした動きの憂先輩。まつ毛が長いし、前髪が夜でもさらさらしているのが狡い。 私の人差し指につくチョコを、舌先で舐めてから、じゅっと吸われて。ドクターフィッシュより遥かにえげつない。  思わず肩がびくっと上がって。先輩がゆっくりと上目遣いで私をしっぽりと見るのだ。 そんな狂おしく
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-20
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6.ねえ先輩。刈谷は憂先輩専用の抱き枕になれますか?
 白黒はっきりしない、男女のグレーな関係が割りと好き。 そんな風に言える大人って、人生に余裕も猶予もあるのかな? 朝起きたらね、憂先輩に後ろから抱きつかれて寝ていて、もう刈谷丸ごとどうにかなりそうだったよ? 憂先輩がね、刈谷の上半身を抱きかかえて、耳元で寝息を立てているの。 それがあまりに下心がみえない無防備な寝顔だったから、どきどきクラクラが、じわじわジンジンって。心臓が6センチ上ずって収縮しちゃった。 割り切れない割り算には余りが出るのに、割り切れない私と憂先輩の仲には何かが不足していて。もどかしさばかりが不足部分を補っている。  とりあえずもどかしい気持ちは予算申請書類と一緒に提出して、海外クライアントからの入金処理を行っていく。 本日のレートにて為替換算されていく画面。 パソコン画面には反射した自分の姿も映らないのに、なんでこの人の気配は察知できてしまうのだろう。「刈谷さん!事件!事件だよ!」 地味な経理部のフロア内に、一気に陽気なたんぽぽを咲かせる西洋風のスパダリ。 きっとこの人がエレベーターを降りた瞬間から場の空気が変わるのだ。 今男性社員に注意をしていた水樹さんも、肩を回していた白河さんも動きが止まっている。「お、おはようございます。朋政課長。」「おはよう刈谷さん!聞いてよ!昨日春風がね、電話で僕のこと間違えて“朋くん”って言ったんだよ?!」「は、はあ」「かわいくない?朋政先輩っていうところをさ、朋くん♡って!」 なんでこの人いつもこんなに陽気なの? 光合成の燃費が良すぎるの?? 周りの女性陣の目は、2個1で朋政課長に釘付け。 それもそのはず。彼こそが東のスパダリといわれている東京本部国際営業部課長の朋政青司課長なのだ。 ドライな憂先輩とは対照的。直属の部下たちからは鬼課長とも呼ばれている一方で、無関係の部署の人間にはこのように晴れやかな笑顔を振りまいているのだ。 そして私の前では喜怒哀楽激しい。私の中ではゆるキャラ認定されつつある。         「ねえ今日って春風と福間と女子会するの?」「なんで知ってるんですか……」「春風が久々に刈谷に会えるって喜んでたから!」「はい、私もぱるるんとまゆゆと久々
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7.ねえ先輩。赤ちゃん脳の刈谷でも成長できますか?
「カンペイ!」「刈谷の瞳に、カンペイ!」 チャイニーズダイニングにて。横浜支部同期3人での女子会。 今しがた中国語で乾杯がなされたところ。青と紫と朱とピンクのネオン色に包まれた空間。 10段もない階段を上がった先にある半ロフトのような個室で、先発、『桂花陳酒《けいかちんしゅ》 金木犀《きんもくせい》』をたしなむ。 楊貴妃が愛したといわれる、白ワインにキンモクセイの花を3年漬けてできた混合酒。ずっと飲んでみたかったの。「金木犀の花言葉は陶酔!まさに私たち今、男に陶酔してるよね!」 太くて短いグラスを手に、まゆゆが疲れた瞳をぎゅっとつむりながらア"ーーーとオヤジ臭さを口から出した。「え? 刈谷、恋してるの? まさか大輪田くん?!」 毛先を内巻きに、珍しくおしゃれをしてきた春風ちゃんこと、ぱるるんが私を見る。麻練ピーナッツをつまみ、ちょっと辛かったのか、桂花陳酒をすぐに飲んだ。「えっとぉ。大輪田くんは、実はね。異動前に告られて断っちゃって。」「はあ?!」   「そうだったの?!」 横浜支部システム管理部の大輪田君。異動直前、研修当初から私を好きだったと告白してくれたんだけど、ごめんなさいしちゃったんだよね……。「実は最近大輪田くん、イメチェンしたんだよ?」「そうなの?」「うん。黒縁眼鏡をオシャレ眼鏡に変えちゃって、髪型もイケメン風にしてね?」「そうそう、けっこう噂になってるよ。うちの後輩も、わざとパソコン壊れたふりして大輪田君呼んでたし。」「そうなんだぁ。」 そっかぁ。大輪田君が元気そうで安心したよ。         今来たばかりの水餃子を、醤油酢につけて一口で頬張る。皮がもちもちで、肉汁がほどよく口の中に広がる。 唇がテカテカになってそうだから、おしぼりで唇を拭いた。ふと今日のトップニュースを思い出す。「……あのさあ。付き合ってない男の人が女性にキスするのって、どういう時なの?」 私が何気なく聞けば、まゆゆとぱるるんが二人して顔を見合わせる。「刈谷から恋バナって珍しくない?」「あれでしょ。酔ってるかヤりたいと思った時じゃない?」「ひどい二択で言葉もないよ、まゆゆ。」 あっはっはと大口を開けて笑うまゆゆ。 まゆゆは酔った勢いで同期の池駒君とやっちゃったらしく、そのまま付き合
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8.ねえ先輩。先輩との一瞬が、一瞬で「人生最高」に更新されちゃうんですけど。
 天井の蓋が、カポッと開いたような秋空。直近すぎる昨日の今日。 目的地は都内から約1時間半の酒蔵。東京から電車で、私たちは今、埼玉県へと向かっている。 埼玉は酒蔵の宝庫なんだよ。近所の酒屋しか行ったことないから、酒蔵は刈谷初体験。「本当はな、1週間以上前から予約せなあかん酒蔵もあってん。でも昨日の夜電話したら、空きがあるから見学できますよって言ってくれてな、」「色々手間取らせてしまってすみません!」「俺が誘ったんやし。これぐらいのお詫びはさせてもらわんと」 “お詫び”の言葉で、なんのお詫びだったのかが思い出される。 先輩が私の初キスを奪ったお詫び……。 それは、帳消しにしてくださいねっていうお詫びってことですよね? 忘れてって言ってましたもんね?  お詫びの真意をいちいち深読みしちゃう女って。めんどくさいよなあ。 27歳の初キスをさらりと流したい。そういう女になれたら、きっともっと人生楽しく生きられるんだろうなあ。 窓際に座る私が、窓の外に見える川を見つめる。 太陽の光に反射する水面上が、キラキラと光って見えるから何気なく「神秘」とつぶやいてしまう。「え?なに?」 憂先輩が、横から「ん?」と私を覗き込んできた。 耳に先輩の唇が触れそうな距離に気付いて、振り向けない。私ってばキスを意識しすぎなんだよぉ。 だから横目だけで先輩に笑いかけて、またすぐ窓の外に視線を移した。「あの辺り、水面上にキラキラがあって神秘的だなあって。」「どれどれ?」 頬と頬が擦れ合う数ミリの距離感。 憂先輩の優しい温度が伝導寸前。刈谷の心音の音頭もテクノのリズムで踊り狂う。 先輩は私にキスしたって意識はもうないのかな。やっぱり私はペットで、地面に四つ足をついた私と、二本足の先輩を見上げるこの距離は遠いですか? 膝丈のスカートを履いてきたせいか、ブーツとの間に覗く膝あたりがちょっと寒い。頭上の空調は刈谷の方を向いているけれど、足元からの空調はないらしい。「爽ちゃん、寒い?」 小さな身震いをしてしまったペットに、先輩が首を傾げて聞いてくる。「スカートなんて履いてきちゃって、私、馬鹿ですよね。」 あはは、と小さく笑ってみせれば、先輩も釣られるようにしてふわりと口元を緩ませた。「ブランケット、持ってくればよかったな。」 そう言って、いつも距離感が
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-23
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9.ねえ先輩。あっという間に振られても、この旅は続けるべきですか?
 なるべく夜のことは考えないようにしていた私だけど、先輩が煽るせいでどうしても昨日のキスシーンが頭の中にチラついてしまう。      今から緊張しないようにと、話題を一旦変えてみよう。 「憂先輩は? グランピングってしたことあるんですか?」 「ああ、うん。1度きり、やけど。」         細い道路でもスピードを出して走っていく車が多い。 前を歩く先輩が、何度も私の身体を腕で守ってくれる。大きな手で守られる小さな刈谷。 大丈夫ですよ? ちゃんと先輩の後をついていってます。             お次は『晴雲酒造《せいうんしゅぞう》』という、原料であるお米から精米しているというこだわりをみせる酒蔵。ナデシコの花から発見された「花酵母」を使用した華やかな香りを出すお酒や、無農薬米で醸造したお酒もあるんだって。「ここは隣で食事処もやっててな。爽ちゃん、そろそろお腹空いた?」「憂先輩は?」「あ、待って爽ちゃん。頭になんかついとる」     広い駐車場に入ったところで、先輩が私の頭に乗った“なんか”を取ってくれた。「赤ちゃんの手や。」 そんなことを言う先輩の手には、上手に紅葉したもみじの葉がある。 そのもみじは、ちょうど切れ込みが4つあって、葉が5枚あるから本当に小さな人間の手のようになっていた。 指でつまんで、ひらひらと左右に振ってみせる先輩。私がふふっと吐息で笑い、左右に揺れるもみじに見惚れていれば。 先輩がもみじで私を釣りながら、左手で私の髪を後ろに流していく。空気に触れる耳元に、吐息混じりの微かな声が響いた。「俺のことも、そろそろ名前で呼んでくれへん?」「ふぇッ」「“憂先輩”言われんのも好きやけど、二人ん時は名前がええなあ」 古い葉っぱの香りが秋風に運ばれて、私の意識も一緒に飛ばされそう。 耳が、鼓膜がびくびくしちゃう。先輩の色香をはらんだ声色が、ぎゅぎゅうっと私の中の何かをつかんだ。「な、なまえ、ですか?」「もしかして、覚えてへん?」「そそそんなわけないです! り、李月さんです!」「“李月さん”? ちょっとお固いなあ。」「ええ! じゃ、じゃあ、李さん?」            「ぶふっ。中国のお人やん。」 吹き出す先輩。かわいい、笑顔だなあ。 この先輩が他の人に知られ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-24
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10.ねえ先輩。私だけ動揺してるの、悲しいです。
 近場の神社や公園を散策がてら、テントと、グランピングキャビンと呼ばれるコテージのあるホテルに到着した。 その間も先輩は何度も私に触れようとしてくるのに、私はそれを避けてしまっている。 だって触れられれば触れられるほど、好きな気持ちは増し増しになっちゃうから。「……爽ちゃん、疲れた? 大丈夫?」 チェックインカウンターで、ホテルのスタッフさんがいる中、先輩が私の顔を覗き込んでくる。 フロントコテージの周りに生い茂る、くすんだ朱やカラシ色の広葉樹林が美しい。さらに言えば西のスパダリのお顔も美しい。 眉を下げて、寂しげに私を見つめる先輩。 そんな風に見つめないで。先輩に対する拒否権が居たたまれなくって、つい先輩を受け入れてしまいそうになるから。 森のところどころにあるテントやキャビン。 その合間を楽しそうに走り抜けていく子供やわんこたち。子供とわんこの笑顔を見て、自分もちゃんと楽しまなきゃって気持ちが湧いてきた。 そうだ、先輩と二人で旅行に来れるのなんて、もう二度とないかもしれないのだ。 「ファミリー層が多いよな。」「ですね。森の中でも静かすぎなくって安心です。」「爽ちゃん、森の中こわい?」「いえ、ジェイソンが出てきそうでちょっとワクワクします!」 ふふっと頭上から笑いをこぼす先輩。私が見上げれば、頬に張り付く髪を一筋、指で退けてくれた。「怖がる爽ちゃんをちょっと期待しとったのに。」「うぇっ!?」「俺がいないと駄目な爽ちゃんでええのに。」「なっ、わ、私はもう、いい年した人間ですからっ!」「ならジェイソン出たら、俺のコートの中に埋もれに来てな?」 っんな。 そりゃ先輩の胸に埋もれるくらいには小さい私ですけれど。私だって最前線でジェイソンには応戦したいんですよ?「先輩って、もしかして、シスコン?」「“りっくん”どこいった?」「り、りっくんって、もももしかして、」「それを言うなら、爽コンやな。」「え?」「爽ちゃんコンプレックス。」          そこはシスコンでいいと思うんですよ、先輩。私のこと妹みたいだって言ったじゃないですか。 また宇宙人に勘違いされますって。 憂先輩に翻弄される私。翻弄するのを素でやってくる先輩。私が苦しくても、先輩からすれば私を楽しませようとしてくれているだけなのかもしれない。 先
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-25
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