わたくしは毒殺され、一月前へ戻って来た。以前は気がつかなかった婚約者と親友の不貞に気づき、飲み物を口にすることさえ怖くなってしまった。時を巻き戻したという魔術師からは、マールトンを許すのか、それとも復讐するのか、自分で決めるようにと言われている。どうすればいいのだろう。悔しさは消えない。けれど、復讐など神がお許しにならない。そう思うのに、清らかな心は戻ってこない。胸に渦巻く靄も、晴れる気配がなかった。 ***今日は学園へ登校した。マールトンはわたくしとは口も効かないくせに、課題のノートだけはわたくしの机へ放り投げてくる。カタリンも「あら、ついでに私のも~」と笑いながら、自分のノートを差し出した。今までのわたくしは、断り切れず三人分の課題を黙ってこなしていた。教師も筆跡が同じだと気付いているはずなのに、何も言わず黙認している。わたくしが課題に追われている間、二人は先に帰って逢瀬を重ねていたのだ。なんて馬鹿らしい。わたくしは二人のノートに触れることすら嫌になり、そのまま机の上へ置き去りにして、教室を後にした。 ***そんなことよりも、今は考えなければいけないことがある。このままでは、わたくしは前回と同じようにカタリンに毒殺されてしまう。毒殺を回避することだけは、絶対に譲れない。そのために、あの魔術師に協力してもらえないか頼んでみよう。問題は、その先だった。婚約を解消し、二人と縁を切るだけでいいのか。「浅はかなことを考えるのはやめて」とカタリンに直接言ってみる?「浮気をやめて」とマールトンに頼んでみる?復讐なんて、そんな恐ろしいこと……理性が駄目だと訴える。けれど、裏切りには相応の報いを受けてもらい、教育すべきではないか?わたくしが味わった苦しみの、十分の一でもいいから……。心は揺れ動き、夜になっても答えは出なかった。 ***翌日、マールトンとカタリンは課題をやっていないことに気付くと、わたくしを責め立てた。同級生たちは、あまりにも身勝手な二人の言い分に、白い目を向けている。「あなたたち、いつも自分で課題をやっていないと言っているも同然よ。そのことに気付いている?」わたくしは静かに言い返した。心臓がばくばくしている。机の下の手も震えている。だけど、言い返せた。そこへ教師が教室へ入
Última atualização : 2026-08-01 Ler mais