八月の終わり。透は、ようやく自分のアパートに戻った。神谷の家に一週間以上お世話になっていたが、いつまでも甘えているわけにはいかなかった。「本当に、大丈夫ですか?」神谷が、心配そうに聞いた。ふたりは、透のアパートの前に立っていた。「はい、もう大丈夫です」透は、笑顔を作った。「先生には、本当にお世話になりました」「いつでも、来てください」神谷は、真剣な顔で言った。「僕の家は、あなたの家でもありますから」透の胸が、温かくなった。「ありがとうございます」神谷は、透を抱きしめた。「無理しないでくださいね」「はい」ふたりは、しばらく抱き合っていた。アパートのドアを開けると、ほこりっぽい空気が漂っていた。二週間近く、留守にしていたのだ。透は、窓を開けて換気をした。部屋を見回す。何も変わっていない。でも、透は変わった。家族を失い、そして神谷との絆を深めた。透は、ソファに座り込んだ。急に、静けさが押し寄せてきた。神谷の家にいた時は、神谷がいてくれた。
Última actualización : 2026-08-09 Leer más