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第38話 未来の話

同棲を始めて半年が過ぎた、秋の夜だった。透がキッチンで夕食の準備をしていると、リビングから神谷の声が聞こえた。「透、ちょっといいか」いつもより少し、硬い声だった。透は手を拭いてリビングに戻ると、神谷がソファに座って、何かのパンフレットを手にしていた。「どうしたの?」透が隣に座ると、神谷は少し躊躇うように視線を落としてから、パンフレットを差し出した。「パートナーシップ制度について」表紙にそう書かれた、市区町村が発行している案内だった。「これ……」透の声が、少し震えた。神谷は透の横顔を見つめながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。「この前、クリニックの患者さんで、パートナーシップ証明書を持っている方がいたんだ。ふたりで受診に来られて、とても自然に、お互いを支え合っていた」神谷の声は、静かで、でも確かな意志を含んでいた。「それを見て……俺も、透と、そういう関係でいたいと思った」透はパンフレットを手に取り、ページをめくった。パートナーシップ制度の説明、申請方法、必要な書類。活字が、透の視界に入ってくる。「法的な効力は限られているけど」神谷が続けた。「病院での面会や、賃貸契約での同居人証明、いろいろな場面で、ふたりの関係を証明できる」透は、パンフレットを握りしめた。「……神谷さん」「嫌なら、無理にとは言わない。ただ、俺は――」「嫌なわけない」
last updateÚltima actualización : 2026-08-28
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