松井圭佑(まつい けいすけ)と入籍する約束をしたその日、やはり彼は現れなかった。同じことが、すでに7回も繰り返されている。あとどれくらいで着くのか連絡しようとスマホを手に取った、そのときだ。偶然、彼の幼なじみである葛生沙也加(くずお さやか)が新しく投稿した動画が目に入った。【大好きな圭佑と入籍して1000日!これまでも、これからも、ずっとあなたと一緒に】添付されていたのは婚姻届受理証明書の写真。夫の欄には、はっきりと圭佑の名前が記されていた。しかも、入籍の日付は3年前のバレンタインデー。彼が7回も入籍に来なかった理由は、それだったんだ。もう、とっくに誰かの夫になっていたから。その婚姻届受理証明書を見た瞬間、最初に浮かんだのは「同姓同名なんじゃないか」という淡い期待だった。けれど、動画が進むと、二人のツーショットが目に飛び込んできた。写っているのは、紛れなく、5年間ずっとそばで過ごしてきた人だ。もう、自分をごまかすことなんてできない。5年間付き合ってきた恋人、圭佑は、他の女と結婚していた。法律の上で彼の妻になっていたのは、幼なじみの沙也加。しかも、3年前のバレンタインデーという入籍日を目にした瞬間、息が止まりそうになった。こらえきれなくなった涙が、大粒になってぽたぽたとスマホの画面へ落ちた。大学時代に圭佑と付き合い始めてから、もう5年が経った。なのに彼は、3年前にはもう他の女と夫婦になっていたのだ。3年間。私、日高悦子(ひだか えつこ)は、3年間も騙され続けていた。この3年間、彼は毎朝、私の腰に手を回して「おはよう」と言いながらキスをしてくれた。朝ごはんを作ってくれて、仕事へ向かう私を笑顔で見送ってくれた。だからこそ、これまでに6回も入籍を先延ばしにされ、「急な用事で行けなくなった」と言われても、一度だって疑わなかった。私たちは本当に愛し合っていると信じており、入籍なんて早いか遅いかの違いに過ぎないと思っていた。まさか、あれほど優しかった人が、もう誰かの夫だったなんて。胸を締めつける痛みを必死に押し殺しながら、私は動画を最後まで流し続けた。動画は7分にも及んだ。幼い頃から積み重ねてきた圭佑と沙也加の思い出。18歳の沙也加が海外へ旅立つ日の別れ。そして3年前
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