正月休みが終わると、麻帆が旅先から戻ってきた。以前の俺なら、インターホンが鳴る前にマンションのエントランスまで迎えに行った。けれど今回は、動かなかった。麻帆からラインが届いた。【今どこ?】俺は昼飯を食べながら、短く返した。【先に上がってきて。今、昼飯食ってる】しばらくして、台所で皿を洗っていると、キャリーケースを引いた麻帆が入ってきた。「私、昼食まだなの。何か作ってくれない?」以前の俺なら、すぐに作っていただろう。けれど今は、皿を洗う手を止めなかった。「今は無理。外で食べてきて」麻帆はむっとしたようだったが、すぐに声を抑えた。「年末年始のことで怒ってるのは分かってる。でも、そういう態度取るの、やめてくれない?本当にお腹すいてるの」最後の皿を洗い終え、手を拭いた。「怒ってない」「圭吾は年末年始にひとりきりなの。放っておけるわけないでしょう」「うん。分かってる」麻帆はしばらく俺の顔を見ていた。やがて、ため息をつく。「そういう態度を取られると、私も疲れる。いつまで拗ねてるの?」「拗ねてない。俺に説明する必要もないよ」麻帆は黙ってキャリーケースを開け、飛行機の模型を取り出した。「これ、プレゼント」差し出された模型には包装もなく、外箱にはしわが寄っていた。圭吾がインスタに載せていた、きれいにラッピングされたプレゼントとは大違いだった。喜ぶ気にはなれなかったが、とりあえず礼だけ言った。「ありがとう」麻帆は不満を隠さずに聞き返した。「それだけ?」「ああ」麻帆は黙り込み、俺の前に片手を差し出した。「私の分は?」そこで初めて思い出した。「ごめん、忘れてた。金を送るから、自分で好きなものを買って」そう言ってスマホを操作し、その場で送金した。麻帆は言葉を失い、俺を見つめた。付き合い始めてから、毎年新年にプレゼントを交換するのが、俺たちの習慣だった。俺は、一度も忘れたことがない。麻帆が俺へのプレゼントを用意していない年でさえ、俺は欠かさず、その年ごとに違うものを選んで贈ってきた。それきり会話が途切れた。俺はソファに置いていた上着をつかみ、玄関へ向かった。「どこへ行くの?」「友達の飲み会に呼ばれて、行ってくる」呼び止める麻帆の声を
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