会場は水を打ったように静まり返った。誰もがその場に凍りつき、信じられないという顔で最前列へ視線を向ける。司会者は満面の笑みで登壇を促した。「光森会長、奥様、どうぞ壇上へ。お二人のその尊いご決断は、称賛されて然るべきです」その言葉が終わるや否や、周囲でひそひそ話が広がっていく。「まさか光森家だったなんて……あんなに慈悲深い一家だとは思わなかったわ」「涼子さんって、輪廻転生を一番信じてる人じゃなかった?それなのに、我が子の臓器を提供する決心がつくなんて」それらの声が、一つ残らず涼子の耳に突き刺さる。穏やかだった表情が、みるみる崩れていく。顔は青白く、今にも気を失いそうだ。涼子は総一郎の腕にすがりつき、震える声を絞り出す。「あの人たち……あの人たち、何を言っているの?うちの子はちゃんと生きているのに、どうしてあんな縁起でもないことを!」一樹の顔つきが、すっと険しくなる。刃物のような視線を司会者に向け、冷ややかに言い放つ。「何をでたらめ言ってるんだ。光森家に、亡くなった人間なんて一人もいない」総一郎からも、周囲を圧するような気迫が漂い始める。「ふん、言葉には気をつけたまえ」そのただならぬ剣幕に、司会者は思わず半歩後ずさった。慌てて手元の資料に目を落とし、何度も確認を繰り返す。その額にはじわじわと冷や汗がにじんでいる。しばらくして、彼はためらいがちに口を開く。「会長、奥様……資料には、ドナーは間違いなく……お二人の娘さんだと記載されております」「黙りなさい!」涼子は目を真っ赤にして金切り声を上げた。「雲雀(ひばり)は海外へ卒業旅行に行っているのよ。数日前だって写真が送られてきたばかりなのに、そんなことあるはず……」一樹は母親の手をぐっと押さえ、低い声でなだめる。「母さん、落ち着いて」そして再び司会者に向き直り、剣呑な眼差しで告げる。「もう一度だけチャンスをやる。本当のことを言え」涼子が泣き声交じりに口を挟む。「一樹、早く妹に電話をかけて。まさか、本当に何かあったんじゃ……」一樹はすぐさまビデオ通話をかけた。トゥルルル、トゥルルル――コール音が何度も鳴り響くが、一向に出る気配はない。光森家の面々の心が、徐々に沈んでいく。涼子は顔面蒼白のまま、スマホの画面を食い
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