Semua Bab 送り間違えた愛情、届かないまま: Bab 1 - Bab 8

8 Bab

1

私は手土産を買い直し、一人で実家へ向かった。今日はこどもの日だ。両親は当然、不思議そうな顔をした。「清晃くんは?一緒に来るって言ってただろう?」「二人とも、何かあったの?」私は笑顔を作った。「ごめんね、お父さん、お母さん。急に会社から連絡があって、仕事になっちゃったんだって」両親はすぐに納得してくれた。「仕事なら仕方ないわね」けれど私は、スマホに表示された夫の元カノ――雨宮さゆり(あまみや さゆり)のInstagramを見つめていた。投稿には、一言のコメントと九枚の写真。【彼が用意してくれたサプライズ!こんなに考えてくれてたなんて嬉しい!】私が何日も調べてようやく選んだ、山の幸を使った詰め合わせ。それがすべて開封され、調理されていた。きれいな皿に盛りつけをしている、一組の手。すらりと長い指。くっきりと浮いた関節。そして、右手の親指に残る一本の傷痕。ひと目でわかった。夫――高瀬清晃(たかせ きよあき)の手だ。それと同時に気づいた。左手の薬指から、結婚指輪が消えている。外した跡すら残っていなかった。私たち共通の友人が、その投稿にいいねを押し、コメントを残している。【だから前から言ってるじゃん。二人、結婚しちゃえばいいのに!】私はその投稿に、そっと「いいね」を押した。すると、すぐに清晃からメッセージが届いた。【高瀬柚葉(たかせ ゆずは)、せっかくの休みなのにお前が俺を追い出したんだろ。だからって道端で飯食えっていうのか?】【俺に文句言うだけならまだしも、さゆの前でまで騒いで恥かかせるなよ。ほんとみっともない】並んでいるのは、私を責める言葉ばかり。「いいね」を一つ押しただけで、いったい何が「騒いだ」ことになるのか、私にはわからなかった。それに――『さゆ』清晃は元カノのことを、いつも親しげにそう呼ぶ。なのに、私にはそんな特別な呼び方はない。以前、私にも何か二人だけの呼び名が欲しいと伝えたことがある。けれど清晃は、まるで気にも留めなかった。「昔からそう呼んでるんだから仕方ないだろ。ただの呼び方じゃん。いちいち気にしすぎなんだよ」私は画面を上へスクロールし、これまでの清晃とのやり取りを遡った。【ミルクティー、まだ届かないんだけど。もう二時間以上経って
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2

紙袋を開けると、中に入っていた服はどれも一度開封されていた。タグは切り取られ、ベージュのカジュアルパンツには、食べ物の汁がついた跡が残っている。乾いてはいたが、かなり目立った。これでは返品もできない。その染みを見つめていると、まるで散々に荒れ果てた、この三年間の結婚生活を見ているようだった。「この服、誰が開けたの?」清晃は一瞬言葉に詰まり、それから少し態度を軟らかくして説明した。「さゆだよ。荷物が届いたから、自分へのプレゼントだと思って開けちゃったらしくて……」私は淡々と尋ねた。「開けただけじゃなくて汚したものを、私の両親に渡せって持って帰ってきたの?」すると清晃は、たちまち苛立った顔になった。「もう開けたものは仕方ないだろ!タグも切っちゃったんだから返品できないし。その服、お義父さんとお義母さんのサイズだろ。他の人じゃ着られないんだから。お前が渡したくないなら捨てればいいだろ。それでいい?」他の人じゃ着られない。その「他の人」が誰なのかなんて、聞くまでもなかった。真相なんて、笑ってしまうほど単純だった。さゆりの両親にはサイズが合わなかった。だから、私の両親に渡すために持ち帰ってきた。もしサイズが合っていたなら、この二着も今まで何度も「送り間違えた」荷物と同じように、そのままさゆりのものになっていたのだろう。私は服を紙袋に押し戻した。「そっちで処分して」そう言って書斎へ向かおうとすると、清晃に呼び止められた。「もう機嫌直せよ。謝るために、わざわざいいフレンチ予約したんだから。せっかくの連休なんだし、こんな些細なことでいつまでも喧嘩するのやめよう。な?」そのまま腕を引かれ、私は家を出た。だが清晃が予約した席に着くと、そこにはすでに一人の女性が座っていた。上品なワンピースに、細いストラップの華奢なヒールサンダル。メイクも完璧で、髪の一本一本まで丁寧に整えられている。一方、突然連れ出された私は、ゆったりした長袖Tシャツにパンツという普段着姿。長い髪も、適当にクリップでまとめただけだった。高級フレンチには、どう見ても場違いだ。シャツにジャケット姿の清晃と、きれいに着飾ったさゆり。二人で並んでいると、まるでデートを楽しむ恋人同士に見えた。むしろ私のほうが、厚
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けれど次の瞬間、清晃が私に向けたのは、責めるような視線だった。「忘れてた。なんで先に言わないんだよ。それに魚介が食べられなくても、牛肉のカルパッチョだってあるだろ?」私は、生もの自体ほとんど口にしない。以前の清晃は、それもちゃんと覚えていた。いつからだろう。私のことを、何もかも忘れてしまったのは。ふと、自分がここに座っている意味がわからなくなった。私は立ち上がり、そのまま店を出た。背後から、さゆりの心配そうな声が聞こえる。「柚葉さん、怒っちゃったのかな?」続いて、清晃が声を潜めて答えた。そこには、隠そうともしない苛立ちが滲んでいた。「ほんと、どんなときでも空気悪くするの得意だよな。放っとこう。俺たちで食べよう」私は一人でレストランを出ると、タクシーを拾って家へ帰った。今度こそ、もう何の期待も残っていなかった。まず会社に退職の意思をメールで伝え、それから荷物をまとめ始めた。最初に手をつけたのは書斎だった。清晃は職業柄、仕事を家に持ち帰ることができない。だから、この部屋を使っていたのはほとんど私だった。本も、絵も、ノートも。ここにあるものは、ほぼすべて私のものだ。半分ほど片づけ終えたころ、清晃が帰ってきた。玄関に入ってきたときには笑っていたのに、私の姿を見るなり、その笑みが消えた。代わりに浮かんだのは、深い失望だった。「柚葉、お前いつからそんなふうになったんだよ?せっかくの休みなのに、朝から晩までずっと揉めて。全員が嫌な気分にならないと気が済まないのか?」あまりにも馬鹿馬鹿しくて、笑いそうになった。ここまで来てもまだ、清晃の中では私が「騒いでいる」ことになっている。私がわざと、みんなの気分を悪くしているのだと。もう何も言い返す気になれなかった。「清晃、私たち離婚しよう――」そう口にしたその瞬間、清晃のスマホが鳴った。さゆり専用の着信音だった。明るく軽やかな、短いメロディー。清晃は普段、スマホの着信音すら初期設定のままだ。わざわざ変えるの面倒だからと、いつもそう言っていた。なのに、さゆりだけは特別だった。結婚して三年。その間、清晃はスマホを三度買い替えた。新しいスマホを手にするたび、真っ先に設定するのが、このメロディーだった。以前、気になって聞い
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清晃が予約していたのは、大きな個室だった。テーブルが二卓並び、三十人近い人たちでぎっしり埋まっている。義父母が座るテーブルには、さゆりの姿もあった。さゆりは義父母のすぐ隣に座り、その右隣には清晃がいる。店員に案内されて個室の扉を開けたとき、ちょうど清晃がさゆりのほうへ顔を寄せ、何かを話しているところだった。二人の距離は近く、どちらの顔にも楽しそうな笑みが浮かんでいた。私が入ってきたことに気づいた瞬間、部屋の空気が一瞬だけ静まる。清晃は反射的に上半身を引き、さゆりとの距離を取った。まるで何かを取り繕うように立ち上がり、私のところまで歩いてくる。「やっと来たか」そう言うと「お前待ちだったんだよ。早く座ろう」と促した。私は軽く頷き、まず義父母のもとへ行って挨拶をした。すると清晃が、わざわざ説明する。「母さんがさゆに会いたいって言うから、呼んだんだ」さらに私の耳元へ顔を寄せ、声を潜めた。「今日は同僚もこんなに来てるんだし、一人くらい増えたって変わらないだろ?」私は一歩下がり、清晃から距離を取った。「好きにすればいいわ」と淡々と答える。私の席は清晃の右隣。そして左隣には、さゆりが座っていた。ふと横を見ると、さゆりの膝の上に置かれているカラフルなバッグが目に入った。去年、私が一目惚れしたものだ。清晃が「じゃあ俺が買ってやるよ」と言ったのに、結局さゆりの家へ届いた。テーブルの上に置かれたいちご柄のベアタンブラーも、私が欲しがっていたものだった。けれど何より目についたのは、さゆりの手首だった。有名ジュエリーブランドが去年のバレンタインに発売した、博物館との限定コラボのゴールドブレスレット。あのシリーズが発表されたとき、私はすぐに気に入った。しかも発売日は偶然にも、清晃との二度目の結婚記念日だった。「記念日に俺が買ってあげる」そう約束していた。だがそれもさゆりの家へ届いた。返してもらってほしいと頼んでも、清晃は聞き入れなかった。そのことで大喧嘩になり、一か月もまともに口を利かなかった。そして今、そのブレスレットは、何の後ろめたさもないように、堂々とさゆりの手首を飾っている。ほどなく料理が運ばれ始めた。集まっているのは、ほとんどが清晃の同僚や友人たちだ。広い個室はすぐに賑やか
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清晃は、目の前に置かれた離婚協議書と離婚届を呆然と見つめていた。広い個室が一瞬にして静まり返る。真っ先に立ち上がったのは、さゆりだった。ひどく慌てた顔で清晃を見る。「アキくん、柚葉さん、何か誤解してるんじゃない?ちゃんと説明してあげてよ!」それから私へ向き直った。「柚葉さん、みんな酔ってて、ふざけて言っただけなんです。そんなに気にしないでください……」私は冷めた目で清晃を見ていた。最初は驚きと焦りに満ちていたその表情が、さゆりの言葉を聞くうちに、少しずつ苛立ちへと変わっていく。清晃は怒りを抑えるようにして言った。「柚葉、今日は同僚も友達もこんなにいて、うちの親まで来てるんだぞ。みんながちょっとふざけただけだろ。嫌だったなら、やめろって言えばそれで済む話じゃないか。こんなところで離婚だなんだって騒いで、恥さらすのやめてくれよ」義父母も、引きつった笑みを浮かべながら私をなだめた。「柚葉さん、さっきはみんな少し悪ノリしすぎたわ。でも、だからってすぐ離婚なんて言うものじゃないでしょう?若いうちは腹が立つこともあるだろうけど、喧嘩するたびに離婚を持ち出しちゃ駄目よ。そんなことを繰り返していたら、本当に夫婦の縁までなくなってしまうわ」私は少し黙ってから答えた。「お義父さん、お義母さん。勢いで言っているわけじゃありません。本当に離婚するつもりです」そして、もう一度清晃を見る。「サインして」すると、さゆりが突然泣き出した。涙を拭いながら、必死な様子で清晃に訴える。「アキくん、早く柚葉さんに謝って!私、もう二度と来ないから。アキくんとも縁を切る。もう連絡もしないから。みんなも今日はもう帰ろう?あとは家族だけで、ちゃんと柚葉さんに謝って話し合って……」義父母の顔色は、見る見るうちに悪くなっていった。周りの人たちも互いに顔を見合わせ、私と清晃を見ながら何か言いたそうにしている。清晃は荒い息を二度ほど吐いた次の瞬間、テーブルの上に置かれていた離婚届をつかみ、何度も引き裂いた。紙はあっという間に細かな破片になった。用意しておいたペンまで壁へ叩きつけられる。床に落ちたペンは転がって、そのままテーブルの下へ消えた。私はバッグを手に取った。「明日、新しい離婚届を送るから。今度はちゃんとサインして。私は帰る
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両親も手伝ってくれたおかげで、届いた荷物はすぐに片づいた。私はまた、子どものころからずっと使っていた自分の部屋へ戻ってきた。小さな部屋には、クローゼットと机が一つ。決して広くはないが、どこを見ても私らしさが詰まっていた。夜になると、両親が私の好きな料理をたくさん作ってくれた。昨日のこどもの日は、清晃も一緒に帰ってくると前もって伝えていた。だから両親は、わざわざ料理の半分以上を清晃の好みに合わせて用意していたが、結局彼は来なかった。もともと清晃は、私たち家族とは食の好みがかなり違う。そのせいで昨日は、せっかく作った料理がたくさん余ってしまった。でも今日は違う。ようやく家族三人、誰か一人に合わせて我慢する必要もなく、好きなものを好きなように食べられる。夕食のあと、両親はわざわざ私を散歩に連れ出してくれた。曲がりくねった石畳の道を、三人でゆっくり歩く。父が言った。「人生、何かが起きること自体は怖くないんだ。怖いのは、一度転んだまま立ち上がれなくなることだからな」母も続けた。「ゆずがもう離婚すると決めたなら、これ以上清晃くんに振り回されちゃ駄目よ」私は頷いた。「もちろん。もう完全に気持ちが冷めたから、離婚を決めたのよ。実は仕事も、前から転職したいと思ってたの。今までは妊活するつもりだったから、今の仕事なら比較的余裕があるし、妊娠して出産して、そのまま子育てするにはちょうどいいかなって思って続けてただけ。でももうその必要もなくなったから辞めた。まず一か月くらい旅行して、帰ってきたらまた働くつもり。次の仕事も、もういくつか当てがある」私がこれからのことをきちんと考えているとわかると、両親も安心したように何度も頷いた。「ちゃんと考えてるならそれでいい。大学を卒業してから、ほとんどゆっくり遊ぶ暇もなかったもんな。せっかくだし、思いきり旅行してこい」その夜、寝る直前になって、ようやく清晃から三通のメッセージが届いた。【お前の荷物、どこ行ったんだよ?柚葉、まさか全部実家に運んだのか?】【いくつだよ。子どもじゃあるまいし、ちょっと喧嘩したくらいで親に言いつけるとか幼稚すぎるだろ】私から返事がないまま、最後にもう一通。【勝手にしろよ。いつまで意地張ってられるか見ものだな】ここまで来ても清晃は
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旅行に出て三日目、母から電話がかかってきた。「清晃くん、うちまで来たわよ。お父さんが家には上げなかったけど。態度だけ見ればずいぶん殊勝だったわ。両手いっぱいに手土産を抱えて、ゆずに謝りたいって。とてもじゃないけど、あんなことを何度もやらかす人には見えなかったわよ。出かける前に、この三年間にあったことを全部話してくれてなかったら、お父さんもお母さんも絶対わからなかったと思う。下手したら、そのまま家に上げてたかもしれないわ」確かにそうだ。もし私が別の人間だったなら、恥をさらしたくないから、自分の失敗を隠したいから、あるいは、人に笑われるのが怖いから。詳しい事情は伏せて、ただ、価値観の違いで、と説明していたかもしれない。でも私は違う。悪いのは私じゃない。それなのに、どうして私が隠さなければいけないの?どうして私が恥ずかしいと思わなければいけないの?どうして人に笑われることを怖がらなければいけないの?こんなことをした本人たちは、何とも思っていないのに。私は念を押すように母へ言った。「清晃、私にずっと電話もメッセージもしてきてるけど、全部無視してるの。それで実家まで行ったんだと思う。新しい離婚協議書も離婚届ももう送ってある。それでも最後までサインしないなら、裁判してでも離婚するから。とにかく、私は絶対に離婚する。お母さん、お父さんと一緒にちゃんと私の味方でいてね」母は即答した。「当たり前でしょう!ゆずは私たちの娘なんだから。清晃くんは、ゆずと結婚してなかったら、一生知り合うこともなかった他人よ。お父さんもお母さんも、まだそこまでボケてないわ。誰の味方をするべきかくらい、ちゃんとわかってるから安心しなさい」思わず笑ってしまった。その一方で、三年間の自分を思い出すと、少しだけ胸が痛んだ。両親は昔から、いつだってこうして私を支えてくれる人たちだった。考え方だって古くない。もしもっと早く、さゆりの存在や、清晃がしてきたことを話していたら、きっと両親は、もっと早い段階で離婚を勧めてくれていたはずだ。三年間、私を縛っていたのは私自身だった。自分で自分を閉じ込めて、三年もの時間を無駄にした。それでも、たった三年で済んだのだ。今ならまだ遅くない。両親が味方でいてくれるとわかり、私の
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旅行中も、ときどき母から電話やメッセージが届いた。清晃がまた実家まで来た、という話も何度か聞いた。どうにか両親を通して、私と連絡を取ろうとしていたらしい。そのうち両親も「ゆずは今、旅行に出てるから」と伝えたそうだ。それからは、早朝や真っ暗な夜に突然家の前へ現れて、両親を驚かせることもなくなった。電話越しに聞こえる母の穏やかな声。家であったこと。父のこと。そして、ときどき出てくる清晃の名前。でもその名前を聞いても、もう心は少しも揺れない。私の中で清晃は、完全に過去の人になっていた。清晃からの通知はすべてオフにしていたから、届いたメッセージもほとんど見なかった。もともと旅行は一か月の予定で、帰りの飛行機も早いうちに予約してあったので、予定どおりに家へ戻ることにした。旅先で面白いものや、記念に残しておきたいものを見つけるたび、その場で買って自宅へ送った。もちろん、配送先は自分の実家だ。住所を間違えることもない。ましてや「最初から別の人に贈ったものだから、お前には関係ない」なんて言われることもない。スーツケースも先に宅配便で送っておいた。帰りは出発したときよりも身軽だった。空港に着くと、母が花束を用意して待っていてくれた。笑顔で花を渡しながら、母が私を上から下まで眺める。「ちょっと痩せた?でも顔色はずっといいわね。楽しかった?」私は大きく頷いた。「楽しかった!毎日すごく楽しかったわ。充電満タン。これでまた元気に社畜できそう!」両親が揃って吹き出した。「自分で社畜って言うなよ」私も笑いながら顔を上げ、そこで、清晃の姿に気づいた。赤いバラの花束を抱えて立っている。一か月ぶりに見る清晃は、ひと回り痩せていた。もともと背が高いから、細身の体で大きな花束を抱えている姿は、人混みの中でもひどく目立った。両親の笑顔が、わずかに薄れる。でも、私の気持ちは少しも乱れなかった。私はそのまま清晃の前まで歩いていった。「まさか、私を迎えに来たの?」清晃の声は少しかすれていた。「ああ、迎えに来た。柚葉、ごめん。本当に少しでいいから時間をくれないか。座って、ちゃんと話したい」私は清晃が抱えている花へ目を向けた。「私ね、赤いバラって別に好きじゃないの。好きなのは、ひまわりとか、かすみ草」
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