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Penulis: 雲井
清晃が予約していたのは、大きな個室だった。テーブルが二卓並び、三十人近い人たちでぎっしり埋まっている。

義父母が座るテーブルには、さゆりの姿もあった。

さゆりは義父母のすぐ隣に座り、その右隣には清晃がいる。

店員に案内されて個室の扉を開けたとき、ちょうど清晃がさゆりのほうへ顔を寄せ、何かを話しているところだった。

二人の距離は近く、どちらの顔にも楽しそうな笑みが浮かんでいた。

私が入ってきたことに気づいた瞬間、部屋の空気が一瞬だけ静まる。

清晃は反射的に上半身を引き、さゆりとの距離を取った。

まるで何かを取り繕うように立ち上がり、私のところまで歩いてくる。

「やっと来たか」

そう言うと「お前待ちだったんだよ。早く座ろう」と促した。

私は軽く頷き、まず義父母のもとへ行って挨拶をした。

すると清晃が、わざわざ説明する。「母さんがさゆに会いたいって言うから、呼んだんだ」

さらに私の耳元へ顔を寄せ、声を潜めた。「今日は同僚もこんなに来てるんだし、一人くらい増えたって変わらないだろ?」

私は一歩下がり、清晃から距離を取った。

「好きにすればいいわ」と淡々と答える。

私の席は清晃の右隣。そして左隣には、さゆりが座っていた。

ふと横を見ると、さゆりの膝の上に置かれているカラフルなバッグが目に入った。去年、私が一目惚れしたものだ。

清晃が「じゃあ俺が買ってやるよ」と言ったのに、結局さゆりの家へ届いた。

テーブルの上に置かれたいちご柄のベアタンブラーも、私が欲しがっていたものだった。

けれど何より目についたのは、さゆりの手首だった。有名ジュエリーブランドが去年のバレンタインに発売した、博物館との限定コラボのゴールドブレスレット。

あのシリーズが発表されたとき、私はすぐに気に入った。

しかも発売日は偶然にも、清晃との二度目の結婚記念日だった。

「記念日に俺が買ってあげる」そう約束していた。

だがそれもさゆりの家へ届いた。

返してもらってほしいと頼んでも、清晃は聞き入れなかった。

そのことで大喧嘩になり、一か月もまともに口を利かなかった。

そして今、そのブレスレットは、何の後ろめたさもないように、堂々とさゆりの手首を飾っている。

ほどなく料理が運ばれ始めた。

集まっているのは、ほとんどが清晃の同僚や友人たちだ。広い個室はすぐに賑やかな笑い声で満たされた。

食事も酒も進んだころ、誰かがふざけ半分に声を上げた。

「何年経っても、清晃とさゆちゃんってやっぱりお似合いだよな!」

「あのとき変なすれ違いさえなかったら、とっくに結婚してたんじゃない?今ごろ子どもだって何人かいたかもね!」

「しかも清晃、何年経ってもさゆちゃん専用の着信音だけは変えてないんだろ?それが愛じゃなかったら何なんだよ!」

さゆりは頬を赤らめ、恥ずかしそうに俯いた。

清晃は、「お前ら、酒入ったからって適当なこと言うなよ」と一度だけたしなめた。

けれど周囲の冷やかしはますます大きくなっていく。清晃も困ったように笑うだけで、本気で止めようとはしなかった。

私は何の表情も浮かべず、黙って席に座っていた。

やがて、みんなの食事がひと段落したころ。

私はバッグから二部の離婚協議書と離婚届を取り出し、清晃の前に置き、その上にペンを一本乗せた。

そしてまず、義父母を見た。

「お義父さん、お義母さん。すみません。今日ここへ来たのは、お二人にきちんとお伝えしておきたいことがあったからです。私、清晃と離婚することにしました」

それから清晃へ視線を移した。

「私はもう署名してあるから、あなたも確認して、問題なければサインして。

サインが済んだら、役所が開いている日に離婚届を出しに行こう」

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  • 送り間違えた愛情、届かないまま   8

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