「ちょっ……陽生、お前三十五点ってそれはないだろ!」 カラオケルームのテレビ画面に表示された点数を見て、朔也は身体をくの字に折って爆笑した。心羽は朔也の背中にくっついて肩を震わせ、茉莉は困ったように曖昧な笑みを浮かべている。 「カラオケの機械ってこんな点数出るんだね! 心羽はじめて見た!」 「うるせえよ、そこのバカップル。っていうか、朔也はおれが音楽の授業ずっと口パクしてるの知ってるのに、何で無理やり歌わせるんだよ」 「面白いから」 「黙れ」 陽生は朔也をぎろりと睨む。たまらなくなったのか、茉莉も小さく吹き出した。 「貴嶋くんと氷上くんって本当に仲良いよね」 「ただの腐れ縁だ。ほら、次、芦屋歌えよ」 憮然とした顔で、陽生は茉莉へとデンモクとマイクを押しやった。茉莉はデンモクを手に取ると、曲を探し始める。 しばらくして、テレビ画面に茉莉が選んだ曲が表示された。それは、何年か前のテレビドラマの主題歌だった。 ピアノによるイントロが流れ始めると、茉莉はマイクを持った。そして、すっと小さく息を吸うと声帯を震わせて、優しいのにどこか陰を感じさせる声で歌い始めた。歌声から伝わってくる無自覚な切なさと悲しみに、陽生の心はぎゅっと掴まれる。 ラブバラードを歌い上げていく茉莉の顔を心羽はじっと見ていた。朔也も何か思うところがあるのか、黙って茉莉の歌に耳を傾けていた。 ラストのサビが終わり、ピアノがアウトロを奏で始めると茉莉はマイクを置いた。そして、部屋の中が静まり返っていることに気がつくと、彼女は申し訳なさそうに目を伏せる。 「ごめん、今の流れでバラードはなかったよね。選曲間違えちゃったみたい」 「そんなことないよ。茉莉の歌が上手くてつい聞き入っちゃっただけだよ。ね、さっくん?」 「うん、めっちゃ上手かった。陽生は勉強だけじゃなく、歌も芦屋に教えてもらった方がいいんじゃないか?」 「やかましいわ」 「茉莉、こっちにデンモクちょうだい。次、心羽が歌うー」 「陽生、オレたちは飲み物取りに行こうぜ。心羽ちゃん、芦屋、何か欲しいものある?」 「わたしは大丈夫。心羽は?」 「じゃあ、心羽、オレンジジュース!」 りょーかい、と片目を瞑ると朔也は部屋を出る。陽生は朔也の後に続き、ドリンクバーへと向かった。 「なあ、陽生。芦屋って、自覚
Last Updated : 2026-08-18 Read more