女の勘で、彼女が亮介の不倫相手だとすぐにわかった。案の定、私に気づいた瞬間、彼女の目が泳いだ。とっさに私を避けるように体をそらし、見なかったふりをして立ち去ろうとした。私はそんな彼女を呼び止め、笑顔で声をかけた。「こちらの店長さんですか?ネットで評判がよかったので、ぜひお願いしたくて来たんです」すると、すぐそばにいたネイリストが気さくに口を挟んだ。「そうですよ。このお店、彼氏がこの子のためにわざわざ開いてくれたんです」どうやら彼女――佐々木奈緒(ささき なお)が、このネイルサロンの店長らしい。ネイリストは奈緒に向き直った。「奈緒、やってあげたら?ついでにまた彼氏との惚気話も聞かせてよ」奈緒が握りしめていたバラの花束は、くしゃりと形を崩していた。我に返った奈緒は花束を脇に置き、少しこわばった声で言った。「ど、どうぞ……お掛けください」思わず小さく笑ってしまった。私の顔を見ただけで言葉につまるほど怯えているくせに、それでよく人の夫に手を出せたものだ。私は両手を奈緒の前に差し出した。そのとき、彼女の薬指で光るダイヤの指輪が目に入った。かなり大きな石で、ざっと見ても10カラットほどはありそうだった。私は何気ない調子で聞いた。「彼氏さん、本当に大事にしてくれてるんですね。バラだけじゃなくて、こんなに手に入りにくいブランド物のダイヤの指輪までプレゼントしてくれるなんて」奈緒は一瞬だけ得意そうな顔をしたが、すぐに何でもない顔をした。「私、こんなに大きいのはいらないって言ったんですよ。仕事中は邪魔になるし。でも彼が、私には一番いいものを持っていてほしいって。もし傷つけちゃっても、また新しいのを買えばいいって言うんです」それを聞いて、昔、亮介に言われた言葉がふと蘇った。あの頃の亮介はまだお金がなく、それでも貯金を全部はたいて、ごく普通の銀の指輪を私に贈ってくれた。そのとき、亮介は私の手を握ってこう言った。「真紀、今はこんなのしか贈れないけど、いつかもっといいものを贈るから」あの頃の私は、その言葉だけで十分幸せだった。その後、亮介が成功しても、あの約束が果たされることはなかった。それでも私は気にしていなかった。あのときのぬくもりだけは、ずっと覚えていた。なのに、その約束はちゃんと
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