「今日はよくぞいらっしゃいました、皇帝陛下」「そう固くなる必要はない、ルイーズ嬢。また、あなたに会う事ができてよかった」 両親の帰宅から2日後、あのパーティーから3日後。――それはちょうど、イヴァン様が我が家に訪れる日。 その日、彼は朝早くから我が家にやってきた。この前屋敷にやって来たルカさんのみを連れて。 ところで、ルカさんの顔が青いのが心配なのだけど、どうしたのかしら? こちらの様子を伺っているというか、なんと言うか。「先日ぶりですな、皇帝陛下? ――随分と娘と仲睦まじいようで」「エキャルラット侯爵、どうしてそんな芝居がかった話し方を?」 「はぁ、その言葉そっくりそのままお前に返すよ」とあきれたように話す父と、皇帝陛下。 二人はかなり前からの知り合いらしく、お互い微笑みながら握手を交わす。 一見したら友人同士握手をするというなんともない風景。 しかし、父よ。そんなにミシミシと音が鳴るぐらい握ったらだめだ。このままでは彼の手の骨が粉砕してしまう。「あ・な・た。そんなに長く握手をしていたら皇帝陛下がお困りになるでしょう? 申し訳ございません、皇帝陛下。よく言って聞かせますから」 そんな父の様子を母が見逃すわけがなく、扇子で父の大きな背中を小突く。パシーンと軽快な音があたりに響いた。 さすがの父も母の小さな背に虎でも宿っているような気配に引き下がる。 その獅子のような体は縮こまり、目には涙が浮かぶ。 相変わらずお母さまに完全に尻に敷かれているわね、お父さま。「あ、ありがとう、エキャルラット夫人。それで、侯爵はそのままで大丈夫なのか?」「どうぞ、お気になさらず。少し意地を張った彼が悪いのです」 母はぴしゃりと言うと、彼は「そういえばそうだった」と何かを思い出すように笑う。「そういえば、前ルイーズと手合わせをしてみたいと言っていましたでしょう。ちょうどいい機会ですからどうです?」 ――え? どうなったらそんな話になるの。 母が軽快に発した言葉に動揺を隠しきれない。 もともとどこかずれているとは思っていたけど、ここまでとは思わなかった。 お願いですから、そんな「散歩でもします?」というノリで言わないでください。 おかしいな。母は外から嫁いで来たはずなのに、この場にいる誰よりも戦いに飢えているような気がする。逆に、お父さま
Last Updated : 2026-08-29 Read more