All Chapters of 鮮紅令嬢は人生を謳歌したい~波乱万丈な人生に異国の皇帝を添えて~: Chapter 11 - Chapter 13

13 Chapters

第11話 皇帝陛下の訪問と手合わせ

「今日はよくぞいらっしゃいました、皇帝陛下」「そう固くなる必要はない、ルイーズ嬢。また、あなたに会う事ができてよかった」 両親の帰宅から2日後、あのパーティーから3日後。――それはちょうど、イヴァン様が我が家に訪れる日。 その日、彼は朝早くから我が家にやってきた。この前屋敷にやって来たルカさんのみを連れて。 ところで、ルカさんの顔が青いのが心配なのだけど、どうしたのかしら? こちらの様子を伺っているというか、なんと言うか。「先日ぶりですな、皇帝陛下? ――随分と娘と仲睦まじいようで」「エキャルラット侯爵、どうしてそんな芝居がかった話し方を?」 「はぁ、その言葉そっくりそのままお前に返すよ」とあきれたように話す父と、皇帝陛下。 二人はかなり前からの知り合いらしく、お互い微笑みながら握手を交わす。 一見したら友人同士握手をするというなんともない風景。 しかし、父よ。そんなにミシミシと音が鳴るぐらい握ったらだめだ。このままでは彼の手の骨が粉砕してしまう。「あ・な・た。そんなに長く握手をしていたら皇帝陛下がお困りになるでしょう? 申し訳ございません、皇帝陛下。よく言って聞かせますから」  そんな父の様子を母が見逃すわけがなく、扇子で父の大きな背中を小突く。パシーンと軽快な音があたりに響いた。 さすがの父も母の小さな背に虎でも宿っているような気配に引き下がる。 その獅子のような体は縮こまり、目には涙が浮かぶ。 相変わらずお母さまに完全に尻に敷かれているわね、お父さま。「あ、ありがとう、エキャルラット夫人。それで、侯爵はそのままで大丈夫なのか?」「どうぞ、お気になさらず。少し意地を張った彼が悪いのです」 母はぴしゃりと言うと、彼は「そういえばそうだった」と何かを思い出すように笑う。「そういえば、前ルイーズと手合わせをしてみたいと言っていましたでしょう。ちょうどいい機会ですからどうです?」 ――え? どうなったらそんな話になるの。 母が軽快に発した言葉に動揺を隠しきれない。 もともとどこかずれているとは思っていたけど、ここまでとは思わなかった。 お願いですから、そんな「散歩でもします?」というノリで言わないでください。 おかしいな。母は外から嫁いで来たはずなのに、この場にいる誰よりも戦いに飢えているような気がする。逆に、お父さま
last updateLast Updated : 2026-08-29
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第12話 あなたに伝えたい気持ちを剣に乗せ

「それでは、先に攻撃を仕掛けさせてもらおう」 風を裂く音が耳に響く。先に仕掛けたのは陛下だった。 その筋肉質で太い腕から繰り出される低く重い一撃。それはすぐさま私の喉元に迫ろうとする。「最初から随分と飛ばしますね、陛下?」「ふっ、小手先の技を使っていてはどうにもならないからな。とはいえ、この程度の技なら軽くいなすというのか、さすがだ」 本当に笑えない。どう見えたら私が技を軽くいなしているように見えるんだ。 ――私の言動に余裕があるようにでも見えたのか? 確かに、今陛下の一撃を剣で相殺した。 彼の力強い一撃を何とか跳ね返せたけど、その代償に少しの痺れを感じる。 腕の耐久力が追い付かなかったのだろう。 その痺れは確実に私の集中を削いでいく。 うーん、これはあんまりよくない。長期戦を覚悟していたけど、仕方がない。「こちらも全力でやらねば無作法ですよ……ね!!」 力で勝てないのなら技を、技でも不十分なら速さを。 余計な情報を排除し、それらに全ての意識を集中させて、彼の急所に叩きこむ。 相手の隙を縫うように、粘着質で嫌味に感じる一撃を。「これは……ハハッ、面白いではないか」  どうしても、女と男では力の差というものが如実に出てしまう。 特に彼のように鍛錬を積んだ男と、私のような書類仕事ばかりしてろくに動いていない女ならなおさらだ。 でも、そんな前提条件を受け入れるつもりは毛頭ないし、つまらないことだ。「はぁ、はぁ……そう簡単に行くものでもないですね」「息が上がっているぞ。もしかして、もうくたばったのか?」「そうですね。ここまで動くのは久しぶりなもので。でも……」 余裕も意地も何もかもを無くしてからが本番でしょう?戦いというのは。 お互いに息が上がり、体力の限界が明確に見え始める。 今、私
last updateLast Updated : 2026-08-31
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第13話 帝国へ発つ

 皇帝陛下に返事をした3日後、彼の帰国と共に私もフリーギドゥム帝国へ向かうことになった。「ルイーズ、帝国でも元気にやるのよ。困ったときにはいつでも連絡して頂戴」「えぇ、お母さま。精一杯励ませていただきますわ。……それよりも、お父さまは大丈夫ですか?」 ニコニコと優し気な笑みを浮かべる母と、目じりを赤くして無言で泣く父。 彼女は「すぐに立ち直るわ」と、鈴を鳴らすような声で笑っていたけど、悔しげな顔で泣く父に思うところはないだろうか。「大丈夫だ。……ここのところ涙腺が少々緩みがちなだけだ。本当に大きくなったな、ルイーズ」 でも、ここまで私のために泣いてくれる人が私の父親でよかったと心の底から思う。「姉さん、達者でな。あいつのことに関しては任せろ。だから、何も気にせずあっちで幸せになってくれ」「ありがとう、ジョセフ。自分の人生を全うするわ。でも、あなたも無理しないでね」  いつもは硬い表情をしているジョセフも今日は微笑んでいる。 私がどれだけヴィクトルに仕事を押し付けられても、あなただけは私を支えてくれた。 他の側近たちが彼の行いを助長させる中、あなただけは私の味方だった。「それでは行ってまいりますわ、お母さま、お父さま、ジョセフ。また会うときは元気な姿で会いましょう」*「思ったよりもこちらに来るのが早かったな。家族には挨拶を十分に済ませられたのか?」 屋敷を出ると、門の前にはすでに皇帝陛下――もといイヴァン様が待っていた。「本当にもういいのか?」とでも言いたげな視線は、彼なりに私のことを気遣っているらしい。「はい。門出ですからね。しっかりと挨拶してきましたよ」「そうか、それならばよかった。家族のもとを何も言わずに去ることほど寂しいことはない」 何かを懐かしむように言う彼の瞳は憂いを帯びている。どことなく哀愁の感じる横顔だ。  それもそうか。 彼にはそんな機会、何度もあったに違いない。 私よりも長い年月を生き、少なくない戦争に参加している時点で。 ――きっと、彼にとってはある種些細なことなのだろう。  だからと言って、その悲しさが消えないわけではない。 誰だって、失うことで傷つく心は持っているはずだ。 冷血そうに見えて以外と人間味のある彼はそれを抱えていそうだ。「陛下、今回は家族に挨拶をする機会を下さりありがとう
last updateLast Updated : 2026-09-01
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