Todos os capítulos de 冴えない転校生を放っておけなかっただけなのに、正体は世界的財閥の御曹司でした: Capítulo 11 - Capítulo 20

21 Capítulos

第11話 私だけが、冴えない転校生の本当の顔を知っている

 翌朝、教室のドアを開けた瞬間に真っ先に目へ入ったのは、昨日までなら何の疑問もなく「篠宮君」だと思っていた、ぼさぼさした黒髪と分厚い黒縁眼鏡の男子だった。窓際から二列目、私の隣の席で教科書を開いている姿は、転校してきた初日から何も変わっていないし、制服の着方も、少し猫背に見える座り方も、青いシャープペンシルを右手で回そうとしてうまく回せず落としそうになるところまで同じなのに、昨日の夕方、特殊メイクを全部落として私の前に現れた九条蓮司の顔を知ってしまった今となっては、そのすべてが別物に見えてしまう。太く見える眉の下には、本当はもっとすっきりした目元がある。荒れて見える肌の一部は人工皮膚とメイクで作られていて、黒縁眼鏡には度すら入っていない。ぼさぼさの髪だって、本人の髪ではなくウィッグ。それどころか、猫背まで意識して作っている。知ってしまった。全部。少なくとも、外見については。「……おはよう」私はできるだけいつも通りの声で言ったつもりだった。篠宮君が顔を上げる。「おはよう、高梨」声は同じ。それだけで少し安心する自分と、安心してしまうこと自体に腹が立つ自分が同時にいた。「昨日は眠れたか?」「その質問、誰のせいで眠れなかったと思ってるの?」「俺だと思う」「即答できるなら聞かないでよ」「すま――」途中で止まる。私は思わず彼を見る。「何?」「謝るのは禁止だった」覚えていたらしい。「そういうところだけ律儀だね」「では、何と言えばいい?」「別に何も言わなくていいよ。私も
last updateÚltima atualização : 2026-08-23
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第12話 「あなたの隣の男の正体を知っています」

 文化祭実行委員の仕事というのは、もっと華やかなものだと思っていたのだけれど、実際に始まってみれば、クラス全員から好き勝手に出される企画案を整理し、予算を計算し、担任から「消防法に引っかかる」「食品を扱うなら申請が必要」「廊下にはみ出す装飾は禁止」と現実的な駄目出しを食らい、そのたびに教室へ戻って話し合いをやり直すという、文化祭当日の楽しそうな雰囲気からは想像もつかないほど地味で面倒な仕事だった。「メイド喫茶は?」「去年隣のクラスがやったから被る」「お化け屋敷!」「体育館側の教室じゃないから暗くできないって先生言ってたじゃん」「じゃあ脱出ゲーム」「誰が問題作るの?」「篠宮」突然名前を振られた篠宮君が、教壇の横で企画案を書き取っていた手を止める。「なぜ俺なんだ」「頭いいから」「頭がいいことと、人を楽しませる問題を作れることは別だろう」「じゃあ高梨と二人で作れば?」「なんで私まで巻き込むの!」クラス中が笑った。文化祭実行委員になって三日目、私と篠宮君がセット扱いされることは、もはや誰も疑問に思わなくなっていた。以前だったら恥ずかしくて否定していたと思う。今も恥ずかしくないわけではない。ただ、彼が本当は九条蓮司であることを知ってしまったせいなのか、「篠宮君と高梨は仲がいい」という程度の噂が、どこか遠くに感じるようになってしまった。だって本当の問題は、そんな可愛らしいものではない。隣に座っている冴えない男子が世界的財閥の御曹司であり、その正体を学校で知っているのは今のところ私だけで、そのうえ本人から好きだと言われている。普通の女子高校生が抱える秘密としては、明らかに重量制限を超
last updateÚltima atualização : 2026-08-24
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第13話 御曹司の素顔を見た母は、娘より先に怒りました

 夜十一時を少し回った頃、高梨家の玄関チャイムが鳴った時、私はすぐに立ち上がったものの、母はそれより先に廊下へ出ていて、叔父の浩二さんまで「こんな時間に高校生の男が女の家へ来るって、それだけ聞いたら俺は追い返す立場なんだけどな」とぶつぶつ言いながら後ろについてきた。「お母さん、私が出るから」「駄目よ。あなたが『想像の百倍くらい大きな話』なんて言うから、お母さんも一応覚悟してるの。宗教の勧誘とか、変な借金とかだったら玄関から入れないからね」「篠宮君は宗教の勧誘じゃないよ」「借金は?」「たぶんする側じゃなくて貸す側……いや、今のなし」「何それ」余計なことを言った。母が怪訝そうに眉を寄せる横で、浩二さんが腕を組む。「俺としては、紗季に付きまとってる変な金持ち息子でした、くらいまでなら想定してる」私は思わず叔父を見た。「……それ、かなり近い」「え?」「何でもない」母が玄関の鍵を開ける。扉を開けた。そこに立っていた男子を見て。母は黙った。叔父も黙った。私も、昨日すでに一度見ているくせに、やっぱり一瞬だけ息を止めた。制服ではない。濃紺のシンプルなシャツに黒いパンツ、上には薄手のジャケットを羽織っているだけなのに、学校で見慣れたぼさぼさ髪と分厚い黒縁眼鏡がないせいで、同じ人だとは簡単に思えない。特殊メイクも落としている。夜の玄関灯の下で見る九条蓮司は、公園で見た時よりさらに現実離れして見えた。そして、その後ろ。少し離れた場所には黒崎さん。さらに。
last updateÚltima atualização : 2026-08-25
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第14話 御曹司の相手だと噂された私の隣には、本人が座っています

 「ねえ、みんな、これ見た?」莉奈のその一言で、それまで朝の教室に流れていた眠そうな雑談や、課題を忘れた男子が友達へノートを借りようとする声や、コンビニのパンを食べながら先生が来る前に宿題を写している子たちの騒がしさが、まるで見えない糸で一斉に引っ張られたみたいに、教室の後ろ側へ集まっていった。私は席から立てなかった。篠宮君も、動かなかった。莉奈のスマートフォンに表示されていたのは、昨夜うちの前で撮られた写真だった。玄関の灯りがあるとはいえ夜だから画像は少し粗く、私の顔もはっきりとは写っていないのだけれど、同じ学校の人が見れば制服ではなくても私だとわかるくらいには輪郭が残っているし、何より隣に立っている男子は、昨日までネット上の記事で何度も拡散されていた「世界的財閥・九条家の幻の御曹司」とよく似ている。というより。本人だ。九条蓮司本人。ただし。その本人は今。私の隣の席で、ぼさぼさの黒髪に分厚い黒縁眼鏡、太く作った眉と少し荒れて見える特殊メイクの顔で、何も知らない転校生のように黙って座っている。何なの、この状況。こんなの、下手な推理小説よりややこしい。「え、これ高梨じゃない?」誰かが言った。胸が跳ねる。「そう見えるよね」「昨日の夜?」「投稿時間は朝だけど、撮影は夜っぽい」「ていうか、この男、本当に九条蓮司?」「似てない?」「めちゃくちゃ似てる。っていうか本人じゃないの?」「高梨って九条家と知り合いなの?」次々。言葉が飛んでくる。私は。何を答えればいい。昨日まで
last updateÚltima atualização : 2026-08-26
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第15話 「婚約者がいるなんて、聞いてない」

 「九条蓮司君には、すでに婚約者候補がいる」放課後の教室で、週刊誌の記者を名乗る男がそう言った瞬間、私はその言葉の意味を理解できなかったわけではないのに、意味が胸の中へ落ちてくるまでに妙な時間がかかってしまい、文化祭の企画書を握ったまま、隣に立っている篠宮君の顔を見つめていた。婚約者。ではなく。婚約者候補。だから正式な婚約ではないのだろうし、九条家ほどの家なら、そういう話の一つや二つあっても不思議ではないと、頭のどこかでは妙に冷静な自分が考えている。でも。知っていた?私がそう聞いたのに。篠宮君はすぐに「知らない」とは言わなかった。否定もしなかった。その数秒の沈黙が、記者の言葉よりずっと正直だった。「高梨、説明する」ようやく篠宮君が口を開いた。聞いたことのある言葉。だから私は、思わず笑ってしまった。楽しいからではない。むしろ、これ以上怒りたくない時に人間が出してしまう、どうしようもない笑いだった。「それ、前にも聞いた」篠宮君の顔が強張る。「今回は――」「高梨さん」記者が割って入った。「どうやら本当に知らなかったようですね」その言い方が。腹立たしかった。この人は。私が傷ついた顔をするのを待っていた。そして今。期待通りのものを見た。「あなた」私は記者を見た。「さっきから、私と篠宮君の話に勝手に入ってきてますよね」「取材ですから」
last updateÚltima atualização : 2026-08-27
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第46話 「昨日キスした人が、今日も隣の席にいるんですけど」初デート翌日の教室は落ち着きません

  月曜日の朝、私は教室の前まで来たところで、なぜか扉を開けることができずに立ち止まっていた。 昨日までも何度となく通ってきた教室であり、文化祭の騒動の翌日ですら篠宮君と一緒に入れたのだから、今さら怖がるような理由など何もないはずなのに、今日は扉の向こうにいるたった一人の男子生徒を意識するだけで、いつもの教室が妙に入りづらい場所へ変わってしまっている。 昨日、キスをした。 付き合い始めてから初めての正式なデートへ出かけ、ホラー映画を見ながら手をつなぎ、クレープを食べ、帰る途中の川沿いで篠宮君から「キスしたい」と言われた。 私も嫌ではないと答えた。 ほんの短いキスだった。 それなのに一晩寝ても、思い出すたびに唇のあたりが落ち着かなくなる。「紗季、何やってるの?」 後ろから声をかけられ、私は飛び上がりそうになった。「美咲!」「そんな驚く? 教室入らないなら邪魔なんだけど」「入るよ。今入ろうと思ってた」「じゃあ入りなよ」「わかってるって」 美咲は私の横へ並ぶと、何となく顔を覗き込んできた。「……何?」「いや、昨日のデート楽しかったんだろうなと思って」「昨日メッセージしたでしょう。映画は怖かったけど楽しかったって」「うん。それと『手はつないだ。そこまで』って来た」「何でそこ強調するの?」「だって『そこまで』って書き方、どう考えてもその先がありますって言ってるようなものじゃん」「ないよ」「私、まだ『何があった』とも聞いてないけど?」 しまった。 美咲の口元がにやりと上がる。「紗季、もしかして昨日――」
last updateÚltima atualização : 2026-08-27
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第16話 婚約者候補から「一度、お会いしませんか」と連絡が来ました

第16話 婚約者候補から「一度、お会いしませんか」と連絡が来ました『突然のご連絡をお許しください。高梨紗季さんでいらっしゃいますか。九条蓮司さんの件で、一度お話ししたいことがあります。西園寺綾乃と申します』ベッドの上でその文章を三回読み返した私は、四回目を読む前にいったんスマートフォンを伏せ、それから十秒も経たないうちにまた手に取って、結局五回目まで読んでしまった。どう見ても意味は変わらない。西園寺綾乃。今日まで名前すら知らなかったのに、放課後に突然現れた週刊誌の記者から「九条蓮司の婚約者候補」と聞かされ、そこから数時間しか経っていない相手が、今度は本人のほうから私へ連絡してきた。「……どうして私のアカウント知ってるの」最初に浮かんだ疑問がそれだったことに、自分でも少し呆れた。九条家と同じような世界にいる人なのだから、調べようと思えば私のSNSくらい簡単に見つけられるのかもしれないけれど、だからといって気持ちのいいものではない。以前の私なら、どうしただろう。たぶん一人で悩んだ。返事をするか、無視するか、検索して相手のことを調べるか、それでも答えが出なくて美咲へ相談するかもしれない。でも今は。スマートフォンを持ち直し、篠宮君とのメッセージ画面を開いた。『起きてる?』送信。一分もしないうちに既読がついた。『起きてる。どうした?』早い。この人、私から連絡すると毎回反応が早すぎる気がする。『西園寺綾乃さんから連絡来た。』送った瞬間。既読。そして。十秒。二十秒。返信が来ない。代わりに。
last updateÚltima atualização : 2026-08-28
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第17話 世界的財閥の総帥に「孫から離れろ」と言われると思っていました

 「祖父が、高梨に会いたいらしい」昼休みの教室で篠宮君からそう言われた私は、箸でつまんでいた卵焼きを弁当箱へ戻し、たぶん自分でも相当嫌そうな顔をしながら、隣に座っている冴えない転校生の顔をしばらく見つめてしまった。つい先日は婚約者候補の西園寺綾乃さんと会ったばかりで、その前には記者が学校へ入り込み、さらにその前には篠宮君の本当の顔と本名を知らされているのだから、普通なら一か月どころか一年くらいかけて少しずつ起きてもいいような出来事を、ここ最近の私は一週間単位で浴び続けている。「……篠宮君」「何?」「九条家って、順番に一人ずつ私へ会いに来る決まりでもあるの?」「ない」「最初に美玲ちゃんが勝手に来たでしょう。その次に西園寺さんから連絡が来て、今度はお祖父さん。次は誰? お父さん?」「父はできれば最後にしたい」「否定しないんだ……」深いため息が出た。美咲が少し離れた席からこちらを見ていたけれど、最近は私と篠宮君が小声で何か話していても、無理に聞こうとはしなくなった。ありがたい。同時に、申し訳ない。でも今は、この話を美咲へ説明するところから始めたら、昼休みどころか放課後まで終わらない。「会いたいって、どういう意味?」私は声を落として尋ねた。篠宮君はスマートフォンの画面を見せようとして、一度手を止める。「見せてもいい?」「そこまで確認しなくてもいいって前にも言ったでしょう」「でも祖父からの連絡だ」「私に関する内容なら見たい」「わかった」最近の私たちは、こんなやり取りが増えた。以前なら篠宮君は「必要だから」と
last updateÚltima atualização : 2026-08-29
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第18話 「篠宮蓮の正体を知っています」文化祭のアカウントに届いた一通

 九条家の内部から、篠宮君が通っている学校の情報が漏れた可能性がある。そんな話を聞いた翌朝だというのに、学校へ来てみれば教室の黒板には大きく『文化祭まであと十九日!』と書かれ、その周囲には誰が描いたのかわからない猫やケーキやコーヒーカップの落書きまで増えていて、九条家の後継者争いだの情報漏洩だのという物騒な言葉とは、あまりにもかけ離れた高校生らしい一日が始まろうとしていた。私は、その落差に少しだけ救われていた。「高梨、おはよう」いつもの隣の席から、いつもの冴えない顔をした篠宮君が声をかけてくる。「おはよう。……昨日、眠れた?」「二時まで黒崎と話していた」「それ、眠れたって言わないよ。というか高校生が夜中の二時まで大人と機密情報について会議するのやめなよ、朝から数学の小テストあるんだから」「数学の小テストなら問題ない」「そういう問題じゃないし、成績が良ければ睡眠不足でもいいという理屈にはならないからね」私が呆れて言うと、篠宮君は少しだけ困ったように黒縁眼鏡を押し上げ、それから机の中から例の青いシャープペンシルを取り出した。「これがあるから大丈夫だ」「三本百円のシャープペンシルに、睡眠不足を治す能力はないよ」「高梨にもらったものだから、多少は集中できる」「そうやって普通の文房具に変な能力を付け足さないで。メーカーさんも困るから」「メーカーには迷惑をかけていないと思う」「そういうところを真面目に返すのが篠宮君なんだよね」いつもの会話をして、少し笑う。それだけで、昨日から胸の奥にあった重いものが、ほんの少しだけ小さくなる。九条家の内部に、篠宮君の居場所を外へ漏らした人間がいるかもしれない。怖い。でも、私
last updateÚltima atualização : 2026-08-30
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第19話 文化祭を守るため、担任にだけ「彼の正体」を話すことになりました

 文化祭まであと十八日、と黒板の隅に大きく書かれた数字を見上げながら教室へ入った私は、鞄を自分の席へ置くより先に、隣の篠宮君が明らかに寝不足らしいことに気づいた。 特殊メイクのおかげで顔色そのものは普段とさほど変わらないはずなのに、最近の私は、分厚い黒縁眼鏡の奥にある目の動きや、返事をするまでのほんのわずかな間まで気にするようになってしまったらしい。例の青いシャープペンシルを指先で持ったまま、ぼんやり黒板を眺めている彼へ近づき、私は机へ手をついた。「篠宮君、昨日ちゃんと寝た?」「寝たよ」「何時?」「二時前くらい」「それを高校生の世界では『ちゃんと寝た』とは言わないの。昨日も黒崎さんと九条家の情報漏洩について話してたんでしょう?」「黒崎と話していたのは零時半までで、そのあとは送られてきた資料を読んでいただけだから、会議をしていたわけではない」「会議じゃなければ夜更かししてもいい、みたいな理屈を持ち込まないでよ。今日は文化祭の全体会議もあるし、放課後には衣装の仕上げだって残ってるんだから、途中で眠くなって使いものになりませんでした、じゃ困るんだよ」 私が呆れて言うと、篠宮君は少しだけ目元を緩めた。
last updateÚltima atualização : 2026-08-31
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