เข้าสู่ระบบ高校二年の春、平凡な女子高生・高梨紗季のクラスに、ぼさぼさ髪に黒縁眼鏡の冴えない転校生・篠宮蓮がやって来た。校内のルールにも疎く、何かと困っている彼を放っておけず世話を焼くうちに、紗季は不器用な優しさに惹かれていく。けれど蓮の地味な姿はすべて偽装だった。特殊メイクの下に隠されていたのは、モデル級の美貌と、世界的財閥・九条グループ後継者という正体。家柄や財産ではなく“冴えない自分”を好きになってくれた紗季に、蓮の想いは次第に甘く重くなっていく。正体を隠した御曹司と普通の女子高生が織りなす、秘密だらけの学園溺愛ラブストーリー。
ดูเพิ่มเติม四月だというのに、その日の雨は妙に冷たかった。
朝から降り続いていた細い雨が教室の窓を白く曇らせ、二時間目が始まる少し前になっても制服の肩を濡らした生徒たちが「寒い」「髪終わった」「今日体育あるんだけど」と騒いでいる中、担任の佐伯先生が見慣れない男子生徒を連れて教室へ入ってきた。
「はいはい、一回静かにしろ。聞いてると思うけど、今日からこのクラスに転校生が入る」
その一言で、教室の空気が変わった。
転校生。
しかも男子。
女子たちがわかりやすく背筋を伸ばし、男子たちは男子たちで「イケメンだったら面倒だな」などと勝手なことを言いながら前を見る。
私もシャープペンシルを置いて、何となく顔を上げた。
そして。
――あ。
と思った。
別に、悪い意味ではない。
ただ、教室のあちこちから上がった期待の空気が、ものすごい勢いでしぼんでいくのがわかっただけだ。
「篠宮蓮です」
転校生は低い声でそう言って、軽く頭を下げた。
ぼさっと伸びた黒髪が目元にかかり、その奥には分厚い黒縁眼鏡、肌も少し荒れて見えるし、眉毛も妙に太い。背はかなり高いのに猫背だからか格好よく見えず、制服もサイズが合っていないのか肩回りがどこか野暮ったかった。
少なくとも、少女漫画に出てくるような「教室中が息を呑むイケメン転校生」ではない。
隣の席の美咲が、私にだけ聞こえる声で囁いた。
「期待した私の二十秒返して」
「勝手に期待しただけじゃない」
「だって転校生よ? しかも四月の途中って、何かあると思うじゃん」
「何かって?」
「海外から帰ってきた財閥の息子とか、人気俳優がお忍びで通うことになったとか」
「少女漫画の読みすぎ」
「紗季は夢がないなあ」
「朝から数学の小テストがある日に夢なんか持てないよ」
小声でやり取りしているうちに、先生が座席表を見ながら教室を見回した。
嫌な予感がした。
なぜなら、私の右隣だけが空席だったからだ。
「篠宮、お前は高梨の隣な。高梨、悪いけど教科書なんかまだ全部揃ってないから、しばらく見せてやってくれ」
「はい」
反射的に返事をした直後、美咲が口元を隠して笑った。
「よろしく、世話係」
「先生、そういう言い方してないから」
私が睨むと、美咲は楽しそうに肩をすくめた。
転校生――篠宮君は、周囲から向けられる好奇の視線を気にしているのかいないのか、無表情のまま私の隣へ歩いてきた。
近くで見ると、やっぱり背が高い。
椅子を引く時の手も、指が妙に長かった。
「高梨紗季です。よろしく」
とりあえず挨拶すると、彼は一瞬だけ私の顔を見た。
眼鏡のレンズ越しだからよくわからないけれど、思ったより目が綺麗だった。
「……よろしく」
「教科書、数学からでいい?」
「ありがとう」
「今日小テストあるけど、大丈夫?」
「小テスト?」
その瞬間、初めて表情らしいものが動いた。
ほんの少しだけ眉間に皺が寄ったのを見て、私は吹き出しそうになる。
「聞いてなかったんだ」
「聞いてない」
「範囲、二次関数」
「それなら大丈夫」
「そっか。じゃあ――」
「あの」
「ん?」
「シャープペンシルというのは、どこで買える?」
私は数秒、彼を見た。
「……シャープペンシル?」
「ああ」
「今、持ってないの?」
「ボールペンしかない」
そう言って彼が筆箱から出したのは、どう見てもコンビニで売っている物ではなさそうな、黒くて妙に重厚なボールペンだった。
ブランドには詳しくないけれど、少なくとも高校生が数学の小テストに使うような代物ではない。
「それ一本だけ?」
「ああ」
「消しゴムは?」
「ない」
「定規」
「必要なのか?」
「……篠宮君」
「何?」
「今までどうやって学生やってたの?」
すると彼は、明らかに答えに困った。
「海外にいた期間が長い」
「ああ、なるほど。それなら仕方ないか」
私は予備のシャープペンシルを筆箱から取り出して彼へ渡した。
百円ショップで三本入りだった青いシャープペンシル。
彼はそれを珍しい物でも渡されたように眺めている。
「これを押せば芯が出るから」
「それは知っている」
「よかった。そこから説明だったらどうしようかと思った」
「俺を何だと思ってる?」
初めて、少しだけ感情の乗った声だった。
「あ、普通に喋れるんだ」
「……喋れる」
「さっきから『ああ』と『ありがとう』しか言わないから」
「初対面の人間と何を話せばいいのかわからないだけだ」
「それ、かなり正直だね」
私が笑うと、彼は何か不思議なものを見るような顔でこちらを見た。
そこへ先生が入ってきたので会話は終わったけれど、数学の小テストが始まって十分もしないうちに、私は別の意味で彼に驚かされることになった。
二次関数どころではない。
十五分の小テストを、篠宮君は五分ほどで全部書き終えた。
しかも、その後は頬杖をついて窓の外を眺めている。
終わってから答案を回収した先生が、その場で彼の答案を見て眉を上げた。
「篠宮、お前、これ全部暗算したのか?」
「はい」
「途中式」
「必要でしたか?」
「必要っていうか……高校数学では書く習慣つけとけ。採点する側が怖いから」
教室に笑いが起きた。
篠宮君だけが、どうして笑われているのかわからないような顔をしていた。
変な人。
それが、彼に対する私の最初の印象だった。
けれど、本当に困ったのは昼休みだった。
購買でパンを買おうとした篠宮君が、レジの前で完全に固まっていた。
「篠宮君?」
後ろから声をかけると、振り向いた彼がわずかに安堵した顔をした。
「高梨」
「どうしたの?」
「現金が使えない」
「購買は生徒証にチャージするの。朝、説明されなかった?」
「聞いていない」
「たぶん聞いてたけど聞き流したんじゃない?」
「……否定できない」
珍しく素直だった。
後ろにはもう何人か並んでいて、店員のおばちゃんも困った顔をしている。
「あ、すみません。この人の分、私が一緒に払います」
「いい」
「いいから。後ろ詰まってるし」
「だが――」
「メロンパン一個で国家予算みたいな顔しないでよ。あとで百六十円返してくれればいいから」
私が自分の生徒証を端末へかざすと、篠宮君は何とも言えない顔になった。
たかが百六十円で、そんな顔をするだろうか。
「……借りが増えた」
「朝のシャーペン?」
「ああ」
「三本百円だから一本三十三円くらい。メロンパンと合わせても二百円いかないよ」
「金額の問題じゃない」
「じゃあ何の問題?」
「人に何かをしてもらうことに、慣れていない」
意外な答えだった。
「家族にも?」
何気なく聞いただけなのに、彼は少し黙った。
聞いちゃいけなかったかな、と思ったところで、
「家族は……少し特殊だから」
とだけ答えた。
だったらそれ以上聞くのはやめようと思った。
人には触られたくないところがある。
私はそれを知っている。
「じゃあ、篠宮君も誰か困ってたら助ければいいんじゃない?」
「それで帳消しになるのか?」
「帳消しっていうか、そうやって回ってくものでしょ。誰かに助けてもらって、別の誰かを助けて。いちいち百六十円分の恩を返済してたら疲れるよ」
「……そういうものなのか」
「たぶん」
「曖昧だな」
「十七歳に人生の正解を求めないで」
また彼の口元が少しだけ動いた。
笑ったのかもしれない。
教室へ戻る途中、美咲たちとすれ違った。
「紗季、本当にもう面倒見てるじゃん」
「違うって。購買の使い方わからなかっただけ」
「篠宮君って、高梨みたいなのがタイプだったりして」
一緒にいた女子たちが、くすくす笑う。
冗談なのはわかっていた。
だから私も笑って終わらせるつもりだった。
ところが、美咲の隣にいた女子が言った。
「でも紗季ならちょうどいいんじゃない? イケメンとか狙わなそうだし、二人とも地味でお似合いじゃん」
ほんの少しだけ、胸に引っかかった。
悪意があるようで、たぶん本人にはそこまでない。
だから面倒なのだ。
こういう言葉は。
怒れば「冗談なのに」と言われるし、笑えば自分だけが少し傷つく。
いつものように笑って流そうとした時だった。
「俺はそう思わない」
隣から低い声がした。
全員の視線が篠宮君へ集まる。
本人は相変わらず無表情だった。
「何が?」
美咲が聞く。
「高梨は地味じゃない」
私は思わず彼を見た。
女子たちも一瞬黙った。
「え、何それ。篠宮君、もう紗季のこと好きなの?」
からかうように誰かが言った。
さすがに彼も困るだろうと思った。
だから私が「違う違う」と割って入ろうとしたのに。
「まだ知らない」
篠宮君は淡々と言った。
「は?」
「俺はまだ高梨のことをほとんど知らない。だから、好きかどうか聞かれても答えられない。ただ、今日ここへ来てから俺が困っている時に声をかけたのは高梨だけだった。そういう人を、外見だけで地味だと言って笑う理由が俺にはわからない」
空気が凍った。
私まで何も言えなくなった。
そして言った本人だけが、
「教室はこっちで合っているか?」
などと真顔で聞いてくる。
「……合ってる」
「そうか」
「篠宮君」
「何?」
「そういうこと、毎回正面から言ってたら学校生活大変だよ」
「なぜ?」
「それがわからないから大変なの」
「難しいな、日本の高校は」
本気で困ったように呟くから、とうとう笑ってしまった。
「とりあえずメロンパン食べよう。せっかく買ったんだから」
「ああ」
「あと百六十円は明日でいいよ」
「いや、今日返す」
「細かいの持ってるの?」
彼は黙った。
どうやら持っていないらしい。
「じゃあ明日」
「……わかった」
その日の放課後、私は篠宮君より先に学校を出た。
だから知らなかった。
校門から二本離れた、人通りの少ない路地。
そこに朝から一台の黒い車が停まっていたことを。
高校生の送迎にはあまりにも場違いな、海外メーカーの大型高級車だった。
後部座席へ乗り込んだ篠宮蓮は、ドアが閉まった瞬間、深く息を吐いた。
運転席とは別に助手席へ座っていた黒いスーツの男が振り返る。
「お疲れさまでございました、蓮司様」
「学校ではその名前で呼ばないでくれ」
先ほどまでとは違う、落ち着いた低い声だった。
「失礼いたしました」
蓮は黒縁眼鏡を外した。
次に前髪へ指を差し入れ、慎重にウィッグをずらす。
額の際から現れた髪は、野暮ったく切られた黒髪とはまるで違い、柔らかな艶を帯びていた。
さらに小さな鏡を受け取ると、頬骨の近くへ指を当てる。
薄い人工皮膚の境目。
そこから先を剥がせば、「冴えない転校生」の顔は消える。
けれど彼は途中で手を止めた。
掌には一本の青いシャープペンシルがあった。
三本百円。
一本、およそ三十三円。
世界中にホテルを持つ九条家で育った彼が、生まれて初めて誰かから無造作に貸してもらった物だった。
「学校はいかがでしたか?」
男が尋ねる。
蓮はしばらくシャープペンシルを見つめ、それから答えた。
「変な女の子がいた」
「何か問題が?」
「逆だ」
ほんの少しだけ、彼が笑う。
教室では一度も見せなかった、整った口元に浮かぶ笑みだった。
「俺が誰なのか知らないのに、助けてくれた」
「……それは」
「しかも、メロンパンを買ってもらった」
黒服の男が黙った。
世界的財閥の後継者から、その人生でまず聞くことのない報告だった。
「明日、百六十円返さないといけない」
「その程度でしたら私が――」
「駄目だ」
即答だった。
蓮はシャープペンシルを制服の胸ポケットへ大切そうに入れる。
「俺が返す」
窓の外には、まだ春の雨が降っていた。
この時の高梨紗季は、もちろん知らない。
自分がたった百六十円のメロンパンを立て替えた相手が、世界中の誰もが名前を知る企業グループの後継者であることも。
明日返されるはずだった百六十円がきっかけで、彼女の平凡だった高校生活が二度と元には戻らなくなることも。
そして何より。
人を信じることをとっくに諦めていた少年が、この日から毎日、彼女を目で追うようになったことも――まだ、何も知らなかった。
第67話 「下手でも笑わないでくださいね」御曹司の妹の初舞台は、たった一言の台詞から始まりました プラネタリウムへ行った翌週の木曜日、昼休みになってすぐ、篠宮君が珍しく自分の席から動かないままスマートフォンを見ていた。 席替えをしてからというもの、朝は私の席まで来るし、昼休みも相沢君と食べる日以外はだいたいこちらへ顔を出すので、逆に来ないと少し気になる。「紗季」 美咲が、私の視線の先を追って小さく笑った。「気になるなら行けば?」「何が?」「篠宮君」「別に気になってないよ」「三回見た」「数えないで」「席替えしてから、紗季も結構わかりやすくなったよね」「前からこんなもんでしょう」「前は隣にいたから見る必要なかっただけじゃない?」 その指摘には少しだけ言い返しにくい。 私は弁当箱の蓋を開けながら、もう一度だけ教室の後ろへ視線を向けた。 すると今度は篠宮君と目が合った。 本人が立ち上がる。「ほら来た」「美咲、実況しないで」 篠宮君はスマートフォンを持ったまま私たちのところへ来た。「高梨」「何?」「今週の土曜日、予定ある?」「午前中は店。午後なら空いてると思うけど」「美玲の学校へ行かない?」「美玲ちゃん?」 その名前を聞き、美咲も顔を上げる。「演劇部の?」「うん」 篠宮君が少しだけ笑った。「入部した」「本当に?」「先週正式に」「よかったじゃん」
第66話 「蓮司くんって、もう一回呼んで」約束のプラネタリウムで、御曹司が子供みたいに照れました 数学の答案が返ってきた翌日、教室では他の科目の返却も始まり、朝からあちこちで喜びと悲鳴が入り混じっていた。「英語、七十八。前回より三点上がった」 美咲が答案を見せてくる。「いいじゃん」「でも現代文七十六だった。もう少し欲しかったな」「十分でしょう」「紗季は?」「英語八十三。国語七十九」「安定してるね」「数学だけ急に八十一だったから、自分でもそこが一番嬉しい」「そこは篠宮先生のおかげ?」「先生って言ったら本人嫌がるよ」「じゃあ家庭教師彼氏」「もっと嫌な言い方になった!」 私たちが笑っていると、後ろのほうから相沢君の声が飛んできた。「高梨! 英語何点だった?」「八十三」「うわ、負けた」「相沢君は?」「六十八。前より十二上がった」「すごいじゃん!」「篠宮に『長文で止まるな』って言われたのと、桜井の読み方真似したら結構いけた」「ちゃんと成果出てる」「だろ?」 少し得意そうだった。 そこへ当の篠宮君が、自分の答案を持ってこちらへやってくる。「相沢、英語六十八おめでとう」「お前は?」「九十六」「聞かなきゃよかった」「何で?」「こっちが十二点上げて喜んでんのに、お前平然と九十六出すからだよ」「でも相沢は前回よりかなり上がった」「そういう正論っぽい慰め、今日は嫌じゃない
# 第65話 「八十一点。約束だから、お願いしてもいい?」御曹司に教わった数学で目標を超えたら、逃げられなくなりました 定期考査初日の朝、私はいつもより十五分早く教室へ着いた。 試験前日に夜更かしをするとろくなことにならないと母にも篠宮君にも念を押されていたので、昨日は十一時前には布団へ入ったのだけれど、目を閉じたあとになって数列の公式が頭に浮かび、「あの問題でもし一般項が出なかったらどうしよう」「物理の単位を間違えたら嫌だな」と考えてしまい、結局いつもより寝つきは悪かった。 それでも睡眠不足というほどではない。 むしろ問題は、学校へ着いた途端に周囲の空気へ飲まれたことだった。「ここ絶対出るって!」「いや先生、昨日ここ飛ばしたから出さないでしょう」「それが逆に怪しいんだって」「英単語あと二十個しか覚えてない!」 教室中で最後の確認が始まっている。 こういう時間に新しいものを見ると余計に混乱するとわかっているのに、誰かが「ここ出る」と言えば気になるし、自分だけ知らない公式が書いてあるような気までしてくる。 私は自分の席へ座り、数学のノートを開いたところで、一度深く息を吐いた。「高梨」 声がして顔を上げる。 今日も篠宮君が教室後方の自分の席からこちらへ来ていた。「おはよう」「おはよう。今日は早いね」「高梨も」「落ち着かなくて」「昨日何時に寝た?」「十一時前には布団入った」「勉強は?」「十時半で終わり」「よし」「何、その確認」「夜中までやってないか気になった」「蓮司こそ?」「学校」「あ」 私は周囲を確認して声を落とす。「篠宮君こそ何時まで?」「十時まで。そこから風呂入って本読んで寝た」「珍しい。もっと勉強するかと思った」「莉奈に『前日に詰め込んで睡
第64話 「篠宮君、勉強会なのにケーキを三回断るのやめて」御曹司をうちの店に連れてきたら、友達まで彼の不器用さを知りました 最初の勉強会から三日後の金曜日、私たちは予定通り、パティスリー・ソレイユの二階で二回目の勉強会をすることになった。 考査まで残り十日ほど。 相沢君は数学で六十点、私は八十点という目標を決め、美咲は「とにかく後半の大問まで手をつける」、莉奈は「数学で前回より五点上げる」と、それぞれ現実的なのか少し背伸びなのかわからない目標を設定している。 そして篠宮君だけは、自分の点数目標を聞かれても「前回よりケアレスミスを減らす」としか言わなかった。「それ点数目標じゃないでしょう」 昼休み、私がそう言うと、少し離れた席からこちらへ来ていた篠宮君は困ったように考えた。「でも前回九十八だったから、百点って言うしかなくなる」「腹立つなあ」 美咲が即座に言った。「篠宮君、本当にそれ学校で大きい声で言わないほうがいいよ」「今かなり小声」「声量の問題じゃない」「じゃあ何て言えばいい?」「『俺もミス減らしたい』くらいでいい」「でも点数聞かれたら?」「そこまで細かく正確に答えなくても人間関係壊れないから」「曖昧にする?」「嘘は駄目だけど、全部開示する義務もないでしょう」 篠宮君が少し考える。「最近、その区別かなり増えた」「何が?」「嘘をつかないことと、何でも話すことは違うって」 私が一瞬黙る。 あの人は最初、私が「嘘をつかない人が好き」と言った言葉を、ずっと強く覚えていた。「そうだね」「前は、隠したら全部嘘になると思ってたかも」