祖母が突然の心臓発作で病院に運び込まれた。しかも、執刀できるのは市内随一の心臓外科医である私の夫、勝己しかいなかった。私は気が急くあまり、勝己の勤める病院へと駆けつけ、そのまま医局へ飛び込んだ。手術をお願いしようと思ったのに、目に飛び込んできたのは、病院に赴任したばかりの後輩である亜実と、親しげに顔を寄せ合って話す勝己の姿だった。割って入った私に、勝己は露骨に苛立ちを見せた。「理和、俺と亜実は同じ医局のただの先輩後輩だって何度も言っただろ。いい加減、大人になれよ。それを、わざわざ病院まで押しかけて、おばあちゃんが死にかけてるなんて嘘をつくとはな」隣に立つ、同じく白衣姿の亜実も、いかにも無垢な顔で私を見つめてきた。「そうですよ、理和さん。おばあ様に本当に何かあったなら、この病院には先生方がたくさんいらっしゃるじゃないですか。わざわざ忙しい先輩を呼び出さなくても……私と先輩が親しくしてるのが妬ましいのは分かりますけど、こんな嘘までついて先輩を騙そうとするのはさすがにどうかと思います」その言葉に、勝己の顔つきはますます険しくなった。私は慌てて言葉を継いだ。「違うの、本当に容体が急変して……このオペができるのは、この病院であなただけだって……」「なら、死なせておけばいい」耳を疑った。だが勝己の顔には、微塵の躊躇いもなかった。「理和、いい加減その卑しい嫉妬と心の狭さをどうにかしろ。もう俺に構うな」そう言い放つと、勝己はくるりと身を翻し、亜実に向けては打って変わって甘い声を出した。「行こうか。今日は君の初めての執刀だ。俺がついていてやる」あまりの温度差に、心が凍りつくようだった。だが今はそれどころではない。屈辱を呑み込んで、私は必死に勝己の前に立ちはだかった。「勝己、本当なのよ!おばあちゃんの容体は本当に危ないの。あなたが行かなかったら、絶対に後悔するわ!」勝己は苛立たしげに私の腕を振り払い、冷たく吐き捨てた。「お前のおばあちゃんだろ。俺のじゃない。何かあったとしても、毎日縁起でもないことばかり言っているお前のせいだろ」勝己はもっともらしい口調で続けた。「それに俺は医者だ。俺にとって患者はみんな平等なんだよ。お前のおばあちゃんが手術が必要だからといって、ほかの患者は後回しにしていいのか?」その拍
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