「春花(はるか)、野坂さんの息子さんが近いうちに帰ってくるそうなの。あなたと年も近いし、一度会ってみない?」タブレットの画面をなぞっていた私の指が止まった。ビデオ通話の向こうに映っているのは、養母だった。私が何も答えずにいると、彼女はさらに説得を続けた。「大学の先生をしていて、若いのに将来有望なんですって。顔立ちも素敵らしいわよ」断ろうと口を開きかけたとき、画面の向こうから別の声が聞こえてきた。「またそんなくだらないことを......」駿斗だった。苛立ちを隠そうともしない彼の口調に、それまで黙っていた養父が腹を立てた。「口を慎め!」小さく鼻で笑う声が聞こえてくる。「何だ、その態度は!」家の中で言い争いが起きるのはいつものことだった。私は再びタブレットへ視線を戻した。画面には、最近流行しているウエディングドレスがいくつか表示されている。「春花、今週末に会うというのはどう?」向こうがようやく静かになると、養母は私の顔色をうかがうように尋ねた。「どうせ行かないだろ」駿斗の冷ややかな声がした。彼は養母の後ろに座っており、画面の隅にその姿が映っていた。駿斗は、目を引くほど整った顔立ちをしている。かつての私は、その顔にどうしようもなく心を奪われていた。彼を前にすると、嫌だの一言すら言えなかったほどだ。「でも春花、まだ何も言っていないじゃない」養母が不満そうに振り返った。「紹介した人は誰も気に入らないなんて......そんなはずないわ」画面の隅で、駿斗は興味なさそうにスマホへ目を落としていた。以前の私なら、またあの元カノのSNSを見ているのではないかと勘繰っていただろう。けれど、今はもう違う。養母は眉をひそめ、駿斗を急き立てた。「暇なら自分の部屋に帰りなさい」しかし珍しく、駿斗は言い返すことも、素直に2階へ上がることもしなかった。養母がためらいながら、もう一度口を開こうとする。私はかすかに笑って言った。「お母さん、その必要はないわ」「やっぱりな」駿斗が淡々と言った。「私、好きな人がいるの」「ありきたりな嘘だな」駿斗は馬鹿にしたように笑うと、スマホをしまい、立ち上がって2階へ向かった。私が彼を好きだと、駿斗は確信している。き
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