Home / 振り向いた先に、彼がいた / Chapter 11 - Chapter 12

All Chapters of 振り向いた先に、彼がいた: Chapter 11 - Chapter 12

12 Chapters

第11話

将吾は、手のひらを少し擦りむいているだけだった。「俺は平気だよ」彼は笑顔で私を見つめた。そこでようやく、私は駿斗へ目を向けた。彼はかなりの怪我を負っていた。腕にも脚にも包帯が巻かれている。駿斗は私を見つめ、必ず自分の味方をすると確信した口調で言った。「俺はこんな目に遭わされたんだぞ。お前はこんな男と付き合うのか?」私は将吾を振り返った。彼は何か言おうと口を開いたものの、結局何も言わなかった。そのまま目を伏せ、まるで判決を待つ罪人のように立っている。以前の私なら、駿斗がどんな騒ぎを起こしても、必ず彼の後始末をしていた。けれど、今はもう違う。私の愛情は、愛する価値のある人に注ぎたい。「彼が、理由もなくあなたを殴るはずがないでしょう?あなたが彼の会社へ押しかけて騒がなければ、殴られることもなかったはずよ」将吾は、褒めてもらった子犬のようだった。その瞳が一気に輝く。彼は駿斗を見ると、勝ち誇ったように眉を上げた。私はおかしくなり、将吾の手を取った。「行こう」背後から駿斗の声が聞こえた。「......俺がこんなに怪我してるのに、面倒も見てくれないのか?」私は振り返らず、病院の入口で目を赤くして立っている未鈴を見た。「あなたの面倒を見てくれる人なら、ほかにいるでしょう」――お正月の家族の集まりは、私が将吾を正式に恋人として柳井家へ連れていく初めての機会だった。彼はひどく緊張していた。前の晩から、柳井家へ行くときはグレーと黒、どちらのネクタイを締めるべきか悩んでいたほどだ。「もう......お父さんとお母さんに会うのは、初めてじゃないでしょう?」「でも、君の恋人として会うのは初めてだから。やっぱりきちんとしておきたいんだ」翌日、彼はグレーのネクタイを選んだ。それは、私が買ってあげたものだった。食卓では、駿斗が険しい顔で誰とも口を利こうとしなかった。一方の将吾は、次第に口数が増えていった。養父とも楽しそうに話が弾んでいる。「春花、将吾さんとの結婚式の準備はどうなっているの?」養母が尋ねた。「ほとんど終わってるよ。あとは衣装を決めるだけ」「そう。二人が幸せに暮らしてくれることが、何より大切だからね」私は笑って頷いた。「駿斗から聞
Read more

第12話

「春花は物じゃない。そんなふうに賭けの対象にするべきじゃない」「は。賭けるのが怖いだけだろ。何年も俺だけを好きだった女だぞ。今はお前を好きだと、本当に言い切れるのか?」「たとえ俺を好きでなくても、俺は彼女を幸せにする」一つの人影がバルコニーを離れていった。私が洗面所から部屋へ戻ると、将吾がベッドの端に座っていた。「どこへ行ってたの?」捨てられた子犬のように、寂しそうで不安げな顔をしている。「将吾さんは甘えん坊さんだね」私が言うと、彼はわずかに唇を開き、傷ついたような目をした。私は笑って言葉を付け加えた。「でも、そういうところが好き」彼はほっと息をついた。私は顔を寄せ、彼の唇にキスをした。将吾は、いつもどこか不安を抱えている。だからこれからは、好きだと何度でも伝えよう。今日からずっと。――結婚後、私と将吾は穏やかに暮らしていた。朝は一緒に朝食を取り、それぞれ仕事へ向かう。夕方は二人で家の近所を散歩した。夜はソファで寄り添い、恋愛映画を見る。けれど最近、彼の会社で何か問題が起きているようだった。何日も続けて帰りが遅く、酒の匂いを漂わせて帰宅していた。一人で映画を見てもつまらない。私は会社のメールを開き、仕事を片づけることにした。時間はあっという間に過ぎた。11時になっても彼は帰ってこなかった。私はあくびをしてノートパソコンを閉じた。そのとき、スマホが鳴った。――将吾だ。私は電話に出た。「寝てた?」「まだ。ちょうど寝ようと思ってたところ」「俺が何時に帰るのか、少しも気にならないの?」電話の向こうから、わずかに拗ねたような気配が伝わってきた。「私、将吾さんを信じてるから」「でも、同僚はみんな奥さんから早く帰ってこいって連絡が来てるのに、俺だけ何もない」「酔ってるの?」「ほんの少しだけ」まるで子どものような口調に、私は思わず笑みを浮かべた。「早く帰ってきて。温かいはちみつレモンを作ってあげるから」将吾の声が少し遠くなった。どうやら同僚に話しかけているらしい。「妻が早く帰ってこいって言ってるから、俺は先に帰るよ」「あの野坂社長が、奥さんの尻に敷かれてるんですか?」「仕方ないだろ。うちの妻は寂しがり屋だから
Read more
PREV
12
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status