渚はレモンティーとチョコレートケーキを注文した。2人で初稿にざっと目を通したあと、渚は静かにケーキを食べ始める。そこそこボリュームのあるケーキをすっかり平らげても、まだ少し物足りない。その様子に気づいた浩之は、自分の前に置かれていた手付かずのケーキを、そっと渚のほうへ押し出した。「よかったら、どうぞ。僕、甘いものはそんなに得意じゃないので」てっきり断られると思っていた浩之だったが、渚は素直に「ありがとうございます」と言うと、ケーキを食べ始めた。浩之は思わず目を丸くする。渚があっという間にケーキを食べ終えると、その視線に気づいた。「……あの、どうかしましたか?」浩之は少し気まずそうに笑った。「いえ……女性は皆さん、体型を気にして食事を控えたりするものだと思っていたので。こんなに美味しそうに食べる方を、初めて見ました」渚が黙ったまま自分を見つめていることに気づき、浩之は慌てて言葉を付け足した。「あ、すみません。変な意味ではありません。ただ……食べている姿がとても可愛らしいなと思っただけで。もちろん、女性の体型について僕がどうこう言うつもりはありません。自分の体ですから、好きなようにするのが一番だと思っていますし」必死になって弁解する浩之がおかしくて、渚は思わず吹き出した。「ふふ、誤解していませんよ。実は私事なんですが、最近、妊娠していることが分かりまして。どういうわけか、無性に甘いものが食べたくなることがあるんです」「えっ……妊娠、ですか?」浩之は驚きのあまり、口に含んだばかりのレモンティーを吹き出してしまった。「……っ、すみません」慌てて口元を押さえたものの、むせて何度も咳き込む。渚は驚いて、すぐにティッシュを差し出した。「大丈夫ですか?驚かせてしまいましたよね」「いえ……大丈夫です」浩之はしばらく咳をしてから、ようやく呼吸を整えた。そして、何と声をかければいいのか迷うように、少し言葉を選んでから口を開く。「ただ……霧島さんがすでにご結婚されていることが、少し意外だったもので。それに、妊娠中なのに責任者としてお仕事を続けているんですよね。大変だろうなと思っただけです」その目には、隠しきれない落胆が浮かんでいた。それを悟られないようにするかのように、言葉もいつになく慎重だ
Read more