部屋に戻ると、私は必要な書類や身分証明書を一つずつ揃え、バッグに詰め込み、退学手続きをしに出かけようとした。背後から、父の困ったような声が聞こえてきた。「安奈ちゃん、運転手に送らせて学校に何しに行くんだ?言っただろう?入学推薦枠を清音に譲った分は、父さんがちゃんと埋め合わせるって……」また、同じ言葉だった。私は振り返ることも、返事をすることもしなかった。バッグを強く握りしめ、そのまま足を速めた。玄関まで来たところで、ちょうど運転手が車を回してきた。私が乗り込むと、父も後から乗り込んできた。父の目に浮かんだ心配が本物なのは、分かっていた。でも、それ以上に、私が何か取り返しのつかないことをして、清音の推薦枠に影響を及ぼすことを恐れているのだろう。私は心の中で苦笑し、唇を固く結んだまま何も言わなかった。車内は、重苦しい静けさに包まれた。しばらくして、父が先に口を開いた。声はひどく優しかった。「安奈ちゃん、お前ももう大人なんだから、少しは分別を持ちなさい。妹にはもう少し譲ってやるんだ。今回は父さんが自分で決めて、推薦枠をあの子に譲ったんだ。前からコンサートに行きたがってただろう?父さん、もうチケットを取ったぞ。前のほうのVIP席だ。だから、もう駄々をこねるのはやめてくれないか?」でも、私、芸能人とかコンサートとかには興味ない。コンサートに行きたがっていたのは、清音だ。指先が掌に食い込む。痛みで息が苦しくなるほどだった。「車を止めて!」私の掠れた声が車内に響いた。運転手が戸惑ったように父を見る。「私が止めてって言ってるの!」私は声を荒らげ、ドアロックに手をかけた。車がまだ完全に停まりきらないうちに、ドアを開けて飛び出した。頭の中は、とにかくここから逃げたいという思いでいっぱいだった。すれ違うバイクの存在など、まったく目に入っていなかった。次の瞬間、反応する間もなく、父に腕を掴まれて引き戻された。父の腕には、一本の切り傷が走っていた。裂けた皮膚から赤い肉が覗き、目を背けたくなるほど痛々しい。父はまだ驚きの表情を浮かべたまま、真っ先に私の肩を掴み、頭の先から足元まで確認した。「安奈ちゃん、大丈夫か?怪我はないか?」胸の奥が、きゅっと痛んだ。父
Read more