屋敷の頑丈な鉄門が打ち破られる轟音に、はっと我に返った。慌てて外へ飛び出そうとする母を自室へ引っ張り込む。鍵をかけ、息を切らしながら、母と二人で重厚なクローゼットを扉の前まで押しやった。「枝里(えり)、何してるの?家には護衛がいるでしょう。何をそんなに怯えているの?」母は戸惑いながら私を見つめる。けれど、その目にはもう怯えが浮かんでいる。母はまだ知らない。兄が愛してやまない水野菫(みずの すみれ)のために、護衛を全員連れて行ってしまったことを。「お母さん、兄さんは護衛を全員連れて行ったの。今、この家には私たち二人しかいないのよ!」私は歯を食いしばり、力の限りクローゼットを押した。クローゼットは耳障りな音を立てながら、床に深い傷を刻んでいく。母は言葉を失った。兄が、そんな無謀なことをするはずがないと思っているだろう。藤原家が並の家ではないことくらい、兄だってよく分かっている。護衛を全員外すなど、本来ありえないのだ。それでも、私の青ざめた顔を見て、母は信じるしかなかった。「早く!颯太に電話して、すぐに帰ってくるように言って!」母は震える声で急かした。私は何も言わず、クローゼットの向こうをじっと見つめたまま、震える指で警察に電話をかけた。状況と住所を手短に伝えた。最初から兄――藤原颯太(ふじわら そうた)に頼るつもりはない。前世では、兄の帰りが遅すぎた。母は適切な手当ても受けられず、そのまま二度と目を覚まさなかった。電話を切ると、胸の奥に嫌な不安が広がっていく。ここ数日、大雪のせいで道は閉ざされている。この屋敷は山の中腹にあり、最寄りの警察署も遠い。警察が来るまでに何が起こるか。想像しただけで、背筋が凍った。ドンッ!激しい衝撃とともに、扉が大きく震えた。私は反射的にクローゼットへ身を押しつけ、全体重をかけた。波のような恐怖が押し寄せてくる。ちょうどその時、母がかけていた電話に、ようやく兄が出た。「颯太、早く帰ってきなさい!家に……誰かが押し入ってきたのよ!」母の声は半ば泣き声だった。スマホの向こうから、兄の苛立った声が返ってきた。「母さん、いい加減にしてくれ。今、菫の誕生日を祝ってるんだ。明日になったら帰る」「嘘なんかじゃない!本当なのよ!早く帰ってきて!このま
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