それは、今でも続いている。生活こそ裕福になったが、蓮花には"プレゼント"と称した現物支給。生活費以外の金は殆ど持たされない生活だった。非常勤研究員として籍だけ残し、過去の研究案件や監修で僅かな報酬は入るが、今の生活と釣り合うほどの額ではない。透についた嘘──旭飛研究所のフロントレディと言う身分。更に今は休職中。当然、度々不定期な収入があるとすら言えないでいた。「いつまでも……このままじゃいけないよね……」研究員だった事を話すか、ASTER-1が危険であることを知っている事を話すか。脳を掻き回されるような酷い頭痛が襲ってくる。「……」鎮痛剤を取るために無言で立ち上がる。すると、義母のマンションの隣のビルに目が止まった。いつも点灯しているはずの航空障害灯が消えている。「……停電…… ? 窓も暗いわ……」ぼんやりと窓の外を見つめる蓮花のそばに、入浴を済ませた透が身を乗り出してきた。「なにか見えるのか ? 」「あ、うん。あのビル、屋上のライトが消えてる。飛行機が来たら危ないかなって」「あー。でもこの辺り全体が高い建物ばかりだし、あそこだけピンポイントで低空飛行しないだろ」「ん。それもそうね。ねぇ、透さん。旭飛に行って来てもいい ? 」透は信じられないとばかりに蓮花を見やる。「こんな夜にか ? 」「今度、お世話になった人の送別会があるらしいんだけど、丁度わたしたちのパーティの日なのよ」一人になりたかった。蓮花にとって旭飛研究所こそが自分を偽らずに住む故郷となってしまっていた。「送別会に出れないことなんて、ままあるだろ」「ええ。でも、わたしも一応、『鈴峯研究所の社長夫人』なわけだし。心象よくしておかないと。透さんにとっても必要だと思うわ」「ふむ。
Última actualización : 2026-10-06 Leer más