Masuk捨てた妻の正体は天才研究者 !? 地球外生命体の感染から人々を救え ! 蓮花の亡き養父を見捨て、愛人の桐生 杏に大金を注ぎ込んでいた夫の鈴峯 透。 蓮花が休職中だった旭飛研究所と共同開発した宇宙探査機が回収されると、そこには未知の生命体が。透は自分の鈴峯研究所で独占研究してしまう。しかし独自進化を遂げて人体へ侵食してしまう事を知ると隠蔽してしまう。 拡大する理性無い街人。混乱の最中、蓮花は巨大医療グループのCEO 御影 燎と偶然再会する。蓮花がワクチン精製出来ることを想定している燎は研究施設の提供を申し出る。 ワクチン精製の壁──逃げ出した夫との決別を皮切りに蓮花は再びR.takigawaとして燎と運命を共にする。
Lihat lebih banyak穏やかな青い海原に一隻の船が浮かんでいた。そこに近付く小さなボート。
ふわりとした髪を手早く纏めあげると、鈴峯 蓮花は緊張した面持ちでボートから船へ乗り込んだ。「雨宮博士 ! 」
「レン ! 来てくれたのね ! 」
作業員に混ざり、一人の白衣を纏った中年女性が顔を上げてパッと明るい笑みを浮かべた。
「久しぶり ! 結婚してから連絡無いからさぁ〜。
鈴峯社長との新婚生活はどう ? 」「ええ、彼もしっかりしてますし」
「はぁ〜♡いいわねぇ。わたしには縁遠い生活だわぁ。お養父さんは ? 」
「父は……手術が間に合わなくて……」
「え ? でも、まだ転移もしてなかったって……早期発見だったんじゃなかったの ? 」
「わたし研究資金につぎ込んだり、世界中行き来して勉強したりせいで。お金には無茶をし過ぎて……父がこんなことになるなんて」
「そう……。そうだったのね。
鈴峯会長は ? ……その……余裕があったんじゃないの ? 」「……彼も軌道に乗ったばかりですし……流石にその時はまだ」
気まずそうに話す蓮花の姿に、雨宮博士も納得するしか無かった。
「そう。大変な時期に……来てくれて良かったわ。
はぁ……わたしの彼氏はコレになりそうよ」そう言うと、雨宮博士が眼鏡のフレームを上げ、覗き窓の着いた金属ケースを見下ろす。
「これが…… !? 」
「そう」
雨宮博士と蓮花。
二人がケースの中を覗き、眉を寄せる。「我が旭飛研究所が鈴峯グループの援助を受け宇宙に放った探査ロケット。
帰還したサンプルポッドが見つかったのは、まさかの鯨の胃の中」「限界まで小型化しましたからね。鯨が飲み込むのも無理はありません。
でもこれは……」カプセルは本来、研究所へ持ち帰るまで開封しないはずだが、ケースの中にはカプセルポッドからチラチラと出入りする赤紫色の生き物がへばりついていた。
「なんだと思う ? 」
「ポッドの損壊は激しくないですね。鯨が飲み込んだだけでは開きませんし、そもそも海上に墜ちてすぐに海底へ沈む重さです」
「そう。鯨が見つけたのはタイミングなのかコレが何か……誘き寄せたりしたのかどうか。海洋学者の伊藤くんもさっきまで来てたんだけど……既知の分野では考えられないものである、としか。あの様子だと関わりたくないって感じね」
「つまり……海の生き物では無さそうですね……」
「そう言う事。それでも海で見つかったら我先に研究したがるのが普通だけど、流石の伊藤くんもドン引き。
とにかくラボに戻って、分析を進めるしかないわ。まさかこんなモノを付けて戻ってくるなんて予想してなかったし、現場は混乱してる」ケースの中で粘膜を出しながら動く奇妙な生命を見詰め不穏な空気に変わっていく。
そこへ船上員の一人が駆け寄ってきた。「雨宮博士、会長からお電話が」
「え…… ? 」
これには蓮花が驚いて顔をあげる。
「夫から ? 」
「あら、レン。会長はここに来ているのを知ってるの ? 」
「いいえ。知らないはずです。わたしがプロジェクトに関わっていたのも知らないはずですし、何より今は休職中ですし」
「……変ね……」
雨宮博士は船内に入り、数分後には顔面蒼白で戻ってきた。
「雨宮博士 ? 」
「鈴峯会長は……。これを自分の鈴峯研究所へ引き渡すように要求してきたわ」
「えっ !? これは旭飛グループの探査機ですよ ? 鈴峯研究所より設備も揃ってるのにどうして ! 」
「……契約上、共同研究の上、出資の割合から考えても断れないと思うわ。回収ポッドの中身は分配権があって、当然出資の多いところがその分を手に入れる規約もあるから」
「これは回収ポッドの中身とは言いきれませんよ。砂や石と違うんですよ ? 」
「分かってるわ。旭飛もこのヘンテコ君の存在で大混乱。サッと隠して隠蔽工作して……なんて映画みたいにはいかないものね。
特にスポンサー兼共同研究の鈴峯研究所には連絡を入れない訳にもいかず──今や鈴峯研究所の権力は恐ろしいくらい。旭飛グループに選択権は存在しないわね」「鈴峯研究所に、こんな得体の知れないものを渡すなんて……。まだ研究員も成長途中に見えます」
「レン。鈴峯研究所で現場復帰をしてみたら ? 」
「いえ……。あの、わたしは……。実は夫に旭飛グループの社員でも、事務員だったと嘘を……」
「事務員 ? ……どういうこと ? 貴女ほど優秀な研究者がどうして……」
「夫の鈴峯研究所の方針は、わたしの考え方と合わなそうだし……父の看病も優先したかったので、つい当時は嘘を……」
「そう……研究方針かぁ。これを独占する気だもの、先が思いやられるわね。
どちらにせよ……この奇妙な生命体が、地球にとって有益なものである事を願うだけだわ」「本当に全て譲るんですか ? サンプルとして少し切除して、手元に残すべきです」
「ええ。抜かりないわよ」
そう言い、雨宮博士が別のケースを開ける。
目の前のポッドの中身が、多岐に渡る数多くの試験管に厳重保管されていた。「これを付けて ! 会話ができる ! 」『社長、研究所へ向いますか ?』「まぁーさか ! あそこはSFGに明け渡す ! 宮城へ飛ばせ ! 別荘も近いし、駐屯地も近い。避難くらいさせてくれるだろ」『……む、無線で確認を取っておく方がよろしいかと』「任せる ! 飛ばせ飛ばせー ! はははは !! 」透がヘッドセットを杏と茜に手渡す。「杏、見ろよ。逃げ遅れた奴が追われてる ! リアル鬼ごっこみたいだ ! 」「怖〜い。透がいて良かった」マンションから乗せられた住人たちは、皆顔見知りだが素性までは知らない他人。透たちの様子を伺うがヘリの騒音とほぼ手ぶらで逃げてきたことで消耗しきっていた。「やだ、透 ! その白衣……なんで返さなかったのよ !?」杏がシートの上に丸め込まれた蓮花の白衣を見つけ、汚らわしい物を見るような視線を向けた。「あぁ、気付かなかったな。蓮花のではなく、御影 燎に借りたとか言っていたが……あいつにコスプレ趣味があるのは知らなかったな」「きゃはは ! 案外変態だったりして ? 白衣なんて趣味が悪いわね」「外に出たら捨てるから、そっちに置いておいて──」白衣を棚に上げようとした時 、ポケットから何かが落ちた。「うあっ、ゴミか ? 」「違うみたい。名札……じゃない ? 」杏が拾い、透と二人で見る。『旭飛研究所 生命科学部門主席研究員 / PRINCIPAL SCIENTIST滝川 蓮 / R. TAKIGAWA』「これって……」「滝川 ! R. TAKIGAWA !!? あのっ !!? どうしてこんな物を持ってるの ?! 」透がネームタグを杏からひったくる。「滝川 蓮 !? いや、確かに旭飛の研究員もしていたけど&he
「あれは……さっき階段から見えた家族だ ! 」「ASTER体が…… ! もうベランダに届きそうね」隣の火炎瓶やボウガンで応戦していたマンション住民が、危機を迎えていた。住民は高層マンションの二階で、ASTER体が重なり合えば決して届かない高さじゃない。「競技用クロスボウだ。殺傷能力は高くないし、火を投げつけるのも逆効果だな」蓮花が車を停める。燎も無言でコンテナに手を突っ込む。「あそこにいるASTER体を誘導する」「できるの ? 」「手持ちでは……これだな」燎が取り出したのは救難用フレア。発射式の信号銃だ。バシュ !!ハンドガンから打ち出された強烈な紅が弧を描いてマンション裏へと飛んでいく。ASTER体たちが視界に入るギリギリの位置で、尚且つ遠くに飛ばすように発射する。『〜〜〜── !! 〜〜〜』重なり合ったASTER体は、呻き声を上げながら慌てるように藻掻き、光源へなだれ込むようにもちゃもちゃと移動する。二階の住人は部屋の中に入ると、数分してからすぐ外へ出て来た。荷造りは済んでいたようで慌てて車にボストンバッグを詰め込むと車へ乗り込んだ。走り出す直前、サンルーフから一人の幼女がヒョコリと顔を出し、こちらを向いてぬいぐるみを持った手をゆっくり振って見せた。「良かった……。お子さんがいたのね」「パニックになるのも無理ないな。こんな事になるとは誰も思わなかっただろうし」「大変なことになったわ……。最初に夫にASTERを任せなければ……」「『元』夫だろ ?研究所か……やり方次第だな。宇宙生命体の研究所を始めたら、公表してしまった方が優秀な人材が集まることもある。けれど、静かな環境で落ち着いて、とはいかない。鈴峯社長の独占し
三十階もある階段を生身の足で駆け上がって来た事にまず見ていた全員が驚いていた。燎は息を切らせながら、蓮花の突き出した離婚届を見て口笛を鳴らした。「クールなこと、はぁ、してるねぇ ! ……はぁ、はぁ。話終わった ? 」「何しに来たんだ ! お前も乗せはしない ! 」燎が透を見てポカンとする。「『も』 ? レン、乗せて貰えないの ? 」「いいえ。拒んだだけ。その代わりにサインしてって、今……」「誰がサインするものか」不貞腐れる透に燎は小さく笑みを浮かべたまま息が整うのを待つが、何せ三十階だ。そう簡単ではない。「ん。そう。はぁ……。あ、あぁ〜、じゃあ。鈴峯社長。俺が鈴峯研究所のクリーン作業を引き受けると言ったらどうかな ? それに同意する ? 」「何故お前に研究所を ! それと離婚は別の問題だ」「それ、見せてよ」燎は蓮花から念書をひょいと取り上げると、頷きながら話し始める。「なるほど。じゃあ、尚更、同意すべきだ。SHADOW FLAREに委託することで、メリットがある。俺に責任転嫁が出来るってところさ。皆がその話を聞き、世間の目はまず俺たちに向き、叩かれ、株も大暴落だろうね」「それでもいいと言うのか ! 」「貴方次第だ。研究施設へ出入りするマスターキーと引替えにね。今持ってる ? 」「……」透は恨めしそうに蓮花を睨みつけると、万年筆を取りサインを書き上げた。「気が済んだか !クソ女 ! 」そういい、万年筆を顔面向かって投げつける。「キャ…… ! 」パシ !「危ない。顔に当たるところだった」「あ、ありがとうございます」「反射神経には自信あるんだ」燎は平然と横から万年筆をキャッチすると、透に手を差
『レン、雨宮博士と連絡がついたよ』「リョウ ! もうダメ ! ここに来ては駄目 ! 」『レン ? 』「ASTER体がマンションに入り込みそうなのっ ! 」『無事なのか ? 』「夫がヘリを手配してるけど、お義母さんを連れに別棟へ向かったの ! 」『俺はもうすぐ側に……なんだ ? 人が積み上がってる…… ! 』「逃げて ! 」『……あぁ、好きにやらせてもらう』通話が切れる。燎のことだ。上手くASTER体を躱しながらマンションから離れてくれるだろう。今は命が優先だ。蓮花は寝室のクローゼット部屋から自分の使い込んだキャリケースを引っ張り出す。中から丸めたリュックを取り出すと、キャリケースには透に言われた物を適当にドサドサと積み上げ力づくで閉める。そしてリュックを手に今度は自分の持ち物を詰め始めたところで手は止まった。「こんな時に感傷に浸ってる場合じゃ……」そう思いながらも、手に馴染むリュックの布地を見詰める。小さい穴も、擦り切れそうなベルトも、世界を歩き、未知のものに面してきた思い出がそこには残っていた。「ここには……。この部屋には……わたしが持って逃げたい物なんて何も無い……」ポールハンガーに引っ掛けた白衣を手に、空っぽになった部屋を見渡す。銀行通帳や印鑑を取り出そうと金庫を開けた時、そばにあるファイルや書類が崩れる落ちた。「もう〜。家のものと仕事の物は分けておくんだったわね……」その中から、知ってはいるが実物を手にした事のない一枚の紙切れが手元にハラリと舞い込んできた。「離婚届── !!? なにこれ…… ! 」紙を顔の前まで近付け目を見張る。そ