夫に捨てられた私は 終末世界最強の男と 人類最後の希望になりました

夫に捨てられた私は 終末世界最強の男と 人類最後の希望になりました

last update최신 업데이트 : 2026-10-26
작가:  神木セイユ최근 업데이트
언어: Japanese
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捨てた妻の正体は天才研究者 !? 地球外生命体の感染から人々を救え ! 蓮花の亡き養父を見捨て、愛人の桐生 杏に大金を注ぎ込んでいた夫の鈴峯 透。 蓮花が休職中だった旭飛研究所と共同開発した宇宙探査機が回収されると、そこには未知の生命体が。透は自分の鈴峯研究所で独占研究してしまう。しかし独自進化を遂げて人体へ侵食してしまう事を知ると隠蔽してしまう。 拡大する理性無い街人。混乱の最中、蓮花は巨大医療グループのCEO 御影 燎と偶然再会する。蓮花がワクチン精製出来ることを想定している燎は研究施設の提供を申し出る。 ワクチン精製の壁──逃げ出した夫との決別を皮切りに蓮花は再びR.takigawaとして燎と運命を共にする。

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1화

0.プロローグ〜未知の来星〜

 穏やかな青い海原に一隻の船が浮かんでいた。そこに近付く小さなボート。

 ふわりとした髪を手早く纏めあげると、鈴峯 蓮花は緊張した面持ちでボートから船へ乗り込んだ。

「雨宮博士 ! 」

「レン ! 来てくれたのね ! 」

 作業員に混ざり、一人の白衣を纏った中年女性が顔を上げてパッと明るい笑みを浮かべた。

「久しぶり ! 結婚してから連絡無いからさぁ〜。

 鈴峯社長との新婚生活はどう ? 」

「ええ、彼もしっかりしてますし」

「はぁ〜♡いいわねぇ。わたしには縁遠い生活だわぁ。お養父さんは ? 」

「父は……手術が間に合わなくて……」

「え ? でも、まだ転移もしてなかったって……早期発見だったんじゃなかったの ? 」

「わたし研究資金につぎ込んだり、世界中行き来して勉強したりせいで。お金には無茶をし過ぎて……父がこんなことになるなんて」

「そう……。そうだったのね。

 鈴峯会長は ? ……その……余裕があったんじゃないの ? 」

「……彼も軌道に乗ったばかりですし……流石にその時はまだ」

 気まずそうに話す蓮花の姿に、雨宮博士も納得するしか無かった。

「そう。大変な時期に……来てくれて良かったわ。

 はぁ……わたしの彼氏はコレになりそうよ」

 そう言うと、雨宮博士が眼鏡のフレームを上げ、覗き窓の着いた金属ケースを見下ろす。

「これが…… !? 」

「そう」

 雨宮博士と蓮花。

 二人がケースの中を覗き、眉を寄せる。

「我が旭飛研究所が鈴峯グループの援助を受け宇宙に放った探査ロケット。

 帰還したサンプルポッドが見つかったのは、まさかの鯨の胃の中」

「限界まで小型化しましたからね。鯨が飲み込むのも無理はありません。

 でもこれは……」

 カプセルは本来、研究所へ持ち帰るまで開封しないはずだが、ケースの中にはカプセルポッドからチラチラと出入りする赤紫色の生き物がへばりついていた。

「なんだと思う ? 」

「ポッドの損壊は激しくないですね。鯨が飲み込んだだけでは開きませんし、そもそも海上に墜ちてすぐに海底へ沈む重さです」

「そう。鯨が見つけたのはタイミングなのかコレが何か……誘き寄せたりしたのかどうか。海洋学者の伊藤くんもさっきまで来てたんだけど……既知の分野では考えられないものである、としか。あの様子だと関わりたくないって感じね」

「つまり……海の生き物では無さそうですね……」

「そう言う事。それでも海で見つかったら我先に研究したがるのが普通だけど、流石の伊藤くんもドン引き。

 とにかくラボに戻って、分析を進めるしかないわ。まさかこんなモノを付けて戻ってくるなんて予想してなかったし、現場は混乱してる」

 ケースの中で粘膜を出しながら動く奇妙な生命を見詰め不穏な空気に変わっていく。

 そこへ船上員の一人が駆け寄ってきた。

「雨宮博士、会長からお電話が」

「え…… ? 」

 これには蓮花が驚いて顔をあげる。

「夫から ? 」

「あら、レン。会長はここに来ているのを知ってるの ? 」

「いいえ。知らないはずです。わたしがプロジェクトに関わっていたのも知らないはずですし、何より今は休職中ですし」

「……変ね……」

 雨宮博士は船内に入り、数分後には顔面蒼白で戻ってきた。

「雨宮博士 ? 」

「鈴峯会長は……。これを自分の鈴峯研究所へ引き渡すように要求してきたわ」

「えっ !? これは旭飛グループの探査機ですよ ? 鈴峯研究所より設備も揃ってるのにどうして ! 」

「……契約上、共同研究の上、出資の割合から考えても断れないと思うわ。回収ポッドの中身は分配権があって、当然出資の多いところがその分を手に入れる規約もあるから」

「これは回収ポッドの中身とは言いきれませんよ。砂や石と違うんですよ ? 」

「分かってるわ。旭飛もこのヘンテコ君の存在で大混乱。サッと隠して隠蔽工作して……なんて映画みたいにはいかないものね。

 特にスポンサー兼共同研究の鈴峯研究所には連絡を入れない訳にもいかず──今や鈴峯研究所の権力は恐ろしいくらい。旭飛グループに選択権は存在しないわね」

「鈴峯研究所に、こんな得体の知れないものを渡すなんて……。まだ研究員も成長途中に見えます」

「レン。鈴峯研究所で現場復帰をしてみたら ? 」

「いえ……。あの、わたしは……。実は夫に旭飛グループの社員でも、事務員だったと嘘を……」

「事務員 ? ……どういうこと ? 貴女ほど優秀な研究者がどうして……」

「夫の鈴峯研究所の方針は、わたしの考え方と合わなそうだし……父の看病も優先したかったので、つい当時は嘘を……」

「そう……研究方針かぁ。これを独占する気だもの、先が思いやられるわね。

 どちらにせよ……この奇妙な生命体が、地球にとって有益なものである事を願うだけだわ」

「本当に全て譲るんですか ? サンプルとして少し切除して、手元に残すべきです」

「ええ。抜かりないわよ」

 そう言い、雨宮博士が別のケースを開ける。

 目の前のポッドの中身が、多岐に渡る数多くの試験管に厳重保管されていた。

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0.プロローグ〜未知の来星〜
 穏やかな青い海原に一隻の船が浮かんでいた。そこに近付く小さなボート。  ふわりとした髪を手早く纏めあげると、鈴峯 蓮花は緊張した面持ちでボートから船へ乗り込んだ。「雨宮博士 ! 」「レン ! 来てくれたのね ! 」 作業員に混ざり、一人の白衣を纏った中年女性が顔を上げてパッと明るい笑みを浮かべた。「久しぶり ! 結婚してから連絡無いからさぁ〜。  鈴峯社長との新婚生活はどう ? 」「ええ、彼もしっかりしてますし」「はぁ〜♡いいわねぇ。わたしには縁遠い生活だわぁ。お養父さんは ? 」「父は……手術が間に合わなくて……」「え ? でも、まだ転移もしてなかったって……早期発見だったんじゃなかったの ? 」「わたし研究資金につぎ込んだり、世界中行き来して勉強したりせいで。お金には無茶をし過ぎて……父がこんなことになるなんて」「そう……。そうだったのね。  鈴峯会長は ? ……その……余裕があったんじゃないの ? 」「……彼も軌道に乗ったばかりですし……流石にその時はまだ」 気まずそうに話す蓮花の姿に、雨宮博士も納得するしか無かった。「そう。大変な時期に……来てくれて良かったわ。  はぁ……わたしの彼氏はコレになりそうよ」 そう言うと、雨宮博士が眼鏡のフレームを上げ、覗き窓の着いた金属ケースを見下ろす。「これが…… !? 」「そう」 雨宮博士と蓮花。  二人がケースの中を覗き、眉を寄せる。「我が旭飛研究所が鈴峯グループの援助を受け宇宙に放った探査ロケット。  帰還したサンプルポッドが見つかったのは、まさかの鯨の胃の中」「限界まで小型化しましたからね。鯨が飲み込むのも無理はありません。  でもこれは……」 カプセルは本来、研究所へ持ち帰るまで開封しないはずだが、ケースの中にはカプセルポッドからチラチラと出入りする赤紫色の生き物がへばりついていた。「なんだと思う ? 」「ポッドの損壊は激しくないですね。鯨が飲み込んだだけでは開きませんし、そもそも海上に墜ちてすぐに海底へ沈む重さです」「そう。鯨が見つけたのはタイミングなのかコレが何か……誘き寄せたりしたのかどうか。海洋学者の伊藤くんもさっきまで来てたんだけど……既知の分野では考えられないものである、としか。あの様子だと関わりたくないって感じね」「つまり……海の生き物で
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1章 - 1.命日と記念日
  三年後──七月三日。 爽やかな夏風のすり抜ける空の下、蓮花とその夫、鈴峯 透《すずみね とおる》は霊園へ訪れていた。  墓石に刻まれた『滝川』とは、蓮花の旧姓であり、その墓に眠るのは三年前に病で亡くなった養父である。「お父さん……」 仏花をそばに、未だ癒えきっていない蓮花の手を解く。そして透は手提げ桶の水を掬い、持参した雑巾で綺麗に墓石を拭い始める。「ほら、綺麗にしてあげないと」 透に促され、蓮花も小石の隙間から伸びた雑草を抜き取る。「早いものだね。俺にあの時、手術費を工面する甲斐性があったら……」 そう言い、透は自分を責め続けている。「透さんのせいじゃあ……わたしがそもそも仕事に追われて……」「仕方ないさ。旭飛の社員とはいえ、高給取りの研究者達とは扱いが違うんだから」「……そう。ただのお茶汲み要員だったしね」「真面目に働いてたんだ。お父さんも文句なんか言わないさ。  それにあの時蓮花の援助がなかったら、俺も鈴峯研究所を軌道に乗せられなかった」 当時、透の立ち上げた鈴峯研究所は蓮花の貯蓄まで切り崩し、ようやく立ち上げた新進気鋭の研究所だった。  その頃同時に婚約をし、後に鈴峯研究所は見る見る間に力を付けていった。  そして例の、未知の生命体の研究が始まると一躍脚光を浴び、透自身もメディアや化学雑誌に引っ張りだこの生活を送っていた。「そう……ね。確かに、あの頃のわたしたちは全てのタイミングがズレてて……。間に合わなかった……」「人生って、そういうものなのかもな。でも、蓮花。大事なのは俺たちがお父さんの死を受け入れ、忘れないで感謝する事さ」「透さん……。そうね」 透は手を洗い流すと、蓮花の肩を抱き寄せ真っ直ぐと墓標を見上げた。「お父さん、四日後は俺たちの三回目の結婚記念日ですよ。幸せに過ごしてます。  来年の命日にも来ますよ」「うん。  お父さん、来年も来るからね」 手を合わせて二人静かに願う。  来年もこうして夫婦揃って、父の命日を過ごせる事を。 その時──聞きなれた着信音が透のジャケットから鳴り始めた。「はぁ。やれやれ、また杏のやつか」「最近頻繁ね」 液晶画面には『桐生 杏』の文字。  医薬品メーカーや研究機材販売業者など、幅広い業界にコネクションを持つ財閥令嬢だ。  透の後輩と言
last update최신 업데이트 : 2026-09-14
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2.愛のために
 透の車が走り去って行くのを手を振り見送った蓮花は、父親の墓の見えるベンチに座り、ぼんやりと菊の花を眺めた。 嫌でも考えてしまう養父の事 。 滝川 丈太郎は数多くの医学本出版で脚光を浴びた学者である。大学で教鞭を取り始めた頃、妻に先立たれ、子のいない滝川は養子として蓮花を引き取った。  その養父が進行癌で要治療になった時、蓮花は既に透の起業資金を出資したばかりだった。 ──もし、資金提供をしていなかったら ? ──滝川 丈太郎《父》は助かった….… ?  そんなifの世界線の話を考えてしまう。今でも透に資金提供したのは良かったのか ? だが、あの時期でなければ透が軌道に乗れなかった。  勿論、こんな悩みは透にも相談できない。ただこの命日になる度に、蓮花の心の奥底でモヤモヤとした気持ちが生まれる。  今更どうしようもないというのに。「── ! ──〜〜〜 !! 」 誰かが遠くで騒いでいる。  霊園のそばには遊具のある大きな公園も隣接している。  一際甲高い叫び声に、蓮花はフフッと笑った。「お墓参りに来た子供かな ? そうだよね、子供は飽きちゃうもんね」 prrrrr.prrrrrrrr♪ 蓮花のバッグから聞こえる着信音。  そのメッセージは久々に思える雨宮博士からだった。『レン、いま暇 ? 』『はい ! お元気でしたか ? 』 返信を返すとすぐに既読が付いた。『比較的テンションは高いかな。  鈴峯研究所は無事 ? 見て欲しい動画があるんだけどいい ? 』「……無事 ? 一体なんの話…… ? 」『何かあったんですか ? 鈴峯は今も稼働中のはずです。夫が今出勤しました』 雨宮博士の送ってきたメッセージに違和感を感じる。どうして鈴峯研究所の無事を気にかけるのか。「……」 透の言ったASTERの変化。  蓮花も報告せずにはいられない気持ちだった。まずは確認のメッセージを打ち込む。『三年前の例の件でしょうか ? 』 本来、こんなやり取りは許されないことだ。だが、雨宮博士もかなりの熟練だ。悪い事にはならないと蓮花は信じている。 メッセージ着信音はすぐに鳴った。『会って話せる ? 近くまで行く』「……雨宮博士が…… ? 」 彼女は殆ど外出を好まない。宅配やオークション好きで、旭飛研究所に泊まり込みの生粋の探究心優先人
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3.世界のR.takigawaとCTO 雨宮博士
「これは…… ! 」 動画の中の紫色の軟体は、分泌液を出しながら、うねるように移動していた。「見つけるの苦労したわ〜。動画サイトでうちの研究員が見かけたって言ってたんだけど、わたしが探した頃はどこも消されてて」「これ……鈴峯研究所の制服……っ」「そうなの。見てて」 夫が経営する鈴峯研究所のワッペンが付いた防護服の所員が背後にちらほら見受けられる。  どうやらASTERを観察するための固定カメラの映像のようだ。強化ガラスの中で、ASTERは側面へ登り、裏蓋にくっつき、また側面へ下り、にゅるにゅると動いていた。「ASTER-1の表記がある……」「さしずめ、これがASTER -1だとしたら、我が旭飛研究所に隠し持ってるヘンテコナメクジはASTER -0 ね。  さぁ、レン。あなたならこの恐ろしさが分かるはずよ」「……。なんだか尺からして、発見時より大きく感じます」 ASTER-1は再びガラスケースの側面に這い上がると、ピンセットを突き刺す為の上蓋にある小さな穴を探っている様子だった。「脱走をする、本能か知能がある……。空気の入る方を探っていますね。  …………これはっ ! 」 側面でASTERは触手のような物を、上蓋の穴からガラスケースの外へ伸ばした。「何をしているの ? 」 触手の先端から見えるのは、それがストローのように管状になっているということ。  しばらくクネクネと動き、その直後──ガラスケースのそばを通った研究員の一人が突然持っていた機材を落とし床に倒れ込んだ。『…… ! 』『 !! 〜〜〜っ』 音がなくても分かるほど、その映像はリアルだった。  倒れた研究員に近付いた別の研究員も同じ場所で倒れ、それを見ていた者たちが次々指示を出し始め急展開を迎える。  その頃にはASTER-1は管を戻し、ガラスケースの隅に丸まっていた。 一人の防毒マスクをした職員がASTER-1のケースを別の保管ケースへ戻したところで動画は終わった。  蓮花は無言のまま動画を巻き戻すと、最初に倒れた研究員の映ったところで静止した。 メッセージには画像も添付されていた。それは集団暴行事件と称されたニュース記事だった。見出しには『各地で発生』、『ゲームの影響か』『ホラー映画の規制見直し検討か ? 』などと書かれていた。「各地で起こ
last update최신 업데이트 : 2026-09-20
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4.ASTER - 1と透の秘め事
 水色のアクアマリンの差し色に並んだ紫色のアメジストを見て、蓮花は急にまたASTERの記憶に意識を取られてしまう。「そういえば雨宮博士、わたしが船上で見た時は大きさより……体色の変化の方が気になります。もっと青味がかってましたよね ? ……あの動画のASTERは黒に近い紫色ですよね」「ちょっと待って」 雨宮が隠し持ってきた旭飛研究所のファイルの写真を蓮花に見せた。  ファイル名はASTER-0。「確かに。こっちは変色してないわね」 試験管の中で溶けかかったASTERの肉片。まだまだ青紫色を保っていた。「例えばです。あの管のようなものが呼吸器官だとしたら、チアノーゼを起こして変色しているとか……」「実験生物でも流石に酸素くらい貰えるわよ。いくら宇宙から来たヘンテコナメクジでもね……」 雨宮博士はドレスと似た髪飾りを見つけると蓮花の髪に当てて組み合わせを楽しみ始めた。「あら可愛い。髪がアッシュ系だと映えるわねぇわたしなんかアッシュ系どころか白髪と格闘してますが〜。  ……ん ? ……チアノーゼ…… ? 酸欠で起きるとしても、ヘンテコナメクジの呼吸は酸素ではないのかもしれないわ。原理的には酸欠によるチアノーゼだとしても、それも机上の空論ね。  宇宙ナメクジが呼吸するかも怪しいし」 雨宮博士は蓮花からドレスを取り上げると、髪飾りを一緒に店員へ引渡した。「お会計お願いします」「雨宮博士 !? 」「今、幸せ絶好調の蓮花に、"旭飛研究所の嫁"のわたしからプレゼントしてあげるよ」「えぇ !! そんな、悪いですよ ! 」「結婚記念日だし、今日のアドバイスのお礼 ! 折角だし祝わせてよ。  あと、旭飛研究所の嫁ってワードになにかツッコんでよ〜 ! 」「それは事実、そうですし……」「待った。旭飛研究所って♂なの ? 」「いえ、知りませんよ……」「はぁ。暫く、わたしの彼ピッピは顕微鏡と膨大な論文を書く相棒のパソコン一式よ ! 寧ろ無機物ハーレム ! 」 二人並んで動画を見たところで、これ以上はどうにもならないだろう。  ここで解散となる。 再び旭飛に戻っていく熱心な雨宮博士。  そのスラリとした背中を人混みにかき消されるまで蓮花は見送っていた。 コンサルタントである杏が「ASTER-1を手放すべきだ」と言っていると透から聞いた事。 
last update최신 업데이트 : 2026-09-20
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5.ネイビー色の焦燥
 Pirrrrr.pirrrrrr「透、スマホ鳴ってる」 開けっ放しの車のドアからダッシュボードに置かれたスマホを手に取る。「研究所からだ」 Pirrrrr.pirrrrrr. Pi !! 「俺だ。 ──研究員がいない ? なんの事だ ? そんなわけないだろう。かくれんぼ会場じゃないんだぞ ! 」 鈴峯研究所から研究員が消えた。  そんな報告だった。 透は舌打ちしてもう一度スマホを取り出した。「いいか、警備責任者を区画に入れて確認させろ。ただし、ASTER-1の保管室には絶対に入るな。  俺も向かう。とにかく全員に連絡し続けろ  !  」 荒々しくスマホを懐に入れた透に杏が寄ってくる。「研究所、何かあったの ? 」「ASTER-1のチーフだ。出勤したら研究所に誰もいないと」「しょうもない……かくれんぼでもしてるの ? 」「ASTER-1は今、目が離せない状況だ。誰もいないなんてことはないはずだが……。  杏、港に俺の車を運ばせる。そこで乗り換えて今日は帰るんだ」「えぇ !? 今日はドライブするって言ったじゃない ! 」「壊れたこの車で ?   埋め合わせはする。君をこのまま乗せて走るなんて出来ないさ」「ん〜。分かった」「行こう」 ススキの藪の中。  それは小さな呻き声を上げ、黒紫色の液体を流しながら折れた足で土を掻く。  薮を抜け、アスファルトをペタペタと叩きながら道路へと戻ってきた。 幸か不幸か二人には気付かれなかったが、それは紛れもなく、元人間の何かだった。 □□□□□□□ 夕刻、蓮花が帰宅してすぐ、インターホンが鳴りドアを開けると義母である茜が立っていた。  彼女は長いブロンドヘアーが自慢の美容師だった。透の成功と共に現役を引退し、今はサロンの横でペットトリミングショップの経営をしてい
last update최신 업데이트 : 2026-10-01
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6 .バイオハザード
 ヘリの起こす突風に、降り始めた雨が地面を這うように吹き飛ばされる。 鈴峯研究所の緊急ヘリポートへ到着すると、透は連れてきた部下に止められる。「社長、念の為にこれを」「……」 差し出された防護服を煩わしそうに一度目を背けるが、仕方なくひったくる。 警備室の中から、透に電話してきたチーフがヘリの音を聞いて飛び出してきた。「鈴峯社長 ! 」「所員に連絡は着いたのか ? 」「いえ、それより ! 大変な事が !」 透が足を止めた時、警備室からもう一人、警備員に支えられた女性研究員がフラフラと外へ出てきた。「……。──っ ! 」 その顔は真っ青で震える声で何かを伝える。だがヘリの轟音にかき消され、透の眉間に皺が寄る。「ヘリを止めるように言え ! 」 チーフに怒鳴りつけるが、彼も透を制止しようと身を乗り出し立ちはだかる。「緊急事態です ! ここを封鎖してください  ! 」「この目で見るまでは何も言えない ! 」 防護服を着込んだ透は急ぎ足でフロントへ飛び込んだ。「……」 ヘリの音を遮る程の防音耐火、耐爆の要塞だ。 誰もいない静まり返ったフロントが、やけに不気味だった。「何故誰もいない…… ? 」 マスクをもう一度ギュッと押さえ込み、カードキーを使い中へ入る。 フロントからは認証キーを使い最深部へ向かうことになる。長く伸びる、清潔感のある純白の樹脂壁。 それが今は泥汚れがあちこちに目立つ。「台無しだ。ここは研究所の顔だぞっ 」 Pi ! 「──っ」 研究室のロックを開けたところで透は中の惨状に言葉を失った。「……キーが無いと誰も侵入出来ないよな ? 」「ラボ全てが部外者立ち
last update최신 업데이트 : 2026-10-02
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7.ASTER - 1
ASTER -1のいた研究室は血と黒紫色の液体が機材の上部まで吹き付けたように飛び散っていた。恐る恐るケースを覗くとそこにASTER-1の姿は無かった。「ちくしょうっ !! 」透が側にあったゴミ箱を蹴りあげた瞬間、バンッという音と共に照明が消える。「どうなってる ! 」「大丈夫です。すぐに予備電源に切り替わります」ブゥゥン…………荒らされた研究室に姿を消した研究対象。呆然とする透にチーフが袖をつつく。「あれは…… !!? 」ASTERのいたケースの裏から、黒紫色の粘液が一筋になって床へ続いていた。「ASTER - 1の……分泌液かもしれません……。ケースの底が溶かされています」「これを溶かす程の威力があるなら何故今まで無事だったんだ ! 」「……分かりませんが……社長、痕跡が続いてます」チーフが粘液を辿り歩く。その高く登った形跡は遥か先に見える天井まで続いていた。「物を溶かすとは、ただのナメクジではないようだな。オマケにたった一匹で人に逆らうとは大冒険なやつだ」「組織検査は地球上にはない細胞でしたし……一体、どこまでの可能性を秘めた生物なのか ! ……素晴らしい……」「素晴らしい ? 大事故だ」「失礼しました」「科学者とは全く……だからこそお前をチーフに選抜した訳だが……。警備室に連絡して、監視カメラの録画を用意しておけと言え 」「はい」ASTER-1のルームを出て、非常灯の中を透とチーフ、土井が歩く。チーフは警備室に内線を入れると、警備員は怯えた様子で電話口に対応していた
last update최신 업데이트 : 2026-10-03
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8.暗雲の振込用紙
「おかえりなさい。早かったね」透は夕刻には自宅マンションへ帰ってきた。「ああ、ただいま」「外、凄い雨だね〜」「雷が酷い」「観てた。自然の脅威って感じがするなぁって」「……暇だな。雷は恐ろしいものだ」「まあね。夕飯出すね。そうだ。昨日言ってたドレス、買ってきたんだ。見たい ? 」「へぇ。今着てくれるのか ? 」「うん ! サイズもピッタリ ! 本当に綺麗なの ! 」「へぇ。着替えて来いよ。夕飯ってそれだろ ? テーブルに並べておくからさ」「ありがと ! 」蓮花は軽い足取りでハンガーに掛かったドレスに袖を通す。透は夕食をカウンターからテーブルへ運ぶと、少し疲弊した様子で窓の外を眺めた。ドス黒い雲の隙間に時折光の筋が行き来し、その度に街がピカリと光る。一本の稲妻が今度は目の前の海浜公園側の海面へ落ちた。激しい音と光の中、窓に写る自分の背後の着替えた蓮花が立っていることに気付いた。「じゃ〜ん ♪ 」「いいな……。夏らしくて、凄く柔らかなイメージだ」「でしょ ? 気に入った ? 」「ああ。凄く」透はいつもこの調子だ。綺麗、可愛いなど、蓮花自身を褒める言葉は出ない。蓮花は最初こそ気落ちしていたものの、透の元々のシャイな性格のせいだと思考が落ち着いていた。「良かった。……何かあった ? いつもより疲れた顔してるね」「まぁ、な。鈴峯研究所が営業妨害にあっててさ。妙な噂を流してる奴がいるんだよなー」「……噂……」「ああ。でも蓮花には関係ないよ。大丈夫だから安心して」「う、うん」噂とは──まさに今日、蓮花が雨宮博士と話した件だろう。これには蓮花も面と向かって聞き出せない。
last update최신 업데이트 : 2026-10-04
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9.自覚する不遇
「わたしたちには鈴峯研究所の起業と結婚式で確かにお金は無かった。……お父さんも……わたしに気を使ってた。透さんは今でも申し訳ないって……なのに──一ヶ月後にこんな大金を杏さんに…… ? 」金がないと困っていた透の口座から、間違いなく桐生 杏へ向けた大金の振込み。一ヶ月で用意出来ない資金ではないだろうが、これは個人口座間のやり取りだ。「そんなはず……仕事のお金よね…… ? 口座を間違ったとか…… ? 」蓮花の中でぐるぐると回る不安。振込用紙をもう一度見て、ある所への気付きが蓮花を絶望の縁から突き落とす。「八月八日…… !! これって、彼女の……誕生日だわ…… ! 」鈴峯研究所 専属のコンサルタント 、桐生 杏の誕生日だった。身の毛もよだつほどの嫌悪感に吐き気が込み上げる。蓮花は慌ててトイレへ向かった。「どうして……お金が無いなんて……嘘だったの ? ……これは何 ? 彼女へのプレゼント ? わたしと結婚してすぐに ? 」分かっている。透が養父と仲が悪かったことも、透の母は有名サロンの美容師で人気があったことも。鈴峯家が本当に無一文の貧乏でないことくらいはわかる。だが、透は自力で起業することにも拘っていた。そのひたむきさに蓮花は惚れたのだ。やがて鈴峯研究所立ち上げに自分は『R.takigawa』ではなく、透の妻『鈴峯 蓮花』として出資したことも、未来への投資だと信じていた。「はぁー、はぁー……」振込用紙控えをとりあえずポケットにねじ込む。そのままトイレを後にし、フラフラとリビングへ通じる廊下を歩く。すると透の声を潜め
last update최신 업데이트 : 2026-10-05
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