拓海があまりにも強く手を振り払ったため、負傷していた私はバランスを崩し、廊下の床に激しく倒れ込んだ。その瞬間、背中から何かが裂けるような鈍い音がした。短いうめき声が喉から漏れた。倒れた拍子に、背中に刺さっていたガラス片がさらに深く体内へめり込んだ。私は床にうずくまった。照明が目に刺さり、周囲の景色がぐるぐると回って見えた。「看護師さん……」ナースステーションにいた看護師が一人立ち上がり、こちらを見た。だが、すぐにまた座った。「起こして……先生を呼んでください……」誰も答えなかった。カルテの整理を続ける者もいれば、背を向け、大きな音を立ててスマホの動画を見始める者までいた。「看護師さん……」「高梨さん、自分で起きて、待合スペースで待っていてください」ようやく一人が口を開いたが、その声には苛立ちがにじんでいた。「高梨院長から何度も言われています。あなたに近づいて、特別扱いを求めようとする者は厳しく処分する、と。先週だって、宮下先生がブライダルチェックのときにあなたを優先して案内しなかったというだけで、リネン室へ回されたんですよ」私は言葉を失った。「優先」といっても、宮下先生は整理し終えた検査結果を、その場で私に渡してくれただけだった。それなのに、「身内だからと特別扱いはしない」という母の方針で、医師の仕事から外され、シーツの消毒をさせられていたのだ。説明しようと口を開いたが、背中の傷に響き、また激しいめまいに襲われた。冷や汗が止まらなかった。それでも、看護師たちの話は続いた。「高梨院長は厳しいけど、公平さだけは徹底しているよね」「そうそう。余計なことはしないほうがいいよ。医師でさえあんな処分を受けるんだから、私たちが逆らったら、仕事を失うかもしれないし」床の冷たさと、背中に広がる生温かい湿り気が混ざり合い、奇妙な感覚になった。呼吸はどんどん重くなっていくのに、意識だけは妙にはっきりしていた。アドレナリンが効いているのだと分かった。それが切れたとき、最悪の事態が訪れる。床の目地に爪を立て、必死に体を起こそうとした。だが、そのたびに、さらに無様な格好で床に崩れ落ちた。「大変!」待合スペースにいた中年の女性が、口元を押さえて私を指さした。「床に血が……」ナー
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