詩音は教唆の疑いで起訴された。決定的な証拠が足りず重い刑は免れたものの、事件の真相が明るみに出ると、詩音はすべてを失った。仕事も居場所も失い、やがて人前から姿を消した。地方へ身を隠したとも、生活に困っているとも噂されたが、真相を知る者はいなかった。その話を聞いた悠真は、静かに一言だけつぶやいた。「……自業自得だ」それから、さらに5年の月日が流れた。悠真の髪には白いものが目立つようになり、同年代の誰よりも老けて見えた。その後、誰かを愛することも、誰かと人生を歩むこともなかった。広すぎる家で、たった一人の時間を過ごしていた。命日が来るたび、悠真は雨の日も雪の日も欠かさず私の墓を訪れ、白いバラと新しいノートを供えていた。ノートには、毎年私への言葉が綴られていた。【美咲。今年も奨学制度から10人の学生が巣立っていった。みんな、お前みたいによく頑張る子たちだった】【美咲。この前、海へ行ってきた。あの日、お前と一緒に見たかった景色だった】【美咲。また夢で会えた。笑ってくれたのに、目が覚めたら、もういなかった】書き終えるたび、そのノートを墓前へそっと供えていた。まるで、祈りを捧げるように。ある日。悠真はいつものように墓前で長い時間を過ごし、日暮れとともに帰路についた。その途中、不意に胸を押さえ、足を止めた。激しい痛みに襲われ、そのまま地面へ崩れ落ちた。通りかかった人が救急車を呼び、悠真は病院へ搬送された。診断は急性心筋梗塞。緊急手術が必要だった。手術室へ運ばれる直前、悠真は医師の白衣の袖をつかみ、かすれた声で言った。「もし……俺が助からなかったら……俺の遺産を使って財団を設立して……どうか他の心臓病の患者たちに寄付してほしい」少しだけ息をつき、悠真は静かに続けた。「それと……その人に伝えてほしい。俺は、心臓にまつわるいろんな事情で……ひとりの女性を裏切ってしまったんだ。だから今度は……誰かを幸せにして、生き続けてほしい」医師は一瞬、言葉を失った。やがて小さくうなずき、静かに手術室へ向かった。私は病室の外から、ベッドに横たわる悠真を見つめていた。胸の奥には、言葉にはできない思いだけが静かに残っていた。悠真は最後まで、自分なりの償いを貫こうとしていた。そして悠真は、その
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