法医学者の長兄は、慌ただしく事件現場へ駆けつけた。「遺体の状況は?」長兄は、目の前に横たわる、ひどく腐敗し、見る影もなく損壊した遺体を見つめた。そして、眉間に深い皺を寄せる。笑ってしまうほど皮肉なことに、私が死んで初めて、長兄が私のためにこんなにも焦った顔を見せている。蝿が、腐敗して崩れかけた私の身体の周りを飛び回っている。顔の皮膚は切り取られ、さらに動物に食い荒らされていて、もはや顔立ちすら判別できない。助手は遺体を前に込み上げる吐き気を必死に堪えながら言った。「顔の皮膚がすべて剥ぎ取られています。死に方も極めて悲惨です。怨恨による殺人の可能性も排除できません」長兄は私の遺体を調べながら、低い声で言った。「後頭部に鈍器で殴られた痕がある。殺人と見て間違いないだろう」その言葉が終わるや否や、長兄のスマートフォンが鳴った。「お兄さん、今夜は早めに帰ってきてお祝いしよう。柔子のジュエリーデザインがコンテストの最終候補に選ばれたんだから!」長兄は困ったように眉をひそめた。分かっている。検死のせいで蘇我柔子(そが やわこ)のそばにいてやれないことを、長兄は気に病んでいるのだ。もし長兄が、この解剖を待っている遺体が私だと知ったら、きっと私を罵倒するだろう。何しろ、私自身でさえ自分の遺体だと気づけないほどなのだから。もともと私を疎んでいた長兄が、こんな見る影もない遺体を、実の妹だとどうして見分けられるだろう。長兄は口を開いた。「今夜は仕事がある。帰れるかどうか分からない。お前は父さんと一緒に柔子のそばにいてやれ。あの狂人のことで、あの子を悲しませるなよ」私は苦笑した。兄が口にした「狂人」が誰を指しているのかなんて、疑いようもなかった。次兄が鼻で笑う。「美月が何だっていうんだ。俺たちの妹を悲しませるなんて許されない。もし家に戻ってきて騒ぎを起こすようなら、俺があいつの足をへし折ってやるぞ」私は目を伏せ、瞳に滲んだ悲しみを隠した。私はもう、あの家には帰れない。それに、あそこは最初から私の家ではなかった。誰が想像できるだろう。あの大富豪の家に、ようやく見つかった実の娘がいるというのに、その娘が薄暗く湿った地下室で暮らしていたなんて。ただ、柔子が「突然家に姉が増えるのは落ち着
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