病院で、直哉の聴力が確実に回復しつつあると診断されたとき、私は自分のことのように嬉しかった。慣れた手つきで手話を使い、おめでとうと伝える。三年間ずっと沈んでいた直哉の顔に、初めて心からの笑みが浮かんだ。「真帆、この三年間、本当にありがとう」私は笑って首を振った。愛している人のためだ。これくらい苦労のうちに入らない。いつもの癖で直哉の手を握ろうとしたが、伸ばした手は空を切った。胸の奥にも、ぽっかりと穴が開いたような感覚が残る。顔を上げると、直哉は何事もなかったかのような顔をしていた。「真帆、みんな待ってる。早く行こう」一瞬だけ戸惑ったものの、すぐにその感情を押し込め、私も穏やかに笑った。「そうだね。行こうか」私たちはもう大人だ。何かあったとしても、取り乱さずに振る舞うくらいはできる。バッグの中には、少し前に直哉の父から渡された株式譲渡契約書が入っている。それもあってか、今は些細なことで気分が落ちるわけでもなかった。病院を出るとき、直哉は私の支えを待っているかのように手を差し出しかけた。私はそれに気づかないふりをして、一足先に外へ出る。きっと忘れているのだろう。この三年間、誰かの愛情や世話を必要としていたのは直哉であって、私ではない。直哉が聴力を失ったばかりの頃、私は心配で仕方なかった。小さい頃から一緒に育ってきた幼なじみだったし、何より当時の私はずっと直哉に片想いしていた。だから迷うことなく直哉と同じマンションへ引っ越した。直哉の隣の部屋で暮らし、必要とされればいつでもそばにいた。ドアの開け閉めのような些細なことまで、自然と私が手を貸すようになっていた。直哉も途中で気づいたらしい。差し出しかけた手を気まずそうに引っ込めると、何も言わず私の後ろをついてきた。パーティールームの扉を開けた瞬間、私は足を止めた。中はすでに大盛り上がりだった。主役である直哉の到着など待ちきれなかったらしく、友人たちはとっくに乾杯を始めている。そしてその輪の中心にいたのは、つい先日海外から帰国したばかりの美緒だった。なるほど。直哉が私の手を避けたのは、別に自尊心が傷ついたからではなかったらしい。さっきまで私の後ろを歩いていた直哉は、美緒を見つけた途端、思わず一歩前へ出た。緊張したときの癖なのか、無意識に耳たぶへ触
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