その後、見かねた村の人たちが間に入り、明里をその場から連れ出した。見物していた人たちも次々と帰っていき、家の前はようやく静かになった。気づけば、その場に残っていたのは准だけだった。准は私の前に立つと、いつになく穏やかな声で言った。「優衣、悪かった。昔の俺は本当に最低だった。翔太のためにも、もう一度だけチャンスをくれないか?」准は私の顔色をうかがうように笑っていたが、その目にはうっすら涙が浮かんでいた。その顔を見た瞬間、ほんの少しだけ心が揺れた。准は、本当に私のことを愛してくれていたのだろうか。そんなことを、これまで何度も考えた。あの頃は、いくら考えても分からなかった。でも今なら、少なくともこの瞬間の准の気持ちは、本物だと思えた。それでも私は、静かに首を横に振った。「チャンスなら、もうあげたでしょ」「え?いつ?」准はぱっと顔を上げた。私は准の手を取り、そっと右の肋骨の下あたりに当てた。「ここ。あなたが生きるためのチャンスなら、もうあげたでしょ。だから、これを大事にしてくれれば、それでいいの。元は私の一部なんだから」そう言って、私は准に背を向けた。准が手を当てていたその奥には、かつて私が提供した肝臓の一部が移植されていた。
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