第11話 履修登録は恋愛より難しい? 大学へ入ってからというもの、結月の毎日は驚くほど速く過ぎていた。 朝起きれば大学へ向かい、講義を受け、美月と話し、ときどき高瀬湊と言い合いをし、宮邸へ戻ればその日の出来事を思い返す。 入学前までの結月の日常には、もっと明確な区切りがあった。 予定表に従って動き、公務を終えれば次の予定へ移る。その一つ一つには開始時間と終了時間があり、同行者も移動手段も決められている。 大学は違った。 講義と講義の間に何が起きるか分からない。 人と話しているうちに予定より時間が過ぎることもある。 美月から突然「このあと購買見に行かない?」と誘われることもあるし、湊から意味のないメッセージが届き、それに返しているうちに数分が消えることもある。 結月は、その「予定外」をかなり気に入り始めていた。 ただし。 予定外を楽しむためには、予定そのものに余白が必要なのだという、ごく基本的な事実にはまだ気づいていなかった。 ◇「だから、これは無理だって」 昼休み。 共通図書館二階のラウンジで、高瀬湊は結月のスマートフォンを見ながら、もう三度目になる言葉を口にした。「どうしてですか」「どうしてって、この時間割見て自分で何とも思わない?」「大変有意義だと思います」「そうじゃない」「では何でしょう」 湊が深いため息をつく。 テーブルを挟んだ向かい側で、結月は背筋を伸ばして座っていた。 画面には、今週中に確定させる必要がある履修登録の一覧が表示されている。 月曜から金曜。 朝一番の講義から夕方まで。 見事なほど予定が詰まっていた。
Last Updated : 2026-09-19 Read more