泣き声にならないよう必死にこらえながら、私は口を開いた。「リビングにカメラがあるよね。映像を見れば、私がやったかどうかわかるから」けれど、桃香と友人たちは笑い出した。「ぶりっ子ちゃん、まだ演技してるよ。自分がやったってばれたら、今度は泣きながら『怜介のことが好きすぎて』って言うんでしょ。もういいって。私、心が広いから、私がやったことにしてあげる。怜介、これからは会うのを控えようか。彼女ちゃんに、また余計な心配させちゃうし」そう言って桃香たちが玄関へ向かうと、怜介は慌てて、靴も履き替えずに追いかけていった。私は震える手でカメラの映像を呼び出し、桃香が私の指輪を抜き取った瞬間を見つけた。戻ってきた怜介に、そのスクリーンショットを見せた。けれど彼は、私の手からスマホをたたき落とした。「もういい、紗和。桃香は気にしないって言ってくれてるんだ。もう、こんな面倒は起こさないでくれないか。僕と桃香は20年以上の付き合いなんだよ。そういう小細工をする相手じゃない」割れた画面を見下ろすと、自分の心まで、ひとかけら砕けた気がした。私はゆっくりしゃがみ、スマホを拾った。「怜介、別れよう」怜介は鼻で笑った。「桃香の言うとおりだね。人に罪をなすりつけられなかったから、今度は別れ話で脅すんだ」目の前の彼が、初めて知らない人のように思えた。「怜介、本気で言ってるの」彼は眉間を指で押さえた。「紗和、これ以上ごねても仕方ないだろ。僕は疲れた。紗和も早く休んだら。今日のことは、なかったことにしてあげるから」そう言い残し、ひとりで寝室へ入っていった。私はリビングの真ん中から動けなかった。昔、嫌なことをされて眠れず、寝返りを打ちながら一晩中泣いていたとき、怜介はいつも根気よくそばにいて、黙って涙を拭いてくれた。同じ話を何度繰り返しても聞いてくれて、次はどう対処すればいいか、教えてくれた。小さなプレゼントや甘いものを買って、元気づけてもくれた。それなのに。5年の付き合いは、桃香が私をおとしめるひと言にも及ばなかった。大きく息を吸い、母にメッセージを送った。【やっぱり、地元を離れて暮らすのはしんどい。家に帰りたいの】夜中なのに、母からはすぐに返事が来た。【帰っておいで。うちには何でもあるから】何があったのかは、
Read more