画面越しの二人は楽しそうにじゃれ合っており、私との約束をすっぽかしたことに対する悪びれた様子は微塵もなかった。彼らにとって、私には「事後報告」さえすればそれで済むのだ。あとのことは、私が勝手に納得すればいいと思っているのだ。私はスマホを強く握りしめ、しばらくして無理やり笑顔を作った。「航、何か説明することはないの?」航は眉をひそめ、不機嫌そうな声を漏らした。「いい加減にしてくれ。この後も授業あるから、もう切るぞ」返事をする間もなく、電話が切られた。これが彼のいつものやり方。シンプルで、効率的で、身勝手だ。私はスマホを握る手にぐっと力を込め、そしてふっと力を抜いた。深く息を吸い込み、背を向けて大学の門をくぐる。……入学式が終わる頃には、すっかり日が暮れていた。新入生たちが連れ立って歩き、「大学の近くで何を食べようか」と楽しげに相談している。お腹が情けなくグーと鳴った。昨日から夜行バスで一晩中揺られ、今日は朝食も食べる余裕がないまま式に参加したせいで、一歩歩くごとに足が鉛のように重かった。女子寮の部屋に着くと、同室のルームメイトが私を待っていた。「こんにちは、深見さんだよね?初めまして!一緒にご飯に行こうと思って待ってたんだけど、もうお腹ペコペコだよ」ベッドメイキングを済ませ、食事に向かう途中、ズボンのポケットに入れたスマホがずっと震えていた。画面を見ると、3人グループラインの通知が「99+」になっている。寧々:【@桐島航、この白猫、あなたにそっくり!この生意気そうな目つきがね】航:【@椎名寧々、もたもたしてないで早く来い。お前の大好きな牛すじの味噌煮込み、売り切れるぞ】私は画面をじっと見つめた。目頭がじんわりと熱くなる。牛すじの味噌煮込みは故郷の家庭料理だけど、子供の頃から食べ飽きるほど食べていて、もう見たくもないくらいだった。何度も伝えたはずなのに、航は覚えていない。ただ寧々が好きだからという理由で、食事のたび、テーブルいっぱいに並ぶのは彼女の好きなメニューばかり。私の好きな料理は一皿もなかった。「一口くらい食えよ。お前が食べないと空気悪くなるだろ」以前の食事でそう言われ、私は無理をして口に入れたが、強烈な吐き気がこみ上げ、食べたばかりのご飯まで吐き出してしまったのだ。
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