しんと静まり返った豪奢なチャペルに、陽向の冷ややかな声が響いた。「進行表にそんなセリフはない。削除だ」彼は不愉快そうに、ちらりと私を横目で見下ろした。私が勝手に自分のセリフを付け足したことに、苛立っているらしい。私は一瞬呆然とし、目の奥がツンと熱くなった。今この瞬間でさえ、彼は私がこの「完璧な結婚式ごっこ」に大人しく付き合っていると思っているのだ。私の思いや意見なんて、彼からすればいつでも好き勝手に削除できるただのバグでしかない。削られたのは、この言葉だけじゃない。彼は私が一番好きだったチューリップの装花を却下し、咲良が好きだと言った白バラで会場を埋め尽くした。ずっと親しくしていた私の幼馴染をブライズメイドから外し、咲良の職場の同僚をそのポジションに据えた。祖母から三代受け継いできた大切なウェディングドレスすら、咲良がカタログを見て気に入ったデザインのものに無理やり変えさせられた。私が少しでも不満をこぼすたびに、彼は「咲良が選んだものの方が、俺の理想とする式のテーマに完璧に合っている」と冷たく切り捨てた。完璧を追求するからといって、私の好みをすべてゴミ箱に放り込んだのだ。それなのに、咲良のミスに対してはいとも簡単に完璧主義を投げ捨てて、あっさりと妥協を許した。祭壇の前で立ち尽くす私を見て、咲良がにっこりと笑って場を和ませようとする。「そんなに堅いこと言わないでよ。枝織ちゃんだって悪気があるわけじゃないんだから。それに、末永くお幸せにって祝福の言葉があったほうが、結婚式としてもっと完璧になると思わない?」彼が決めたルールは絶対に覆らない。そんなフォローは無駄だと教えようとしたその時。次の瞬間、陽向は彼女の甘えるような視線に絆されて、あっさりと折れたのだ。「……わかった。まあ、付け足してもいいだろう」ため息交じりでありながら、その声には明らかな甘さが滲んでいた。その言葉を聞いて、私は思わず指先をきつく握り込んだ。胸の奥に、鋭いトゲがグサリと突き刺さる。これまで幾千回となく味わってきた失望の中で、私が一度も反抗しなかったわけじゃない。けれど、陽向は私に対しては絶対に、何ひとつ妥協してくれなかった。一番ひどい喧嘩になったのは、私が亡き母の形見のブレスレットをつけて式に出た
Ler mais