「繭香、どんな式がいい?すぐに手配させるよ」一誠の親友である浅利信弘(あさり のぶひろ)は、待ちきれないとばかりに実家のブライダル会社の担当者へ連絡を入れた。一誠の妹の西内菜月(にしうち なつき)は、はしゃいだ様子で繭香の腕に抱きつき、甘えた声を出す。「じゃあ私、ブライズメイドやる!誰にも譲らないからねー!」私の幼なじみでヘアメイクアーティストの小林夕未(こばやし ゆうみ)も、すぐさまスケジュール帳を開いた。「ヘアメイクは私に任せて。式はいつ?前もって空けておくから」繭香はそんな皆を見回し、ふわりと微笑んだ。「大げさにしなくていいよ。海辺でささやかに挙げられれば十分。思い立ったが吉日って言うし、来週の土曜なんてちょうどいいんじゃない」「おいおい」一誠が片眉を上げる。「来週の土曜は、俺と璃子の式だろ」「友達でしょ。ほんの数時間ずらして、私に先にやらせてよ。そっちの邪魔はしないからさ」一誠は小さく笑い、あっさりと白旗を上げた。「はいはい、わかったよ。お前の言うとおりにする。負けたのは俺だしな」皆が繭香の式の段取りで盛り上がるなか、私は隅の席で黙り込んだまま、心がゆっくりと底へ沈んでいくのを感じていた。繭香の結婚式は、一誠がわざと負けて叶えてやったもの。私の結婚式は、彼が勝つために慌ただしく決めたもの。1か月前のビジネスパーティーで、一誠の宿敵が突然、年内に結婚すると宣言した。負けず嫌いに火がついた一誠は、その場で私たちが来月に式を挙げると公表したのだ。あまりに時間がなく、私は慌てて信弘にプランニングを頼んだ。けれど返ってきたのは、「実家の会社とはいえ、プランニングは俺の管轄外だから」という冷ややかな返答だった。ブライズメイドが1人足りず菜月に頼んだときも、首を縦には振ってもらえなかった。ずっと前から花嫁のメイクを引き受けると約束してくれていた夕未にさえ、急に予定が入ったと断られた。そもそも繭香をこの輪へ連れてきたのは、ほかならぬ私だ。それなのに、今では私のほうがすっかり部外者だ。一誠に弾かれた額は、まだじんじんと痛む。けれど、いま胸を締めつける鋭い痛みには遠く及ばなかった。私が落ち込んでいることに気づいたのか、一誠が眉をひそめて口を挟んだ。「璃子もいるんだぞ。お前
Leer más