「仕事に集中しな。図面がちゃんと仕上がると、それだけで結構気が晴れるよ」入社して最初の1か月は、とにかく忙しかった。休日出勤も珍しくなく、帰る頃には日付が変わっていることも多かった。そんな中、ときどき知らない番号から電話がかかってきた。最初の週は3回、次の週は5回。3週目に入る頃には2日に一度くらいかかってくるようになったが、一度も出なかった。ある日の深夜1時過ぎ、まだ事務所で図面を直していると、突然一通のメールが届いた。どう見ても悠のアドレスからのメールだった。【柚葉、お願いだから追加して】私はそのまま無視した。5分もしないうちに、またメールが届いた。今度はアドレスが変わっていた。【ただ、元気にしてるか知りたいだけなんだ】それも無視した。そのあと、もう一度メールが届いた。【今どこにいる?無理に会おうとはしない。ただ、元気にしてるかだけ知りたい】そのメールを見て、少しだけ迷った。それでも結局、無視して削除した。「こんな時間に連絡してくるの、彼氏?」急に声をかけられて振り返ると、いつの間にか知佳が後ろに立っていた。「元彼です」「ああ、そっちね」知佳は持っていた缶コーヒーを一本、私の机に置いた。「元彼なら、なおさら放っときな。それ終わったら今日はもう帰って寝て。明日9時からクライアントと打ち合わせなんだから」「はい」スマホを伏せ、またCADの画面に戻った。最後の寸法線を入れ終えた頃には、もう3時を回っていた。部屋に帰って明かりを消し、ベッドに横になると、天井の染みが目に入った。ぼんやりした形が、どこかリンファ山に似ていた。私は寝返りを打ち、壁のほうを向いた。入社して2か月目には、初めて一人で任された案件を仕上げた。社内レビューでは、知佳に空間構成を褒められ、それを聞いた部長も私の図面をもう一度見た。その日の帰り、美咲からメッセージが届いた。【白井くんが柚葉の住所聞いてきたよ。もちろん教えてないけど】【それと、雨宮さんもあちこちで柚葉のこと聞いてるみたい。どこに行ったのか探してるっぽいよ】歩きながら返した。【たぶん見つからないよ】【白井くんがそっちまで探しに行ったらどうするの?】【どこにいるかも、どこで働いてるかも知らないから大丈
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