All Chapters of 結婚式前夜に親友を選んだ婚約者を捨てました: Chapter 11 - Chapter 12

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第11話

私が旅立ってからの1か月、直哉はまだ、私が本当に戻らないとは信じていなかった。毎日、メールを送ってきた。【新居は買い直した】【美咲はもう出ていった】【指輪も外した。あいつには持っていかせていない】【お母さんのドレスは、修復してもらった】【いつ帰ってくる?】私はどのメールにも返信しなかった。2か月目になると、直哉は美咲を自分の会社のポストから外した。ゲームに加わっていた友人たちが、彼女のために取りなそうとした。「美咲はみんなに付き合ってただけだろ。最終的に決断を下したのはお前じゃないか」彼らを見つめながら、直哉は反論できなかった。誰もが、私を傷つけることに手を貸した。けれど、刃を握っていたのは直哉だ。美咲にすべての責任を押しつける資格はなかった。美智子は怒りのあまり体調を崩し、入院した。病床でも、私を薄情だと罵った。「ただのゲームだったじゃないの。直哉がここまで謝っているのに、あの子はこれ以上何が不満なの?」ベッドのそばに立つ直哉は、ふと思い出した。美智子のせいで私がつらい思いをするたびに、自分も同じようなことを言っていた。「母さんも悪気があって言ってるわけじゃないんだ。年上だと思って、少しは大目に見てやってくれよ」私は7年間、ずっと我慢してきた。それなのに、もう我慢しないと決めた途端、みんなは私を冷たい人間だと責め始めた。直哉は初めて、美智子の言葉を遮った。「あいつが戻ってこないんじゃない。俺にあいつを呼び戻す資格がないんだよ」呆然とする美智子を残し、直哉は部屋を出た。本当に謝らなければならないのは自分だと、ようやく直哉にもわかったのだ。……半年後、私が修復に携わった最初のアンティークの婚礼衣装が、ロンドンで展示された。その日は大勢の人が訪れた。私は展示室で、ひどく傷んでいた古いウエディングドレスについて解説をしていた。切り裂かれ、焼かれても、持ち主はそのドレスを捨てなかった。残った生地をつなぎ合わせ、1羽の鳥の形に縫い上げたのだ。来場者の1人が尋ねた。「どうして元の形に戻さなかったんですか?」私は微笑んで答えた。「壊れたものを、無理に元どおりにする必要はないからです。新しいものに生まれ変わってもいいんです」人々の後ろに、直哉が黙って立っていた。半年ぶりに
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第12話

それから、直哉は毎年ロンドンを訪れるようになった。白いキキョウの花束を届けることもあれば、遠くから私を見るだけのこともあった。私は一度も彼から花を受け取らず、彼と2人で会うこともしなかった。3年目、私のプロジェクトは終了した。私は元の街には戻らず、別の機関からのオファーを受けた。出発前、直哉がまた空港に現れた。彼は引き止めようとはせず、ただあの結婚式の準備ノートを私に差し出した。「お前が準備してくれた式のプログラム、最初から最後までもう一度見直したんだ。昔は、結婚式なんて大して重要なものじゃないと思ってた。でも……後になって気づいたよ。お前は1年という時間をかけて、俺たちのこれからを真剣に準備してくれていたんだなって。それを俺が、自分の手で台無しにしてしまった」私はノートを受け取ると、彼の目の前で、そばにあったリサイクルボックスへ投げ入れた。直哉の顔から血の気が引いたが、私は笑った。「過去のものを、ずっと取っておく必要はないから」搭乗を促すアナウンスが流れ始め、私はスーツケースを引いて歩き出した。背後から、直哉が私を呼び止めた。「紗奈」振り返ると、人混みの中に立つ彼の目元はやはり赤くなっていた。「あの日、あのゲームをしなかったら、無事に結婚できていたのかな……?」私は少し考えてから、そっと首を横に振った。「あのゲームがなくても、また別のことが起きていたと思う」結婚式のゲームは、私に現実を思い知らせただけだった。直哉は、最後に私と結婚すればそれでいいと思っていた。私の気持ちを踏みにじっても、私よりほかの人を大切にしても、許してもらえると思っていたのだ。私たちの関係を本当に壊したのは、美咲でも、美智子でも、はやし立てた友人たちでもない。私が傷つくとわかっていながら、それでも何度も、私を傷つけることを選んだ、彼自身なのだ。私は前を向き、搭乗口へ進んだ。今度は、直哉も追ってこなかった。ようやく彼にもわかったのだろう。ゲームならやり直せるし、過ちも取り返せることはある。けれど、何度も傷つけられた末に離れると決めた人は、もう戻ってこない。(おわり)
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