宗一郎からは、すぐに返事が来た。【離婚協議書は今夜中に作成できます。日菜さんの親権を希望するのであれば、今のうちから準備しておきましょう。まずは、これまでのメッセージのやり取りを整理しておいてください】これまでのやり取りのスクショを一通り保存し終えたところで、玄関のドアが開き、孝介が帰ってきた。孝介はテレビで見たのと同じライトブルーのおそろいの服をまだ着ていて、袖口にはクリームが少しついていた。その後ろには、勇太の手を引いた美咲もいた。「何か食べるものない?勇太、行事が終わってからずっとお腹すいたって言ってるの」孝介は上着を椅子の背に掛けると、いつもの調子で私に言った。「うどんでも作ってくれ。ネギは少なめにな。勇太、あんまり好きじゃないから」私は返事もせず、その場を動かなかった。すると、破れた絵を胸に抱えた日菜が、私の後ろからそっと顔をのぞかせた。「パパ、どうして日菜のダンス、見に来てくれなかったの?」そこでようやく、孝介は日菜がまだ発表会の衣装を着たままだと気づいた。孝介は一瞬黙ったあと、腰をかがめて日菜の頭を撫でようとした。「今日は急に用事ができちゃってさ。今度はちゃんと見に行くから」日菜はすっと身を引いた。「先生、今日が最後の発表会だって言ってたよ」「じゃあ、ママに撮ってもらえばよかっただろ。あとで俺が動画を見れば同じだろ」孝介はそうあっさり言うと、ポケットから金色のメダルを取り出した。「ほら、日菜にお土産」日菜の目が一瞬ぱっと輝いたが、メダルを受け取った途端、その笑顔は消えた。裏には、はっきりと「勇太」の二文字が刻まれていた。それを見た美咲が、慌てて口元を押さえた。「あっ、孝介、それ違うよ。それ、勇太が今日の親子行事でもらったメダル」孝介は眉をひそめると、日菜の手からメダルを取り上げた。「勇太のだったのか。じゃあ、これは返そうな。日菜はいい子だもんな。今度、新しいメダルを買ってあげるから」日菜はしばらく両手を差し出したまま固まっていたが、やがてそっと手を引っ込めた。「でもパパ、前に言ってたよね。メダルは自分で取るものだって。買ったものじゃ意味ないって」孝介の表情が一瞬こわばった。勇太はメダルをさっと取って首にかけると、日菜を見上げて、べーっと舌を出した
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