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第8話

Author: 森と島と夏
翌日の午前中、孝介からメッセージが届いた。

【美咲は低血糖だった。もう大丈夫だ】

【昨日は勇太を一人にできなかった。子どもだけ病院に残して帰るわけにもいかなかったんだ】

【絢香、今回は仕方なかったんだ】

私は3通とも宗一郎に見せた。

「これも資料に入れておいて」

宗一郎は読み終えると、軽く首を振った。

「こういうのを見ると、離婚を決めたのも無理はないですね」

離婚調停の日、孝介は30分遅れてきた。

シャツはしわだらけで、目の下にはくっきり隈ができていた。

調停が始まると、孝介は真っ先に言った。

「離婚する気はありません」

私は用意していた資料を調停委員に差し出した。

美咲から電話があったのは37回。

孝介が急に家を出ていったのは21回。

日菜の大事な行事を欠席したのは7回。

さらに、幼稚園の防犯カメラ映像を削除したときの操作履歴も添えてあった。

調停委員が内容を確認していくうちに、孝介の表情がだんだん硬くなっていった。

「こんなことまで、ずっと記録してたのか?」

「日菜の3歳の誕生日からよ」

あの日、孝介は日菜と一緒にケーキのろうそくを吹き消すっ
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    日菜が母と手をつないで入ってくると、孝介は思わず立ち上がった。日菜は一瞬だけ立ち止まった。それでも今度は震えず、母の後ろに隠れもしなかった。ただ、その場でじっと孝介を見ていた。孝介は目を赤くしながら、ゆっくり日菜の前にしゃがんだ。「日菜、これにサインしたら、今日はもう帰るから」日菜はテーブルの上の離婚協議書を見た。「これから、パパじゃなくなるの?」「そんなことないよ」孝介は少し黙ってから、続けた。「日菜がパパって呼んでくれるなら、これからもずっとパパだよ」日菜は少し考えてから聞いた。「じゃあ、また誰かに借りていかれちゃう?」孝介の目から涙がこぼれた。「もう、日菜を置いていったりしないよ」けれど日菜は首を横に振った。「でも日菜、もうパパのこと待ちたくない」「うん。じゃあ今度は、パパが待ってる」「日菜がずっと会いたくないって言っても?」「それでも待つよ」日菜は返事の代わりに、テーブルに置いてあったあの焼け残った家族の絵を孝介に差し出した。「これ、あげる」孝介は震える手で絵を受け取った。「もう、いらないの?」「先生がね、もう一回描こうって言ってくれたの」日菜は小さな声で続けた。「今度はね、ママと、おじいちゃんと、おばあちゃんと、日菜だけ描くの」孝介が目を閉じると、頬を伝った涙が絵の焦げた縁に落ちた。しばらくして、孝介は床に落ちていたペンを拾い、離婚協議書に名前を書いた。手続きを終え、私たちは正式に離婚した。家は財産分与の対象にはならず、日菜の親権者は私になった。孝介は毎月養育費を払い、日菜との面会は、本人の気持ちを最優先にして決めることになった。その後、孝介は小さなマンションに移った。孝介の母の話では、孝介は毎週のように幼稚園の前まで日菜に会いに来ていたそうだ。日菜が会いたいと言った日は、少しだけ話をした。会いたくないと言った日は、持ってきたものを先生に預け、そのまま帰っていた。許してくれとも、もう言わなかった。一方、美咲の元夫は、定期的に勇太と会えるようになった。美咲も、もう自分の都合で面会を断ることはできず、勇太に孝介を「パパ」と呼ばせることもなくなった。その後、美咲から長い謝罪のメッセージが一度だけ届いた。私

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