蒼一郎が病院の前に3日間立ち続けた頃、ようやく相馬家の門が開いた。優磨が紙袋を手に、蒼一郎の前へと歩み出た。袋の中身を取り出すと、雪の上に投げ捨てる。「お嬢様からの伝言です。騙されたまま生きるより、死ぬ前にせめて真実を知っておいたほうがいいでしょう」1枚目の検査報告書が、雪の上に落ちた。「安井鮎美さんのエコー写真は、産婦人科の担当医を買収して偽造させたものです。彼女は一度も妊娠していません」もう1枚、写真が落ちた。「あの日、本家で池に落ちて出血したという話についても、救急外来の記録と当日の写真が残っています。血は、あらかじめ用意した血液パックのものだったと判明しています」優磨は最後の鑑定書を、彼の胸に叩きつけた。「法医学的な鑑定も済んでいます。お嬢様の手首に残った引っかき傷は、安井鮎美さんがつけたものだと鑑定されています。あなたがお嬢様に浴びせたあの平手打ちも、物置に閉じ込めたことも、無理やり署名させた譲渡書も――全部、存在すらしない子供のための布石だったんです」蒼一郎は、雪の上の証拠を見つめた。雪と風が紙を濡らし、インクがじわりとにじんでいく。鮎美が初めて健診結果の書類を差し出してきたとき、泣きながら親子鑑定を拒んだあの日のことを思い出した。「蒼一郎さん、私のこと、信じてくれないの?もうあなたの赤ちゃんがいるのに……」あのとき彼が病院に特別な便宜を図らせたのも、歌音を追い出す口実が欲しかったからだった。あの15%の株式を、自分の血を分けた子に残すために。蒼一郎のスマホが手から滑り落ち、雪の中に沈んだ。目は乾き切っているのに、涙の一滴すら出てこなかった。このとき初めて、自分がどれほど愚かだったのかを思い知った。ひとりの嘘つきのために、命すら懸けてくれた女を、自らの手で壊したのだと。優磨は彼を見つめた。「お嬢様が証拠を届けさせたのは、あなたの謝罪を聞くためではありません。あなたに、ただ覚えておいてほしかっただけです。お嬢様を傷つけたのは鮎美さんだと。ですが、お嬢様を追い詰め、閉じ込め、奪い、平手打ちしたのは、あなた自身です。その責任から逃れることはできません」優磨は踵を返して正門へと戻っていった。雪の中には、蒼一郎だけが膝をついたまま残された。……それからしばら
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